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2009-11-10

ソース(記事原文):サイエンスデイリー

リーシュマニア症:顧みられない寄生虫感染症の治療薬を見つけるための新しい戦略

ScienceDaily (2009年11月10日) ——独自に開発した全く新しい方法を使い、ピッツバーグ大学創薬チームとウォルター=リード陸軍研究所の研究者らは共同で、リーシュマニア症に対する治療効果が期待できる化合物を発見した。リーシュマニア症は寄生虫感染症で、世界で最も見過ごされてきた疾患の一つだと広く考えられている。今回の発見は本日付けでオンライン科学雑誌「PLoS Neglected Tropical Diseases」に掲載される。

これらの治療薬候補はリーシュマニア寄生虫の生活環の特定の段階においてこの寄生虫の成長を阻害する。ピッツバーグ大学創薬研究所所長で上級研究員のジョン= S.ラゾー博士によれば、まず20万種近い化学化合物をスクリーニング(選別)し、既存のもの、未知のものを問わず全化合物を化学種ごと、ないし化学的分類ごとに再分類することで今回の発見に至った。同博士は同大学医学部薬理学・化学生物学科の教授(アレゲニー財団)でもある。最も効力の高い化合物のうち一つについてマウスリーシュマニア症モデルを用いてさらに調べたところ、リーシュマニア症に効果がある可能性が確認できた。

「リーシュマニア症に対する新しい治療薬発見に向けて続けてきた研究が大きく前進しようとしています。リーシュマニア症はいわゆる顧みられない疾患の中でも特に顧みられない疾患だと申し上げたいです。」ラゾー博士は言う。「私どもが開発した方法は他の寄生虫感染症の治療薬を見つけるのにも応用できるかも知れません。寄生虫感染症は世界の公衆衛生にとって、とてつもない負担となっているんです。」

米国疾病対策予防センターによると、世界中で毎年約150万人が新たに皮膚リーシュマニア症に感染し、約50万人が内臓リーシュマニア症に感染する。前者が皮膚に潰瘍を形成するのに対し、後者は発熱、体重減少、肝脾腫を招く。この寄生虫を媒介するサシチョウバエに刺されることで感染するが、ワクチンも予防薬も存在していない。

リーシュマニア症の新しい治療薬開発への関心が高まっているのは米軍がアフガニスタンとイラクに駐留しているからだ。この地域ではリーシュマニア症は普通に見られる疾患だ、と共同研究者のアラン=マギル大佐・医師は言う。メリーランド州シルバースプリングにあるウォルター=リード陸軍研究所の実験治療学部門の責任者だ。

「兵士たちがリーシュマニア寄生虫に感染する危険があるんです。でも今ある治療薬は重い副作用を引き起こす恐れがあります。それに寄生虫の方も治療薬に対して耐性を獲得してきています。50年も前の薬をそのまま使っていますからね。」

有望な治療薬候補を探していたエリザベス= R.シャーロー博士は、今回の新しい研究ではこれまでのやり方にとらわれない新しい方法を取った。同博士は同大学医学部薬理学・化学生物学科の研究助手である。リーシュマニア寄生虫がサシチョウバエに感染するのは、寄生虫の生活環の中で前鞭毛期と呼ばれる段階においてである。博士はまず、自身で開発した分析法を用いて治療薬候補が前鞭毛期にある寄生虫(前鞭毛虫)の成長を抑制するかどうか調べた。

「もう一つ独特な手順を踏みました。化合物の濃度を比較的高くしてスクリーニングしたんです。こうすると前鞭毛虫の成長を抑制する効果が出やすくなりますから。」シャーロー博士は語る。「単に薬理活性のある化合物を見つけるだけでなく、できるだけいろいろな種類のものを見つけるのが目的でした。そして強力なコンピューターを利用してそれら化合物を似かよった化学種ごとにまとめました。その先の試験をやりやすくするためにです。」

研究者らはこの方式を「HILCES」と名付けた。高速大量・低厳重性・コンピューター増強低分子スクリーニング(high throughput, low-stringency, computationally enhanced small molecule screening)の略である。低厳重性とは創薬分野の専門用語で高濃度を意味する。

こうして見つかったリーシュマニア症抑制効果が期待できる化合物のうち一つは、一般名ジスルフィラム、商品名アンタビュースという医薬品であった。アルコール感受性を急激に高める作用があるため、慢性アルコール中毒患者に断酒を促すために処方されることがある。マウスリーシュマニア症モデルを用いた実験で、ジスルフィラムはマウス生体内での前鞭毛虫の成長を遅らせることができた。これはさらに言えば、HILCESを使えば有効な治療薬候補を予想もしないものも含めて発見できると証明できたということだ。

「100万年かかってもリーシュマニア症の治療にジスルフィラムのような化合物を使おうなんて考えもしなかったでしょうね。」とラゾー博士は言う。「ジスルフィラムの魅力は既に広く使われていることと価格が手頃だということです。でも現在の構造のままではリーシュマニア症に対する第一選択薬ではないかもしれません。ウォルター=リード研究所の先生方と一緒にさらに改良を加えて、力価と効力を向上させるつもりです。」

一次及び有効性評価スクリーニングの全情報もオンライン上に掲載されている。「ですから世界のどこにいらっしゃる医学研究者や製薬業界の方もここから有用情報を掘り起こしてリーシュマニア症の別の治療薬候補を選びだし、最適な形に改変して頂けます。」そしてラゾー博士はこうも述べた。「他の寄生虫感染症に関してもHILCESと同様の方式を使えば、治療のための化合物を見つける上で極めて貴重な技術となるかもしれません。」

この論文の共著者には他に以下の各氏がいる。デビッド=クローズ理学士、タン=ジン=シャン博士、ステファニー=ライムグルーバー理学修士、ロビン=リード理学修士(以上、ピッツバーグ大学創薬研究所並びに同大学分子図書館・スクリーニングセンター)、ピーター=ワイフ博士(同大学化学科)、ガブリエラ=マスタータ博士(同大学医学部計算生物学科)、ジャコブ=ジョンソン大尉・博士、マイケル=オニール中佐・博士、マックス=グローグル大佐・博士(以上、ウォルター=リード陸軍研究所)。

この研究には米国陸軍並びに国立衛生研究所が助成金を提供した。


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