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2009-12-18

ソース(記事原文):サイエンスデイリー

ステロイド注射が糖尿病関連の眼疾患の進行を遅らせるかもしれない

サイエンスデイリー(2009年12月18日)―ジャマ・アーカイブ(JAMA/Archives)のジャーナルの1つであるアーカイブ・オブ・オフサルモロジ―誌(Archives of Ophthalmology:眼科学に関する雑誌)12月号に掲載された報告によれば、コルチコステロイドであるトリアムシノロンの眼内注射によって、糖尿病性網膜症の進行が抑制されるかもしれない。糖尿病性網膜症は糖尿病の合併症であり、視力低下や失明を引き起こす可能性がある。

この論文の基礎的な情報によると、増殖性糖尿病性網膜症は視神経乳頭や網膜の他の部分に新生血管が形成されることで発症する。糖尿病とその合併症の治療は進歩しているにもかかわらず、約700,000人の米国人が増殖性糖尿病性網膜症を発症しており、毎年新たに63,000件の発症が見られる。網膜症の発症を防ぐには血糖値のコントロールが有用であり、またレーザー治療によって失明のリスクを減らすことができるが、依然として他の治療法の確立が望まれている。

ボルチモアにあるジョンズ・ホプキンス大学医学部(Johns Hopkins University School of Medicine)のネイルM.ブレスラー医師(Neil M. Bressler, M.D.)と糖尿病性網膜症臨床研究ネットワーク(the Diabetic Retinopathy Clinical Research Network)の共同研究者らは試験を実施し、被験者693例の黄斑浮腫が認められる眼840例を試験に組み入れた。黄斑浮腫は多くの網膜症例に見られる疾患で、網膜の部分に体液が漏出することで発症する。試験対象の眼を、光凝固術(血管を破壊するレーザー治療)群、トリアムシノロンアセトニド1mgを4カ月ごとに直接眼内注射する群、同じく4mgを4カ月ごとに直接眼内注射する群のいずれかに無作為に割り付けた。

2年後に網膜症が進行していたのは、光凝固術治療群の眼330例中31%、トリアムシノロンアセトニド1mg投与群の眼256例中29%、トリアムシノロンアセトニド4mg投与群の眼254例中21%であった。2年目にはトリアムシノロン群のほとんどの眼が4か月ごとに注射投与を受けず、また3年目にはトリアムシノロン群の半分以下の眼が一度も注射投与を受けなかったが、3年後のこれら3群間の差は変わらないように思われた。

コルチコステロイドは新生血管の形成を阻害することが明らかにされており、おそらく新生血管の増殖促進化合物の産生を減らすことで作用すると著者らは述べている。しかし、ステロイドは副作用として他の眼疾患も引き起こす。

「硝子体内にステロイドを投与すると緑内障や白内障のリスクが高まることから、網膜症の進行の可能性を減らす目的で、このコルチコステロイド製剤を硝子体内に投与(眼内注射)することは現時点では認められない。」と著者らは述べている。「増殖性糖尿病性網膜症はすでに汎網膜光凝固術によって安全で効果的に治療できるため、この疾患を防ぐ目的で日常的に使用される治療法は、恐らくどのようなものであれ光凝固術以上に安全でなければならない。それでもなお、薬物療法が網膜症の進行率を下げるために果たす役割について、さらなる研究が必要であると思われる。」