イソデールの有効成分であるイデベノンは、キノン系に属する有機化合物で、コエンザイムQ10の合成類似体となり、血管性、および中枢神経系の退行性疾患の治療薬として動脈硬化症、脳出血や脳卒中、老化に伴う認識障害、慢性的な血管性疾患、多発脳梗塞性痴呆症、アルツハイマータイプの痴呆症などの治療に利用されています。
イソベノンは特にその強力な酸化防止作用で知られており、その効力はビタミンEや脳細胞のフリーラジカル(酸化要因)抑制薬として知られているビンポセチンと比較して30~100倍、アンチエイジング作用で有名になったコエンザイムQ10と比較してもその3倍の抗酸化作用があると言われています。
さらに、コエンザイムQ10は低酸素下においては酸化促進物質になってしまうという欠点があるのに対し、このイソデールの有効成分であるイデベノンは、低酸素下においてもその強い抗酸化作用を保つという利点がある事が知られています。
**酸化ストレストレスとは**
呼吸により取り入れられた酸素は、赤血球中のヘモグロビンによって細胞に運び込まれます。
細胞内にはミトコンドリアという細胞内小器官が存在し、細胞が活動するためのエネルギーを供給するために糖や脂肪などをアデノシン三リン酸(ATP)というエネルギー源に変換する役割を果たしています。
細胞内に取り込まれた酸素はこのATP産生の過程で糖質から電子を奪い、スーパーオキシド、過酸化水素、ヒドロキシラジカルというフリーラジカルの段階を経て最終的には水となります。フリーラジカルとは不対電子を持つ原子のことです。
通常原子は2つの対(ペア)になった電子を持つことにより安定しますが、フリーラジカルは電子が対になっていない(つまり電子が1つだけ)の不安定な状態です。
フリーラジカルは自己を安定させるため、ほかの分子から電子を奪い取り、対(ペア)になろうとする作用があります。
フリーラジカルのように、ある原子/分子から原子がひとつなくなることを「酸化」されるといい、スーパーオキシド、過酸化水素、ヒドロキシラジカルのように酸素分子のフリーラジカル状態を活性酸素といいます。
ATP産生において水とならなかった活性酸素のヒドロキシラジカルという原子は、細胞を構成している原子/分子から手当たり次第に電子を奪ってしまう最も強力な酸化作用(酸化ストレス)を持っていると言われています。
**酸化ストレスによる影響**
活性酸素は高い反応性を持つために、外部から体内に侵入した異物、毒物などの病原菌を除去する作用があることが知られています。
人間の免疫システムである白血球の一種である好中球や、マクロファージと呼ばれるアメーバ-状の大食細胞は体内の酸素を用いて活性酸素を生成し、体外から侵入してきた細菌や異物を除去していると言われています。
また病原菌に対する活性酸素の有効使用としては、癌治療としての放射線治療が挙げられますが、これは細胞に紫外線を照射することによって発生する活性酸素を利用した病原菌の機能低下・停止を目的としたものです。
しかし活性化酸素はそのような病原体に対してだけでなく、体内の正常な細胞まで酸化して損傷してしまうため、過剰な活性酸素は老化の促進、動脈硬化、心筋効果、脳梗塞などの発症、アルツハイマー病、癌などのさまざまな疾患の原因になっていると言われています。
**酸化防止剤としてのイデベノン**
イデベノンはコエンザイムQ10と同様の作用をもつ酸化防止物質で、低酸素下でもその作用を発揮します。
コエンザイムQ10とは、細胞活動のエネルギー源となるATP(アデノシン三リン酸)生成の補酵素で、全ての細胞とミトコンドリアやマイクロソームなどの小器官を囲っている脂質の膜の重要な酸化防止物質です。
また、ATPを生成する過程のミトコンドリア内での電子伝達系といわれるプロセスにおいても欠かせない物質であるとされています。
イデベノンがコエンザイムQ10と比べて優れているのは、低酸素下においても酸化防止作用を発揮するところにあります。
体のある部位において心臓発作、脳卒中、外傷、ショック、慢性血行不良などで血流が減少すると細胞に充分な酸素や栄養が行き渡らなくなります。
このような低酸素状況が生じた場合、コエンザイムQ10は細胞膜などの脂質に含まれている酸素との反応で酸化し、細胞のエネルギーとなるATPの生成を半減する一方で莫大な量の活性酸素を生じさせます。
脳や脊髄の細胞はこうして生じた活性酸素による酸化ストレスの影響を最も受けやすいと言われています。
これらの器官における損傷は数分間で引き起こされるものもあり、中には回復できないダメージとなることもあります。
イデベノンはコエンザイムQ10が酸化促進物質と変化するような低酸素状況においても酸化防止作用を保つため、細胞やミトコンドリアの酸化ストレスによる損傷を防ぎ、細胞のエネルギーとなるATPの生成量を通常に近い状態に保つと言われています。
イデベノンは体内で生成されますが、加齢とともにその生成量が減少すると言われています。
**イデベノンの美肌効果**
活性酸素は生体活動によって発生する以外に、外的要因によっても発生します。
代表的なものは癌治療における紫外線照射治療で、紫外線を患部に照射することによって体内に活性酸素を発生させ、癌の進行を遅らせたり停止させる効果を狙ったものです。
紫外線とは太陽光線の一つです。地表に届く太陽光線は紫外線、可視光線、赤外線があります。
このうち波長が最も短い紫外線は強いエネルギーを持ち、人体に大きな影響を与えるといわれています。実際紫外線を長期間浴びているとシミ、しわ、くすみ、たるみ等の肌のトラブルが発生します。
紫外線によって発生した活性酸素は酸化ストレスによって細胞を損傷させたり、メラニン色素を生成するチロシナーゼ酵素を活性化させてシミやくすみを生じさせます。
また、紫外線は表皮の下の真皮層まで届くため、そこで発生した活性酸素による酸化ストレスが真皮層の腺維細胞を損傷し、肌の弾力を保つと言われるコラーゲン、エラスチン、ヒアルロン酸の生成を減少、あるいは硬く変性させてしまいます。このような弾力性の喪失が肌のしわやたるみとなって発生します。
このような紫外線による活性酸素による酸化ストレスが原因の、トラブルの予防や改善には、コエンザイムQ10やイデソールの有効成分であるイデベノンの酸化防止作用が効果的です。
特にイデベノンはコエンザイムQ10の3倍以上の酸化防止作用があるため、より強力に酸化ストレスによる肌のダメージを阻害します。
イデベノンの強力な酸化防止作用は美容業界でも注目を集めており、大手化粧品会社であるエリザベス・アーデンなどの商品にも採用されています。
**イデベノンのアンチエイジング効果**
若者と高齢者の心細胞を比較したところ、若者の心細胞におけるミトコンドリアDNAの損傷やそのATPの生成機能障害はほとんど見られません。
それに対して、高齢者の心細胞には著しいミトコンドリアDNAの損傷およびATP生成量の減少が認められます。
このように長い間に渡る酸化ストレスによるミトコンドリアDNA損傷はミトコンドリアを増殖させる分裂あるいは融合といった機能を低下させてしまいます。
細胞内のミトコンドリアの数が減るということは、ミトコンドリア内のコエンザイムQ10やイデベノンといった酸化防止物質の減少を意味し、酸化ストレスによる細胞やミトコンドリアへの悪影響を防ぐ事ができないということになります。
人体の細胞のエネルギーであるATP(アデノシン三リン酸)の90%がミトコンドリアで生成されているといわれているため、ミトコンドリア減少によるATP生成量の減少は脳、骨格筋、心筋細胞に著しく影響を与え、それが身体における老化という現象となって現れると言われています。
コエンザイムQ10は低酸素下では酸化促進物質となっていまいますが、イデベノンは低酸素状況下でも酸化防止作用を発揮し、細胞やミトコンドリアへの酸化ストレスによる悪影響を阻害すると言われています。
イデベノンの酸化防止作用は酸化ストレスからミトコンドリアDNAや細胞そのものを保護し、健常な細胞維持することによって身体の老化を遅らせることができると考えられています。
**イデベノンのその他の効用**
イデベノンは脳内の神経伝達物質のひとつで感情のコントロールや精神安定の効果があると言われているセロトニンの生成や、神経刺激の伝達物質であるアセチルコリンの情報伝達機能を増強して脳を活性化させます。
このイデベノンによる脳の活性化作用は健康状態や薬の服用にほとんど影響を受けることがないという報告がなされています。
さらにイデベノンにはチロシンの細胞内への積極的な取り込みを促進することによってドパーミン、アドレナリン、ノルアドレナリンなどの他の神経伝達物質の生成を増加させる作用もあります。
また脳の海馬と呼ばれる記憶や学習を司る領域の神経幹細胞を長期に渡って増強したり、脳の代謝を高めて脳卒中による脳細胞の損傷を軽減する作用があるとされ、アルツハイマー病の治療にも効果があると言われているほか、向知薬のピラセタムと同様に左右の大脳半球間の情報伝達を促進する作用もあるといわれています。