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2013-06-05

ソース(記事原文):精神科ニュース

バラシクロビルが双極性障害患者の認知を改善

精神科ニュース(2013年6月5日)― ブルース・ヤンシン(BRUCE JANCIN)著

【フロリダ州ハリウッド】―双極性障害で認知障害もみられ、さらに単純ヘルペスウイルス1型(HSV-1)血清陽性の患者を対象とした無作為化二重盲検プラセボ対照臨床試験において、4カ月間の経口抗ウイルス薬バラシクロビルは患者の認知機能を高めた。

この被験者数60名の試験で、「神経心理学的検査(Repeatable Battery for the Assessment of Neurological Status : RBANS)のスコアがベースラインより10ポイント以上増加」と定義された「臨床的に有意義な認知機能の改善」を示したのは、バラシクロビル(バルトレックス)群では53%だったのに対しプラセボ群では14%であった。国立精神衛生研究所(National Institute of Mental Health)主催の新臨床医薬品評価部(New Clinical Drug Evaluation Unit)会合で、ジェニファーL.ペイン博士(Dr. Jennifer L. Payne)はそう報告した。

この研究で実証された、バラシクロビル反応性の素晴らしい改善は精神疾患のウイルス仮説を支持するものだという。この仮説は、遺伝的脆弱性を有する人がなんらかのヘルペスウイルスに感染すると統合失調症や双極性障害などの主要な精神疾患を発症しかねないというもので、そのような疾患にはアルツハイマー病も含まれると考えられている。

精神科医で、ジョンズ・ホプキンス大学(Johns Hopkins University)(ボルチモア)の女性気分障害センター長を務めるペイン博士は、こう語った。「この背景にあるのは、ストレスなどの刺激による(中枢神経系の)ウイルスの偶発的な再活性化が、気分・認知・精神病的症状の引き金になるという考えです。皆さんが患者を治療する場合、いつも『患者はなんらかのストレスにさらされて精神疾患になっている』と考えますよね。(単純ヘルペスウイルスが)その精神病理の根底の一部を成すというのも、1つの考え方です」。

双極性障害における認知障害とHSV-1の関連を特定した初期の草分け的研究を行ったとして、ペイン博士は、シェパード・プラット研究所(Sheppard Pratt Institute)(ボルチモア)のフェイスB.ディッカーソンPh.D.(Faith B. Dickerson, Ph.D.)の功績をたたえた。ディッカーソン博士と同僚らはRBANSで評価する認知障害に関して、双極性障害でHSV-1血清陽性の患者を血清陰性の患者と比較したところ、約20倍のリスク増加を認めたと報告している(Biol. Psychiatry 2004;55:588-93)。

RBANSは25分ほどかかる筆記検査だ。一般集団の平均スコアは100である。平均から1標準偏差下回ったのがスコア85である。検査を再度実施すると、一般集団の16%はスコアを10ポイント以上改善することが可能で、この割合は今回の試験のプラセボ群でみられた成績に近い。RBANSは、注意、即時記憶、遅延記憶、言語、視空間構成という各セクションに分かれている。

HSV-1は通常、口唇ヘルペスを引き起こす。この病気は極めて一般的な感染症だ。中年になる頃には、米国人の約70%でHSV-1の血清抗体価がみられる。このウイルスは中枢神経系(CNS)に感染し、何年もの間潜伏し続け、ときおり症状を再発させることが多い。

ペイン博士が双極性障害の患者106名のスクリーニングを行ったところ、84名がHSV-1血清陽性と分かった。ベースラインの平均RBANSスコアは血清陽性集団で75であったのに対し、血清陰性集団では92だった。HSV-1の血清学的状態とRBANSスコアの間に認められた関連性は、教育水準で調整後の多変量ロジスティック回帰分析でも有意なままであった。

被験者となった60名は外来の双極性障害患者(平均年齢43歳)であった。37%が双極I型障害、残りが双極II型障害の診断基準を満たした。ベースライン時のRBANSスコアが85以下という認知障害の条件を、全員が満たしていた。ベースライン時の『モンゴメリー・アズバーグうつ病評価尺度(Montgomery-Asberg Depression Rating Scale : MADRS)』の平均スコアは24、『ヤング躁病評価尺度(Young Mania Rating Scale : YMRS)』の平均スコアは8だった。患者らは試験期間中も通常の精神医学的薬物療法を受け続けた。

4カ月にわたり、2週間ごとにMADRS とYMRS で患者の気分症状の変化を評価した。結果は驚きだった。

ペイン博士は、「バラシクロビルによる認知の改善はうつ病の改善を伴うというのが私たちの仮説でしたが、MADRSスコアは時間が経過しても変わりませんでした」と話した。

双極性障害の患者を対象に行われる長期臨床試験ではよくあるように、脱落率が高かった。バラシクロビル群で試験を完遂した19例の平均RBANSスコアは、ベースライン時の67.6から4カ月後には77.7に改善していた。対照群で試験を完遂した22例では、時間が経過してもスコアの有意な変化がみられなかった。

この結果が別の臨床試験でも確認されれば(博士は、双極性障害で血清陽性だが認知障害ではない患者を対象とした試験を計画している)、日常診療が変わることになるという。

「この研究結果が裏付けられれば、臨床医として私たちは患者のHSV-1検査を実施し、陽性なら治療する必要があるということになります」。博士はそう語った。

博士は今後、大うつ病性障害の患者を対象にHSV-1抗体の状態、認知、抗ウイルス療法の影響の可能性を調べることも計画している。

双極性障害患者は、特に注意・記憶・遂行機能の領域で認知障害を訴えたり、その症状を呈したりすることが多い。機能障害は躁病またはうつ病エピソードの最中に悪化するのが典型的だが、情動的に中立なときにみられることもしばしばである。

この無作為化試験は、スタンレー医学研究所(Stanley Medical Research Institute)の資金援助を受けて行われた。ペイン博士は、ファイザー社(Pfizer)およびアストラゼネカ社(AstraZeneca)のコンサルタントをしていると報告した。


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