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2013-02-21

ソース(記事原文):ニュース・メディカル

イマチニブが多発性硬化症の進行を遅延かつ抑制

ニュース・メディカル(2013年2月21日)― 米科学誌プロス・ワン(PLOS ONE)に掲載された新たな研究によれば、がん治療に現在用いられている薬剤が、ラットにおいて多発性硬化症という自己免疫疾患の進行を遅延させ抑制することができるという。今回の発見は、スウェーデンのカロリンスカ研究所(Karolinska Institutet)の研究者らによるもので、多発性硬化症患者の治療を今後より良いものに導く可能性がある。

多発性硬化症とは、免疫系が脊髄と脳を攻撃する病気であり、神経組織に損傷を与えるので、視力障害や麻痺などの神経学的能力障害を引き起こす。スウェーデンには約17,000人の多発性硬化症患者が存在し、ほとんどの人が20歳~40歳で発症している。この疾患は現時点では治癒不能であり、この症状を改善させる治療は重篤な副作用を伴う。

カロリンスカ研究所の医化学・生物物理学部門のイングリッド・ニルソン(Ingrid Nilsson)助教は「再発期にある多発性硬化症患者を対象に、副作用を最小限に抑えた効果的な新薬の発見が、とりわけ早急に必要とされる」としている。

この疾患は白血球が中枢神経系を攻撃するときに生じる。血液脳関門が血管壁を通過できるものを制御することによって、中枢神経系を一般に保護している。しかし、多発性硬化症の招く炎症が、血液脳関門の透過性を高め、免疫細胞を通過させてしまう。

本研究では、血液脳関門を封鎖することにより神経症状に影響が及ぶ可能性について、研究チームが検討している。これは一般的なラットモデルを用いて実施されたもので、自己免疫反応を誘発する神経組織の内在性タンパク質によってラットの免疫防御を刺激し、それにより白血球が中枢神経系のタンパク質を攻撃するようになり、ヒト多発性硬化症の症状と同じような症状がラットに現れるようにした。次に、イマチニブ(グリベック)をラットに投与した。この薬は一部のがんを治療するのに用いられるほか、血液脳関門の漏出を軽減することが過去に示されている。

ニルソン氏は「イマチニブを投与することで、疾患進行を遅らせ、神経症状を改善させることができた。これは白血球の血液から神経組織内への流入を阻止することで得られたものである」と述べている。

また、イマチニブ治療は、自己免疫反応を抑制し、血液脳関門から漏出する白血球数を減少させた。本剤は既にがん患者に使用されていることから、この治療の臨床試験は多発性硬化症患者で近い将来に実施されると考えられる。

同氏は「この治療は既に症状を発症していた動物に投与した場合においても有効であることが証明されており、このことは多発性硬化症患者に使用する観点から極めて重要である」としている。

出典:米科学誌プロス・ワン(PLOS ONE)


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