Q 300の有効成分の硫酸キニーネは、中米コスタリカから南米ボリビアを原産地とするアカネ科の樹木であるキナの樹皮に含まれるアルカイド(窒素原子を含み、塩素性を示す天然由来の有機物)で、解熱作用、抗マラリア作用、鎮痛作用、抗炎症作用などがあります。
これらの作用のうちで特に抗マラリア作用において優れているため、抗マラリア薬として使用されてきましたが、激しい運動の後や夜間によく起こるこむらがえりの予防にも有効であるとしてマラリア感染地域以外では鎮痛剤として広く使用されています。
キニーネは水溶性が低いため、薬剤の有効成分としては塩酸キニーネや硫酸キニーネといった形で用いられています。
●こむらがえり
「こむらがえり(こぶらがえり)」とは下肢、特にふくらはぎに起こる一過性の筋痙攣のことで、一般的には「足が攣る(つる)」と表現されます。
激しい運動、水泳の後や睡眠中に現れることが多く、下肢の筋肉の一部に強い痛みを伴ったけいれんが起こり、数十秒から数分間続きます。
原因としてミネラル不足による筋肉の異常収縮や下腿静脈のうっ血、筋肉の激しい疲労、寒冷、過度の緊張などが挙げられていますが、はっきりとした原因はわかっていません。
神経から筋肉への情報伝達を円滑にするには、活動電位といわれる体内における微弱な電位変化が関わっていますが、この電活動電位には不応期と呼ばれる刺激に反応しない時期が存在します。
Q300の有効成分であるキニーネには、筋肉の収縮/収縮情報伝達因子であるカルシウムの筋繊維内への分布を増強する働きがある一方で、骨格筋の筋繊維に直接働きかけてその収縮情報の不応期を増長させる作用があるため、結果として筋強縮の刺激を軽減させます。
また運動神経終末から発せられたアセチルコリンからのシグナルを受ける運動終板という部位の興奮性を減少させる作用により、運動神経が受けた刺激による筋けいれんが減少すると考えられています。
●マラリア
マラリアは熱帯、亜熱帯地域に広く分布する原虫感染症で、蚊の一種であるハマダラカによって触媒されます。
統計上1年間に3億~5億人が感染し、150万~270万人の死者がいると言われています。
日本においては触媒するハマダラカの撲滅により、年間100~150件の海外旅行先で感染した輸入マラリア患者のみとなっていますが、患者数の少なさから認識が低く、風邪などと誤診されて適切な治療が遅れるため死亡するケースも報告されています。
マラリアに感染すると一定の潜伏期間(通常1~3週間程)の後、突然ふるえがきて、頭痛、吐き気、関節の痛みを伴う40℃を超える高熱が出ます。
マラリアは、ハマダラカによって吸血された時に、ハマダラカの唾液を介して体内に侵入したマラリア原虫によって引き起こされます。
体内に侵入したマラリア原虫はまず肝臓内に侵入します。肝臓内で成熟した後に肝細胞を破壊して赤血球に移り、赤血球内でさらに増殖します。
その後、赤血球を破壊して血液中に出て、新たな赤血球への侵入、破壊を繰り返します。
マラリアの中でも熱帯熱マラリアに感染すると、感染した赤血球が細かい血管の壁に付着して血管を詰まらせるために脳、肺、腎臓など多くの臓器がダメージを受け、場合によっては命を落とす危険性もあります。
合併症の一つである脳性マラリアは、熱帯熱マラリア合併症のうち最も危険なもので、高熱、頭痛、眠気、せん妄、錯乱、けいれん発作、昏睡といった症状を引き起こします。
また、赤血球が破壊されることによって血中に放出されたヘモグロビンが尿内に排泄されるため、尿が黒くなる黒水熱といった合併症があり、これは腎機能を著しく損害します。
Q 300の有効成分であるキニーネの抗マラリア作用は、はっきりとは解明されていません。一般的には殺シゾント薬としてマラリア原虫の増殖を阻害することによって、抗マラリア作用をもたらすと考えられています。
熱帯熱マラリア原虫は二分裂や多分裂、あるいは出芽といった無性生殖で増殖します。キニーネは熱帯熱マラリア原虫とともに血流の中に入り、マラリア原虫のDNAに結びついてマラリアの増殖作用を阻害すると考えられ、その作用により病状が改善させられると言われています。
キニーネは抗マラリア第一薬として1940年頃まで広く使用されていました。しかし重度の副作用が懸念されることや、比較的副作用が少ないと言われるクロロキン、メフロキンといったマラリア薬が開発されたこともあり、一時はほとんど使用されなくなっていました。
しかし最近ではクロロキン、メフロキンが効かない薬剤耐性マラリアの出現により、クロロキン耐性、メフロキン耐性熱帯熱マラリアの治療薬として使用されています。
マラリアには予防ワクチンがないため、マラリア感染予防には事前に抗マラリア薬を予防内服することによって感染を避けるしか手段がありません。
キニーネは体内に侵入したマラリア原虫に対して効力を発揮する薬です。予防薬としての効果はありませんので注意して下さい。