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2015-10-14
ソース(記事原文):その他ソース
一般的な乳がん治療薬がMRSAの攻撃を助ける可能性
【MNT】(2015年10月14日) ― 抗生物質に対する耐性は世界中で問題になっている。我々がさらにこの問題に取り組まない限り、「ポスト抗生物質時代」に向かうことを世界保健機関が昨年警告している。そして今、一般的に乳がん治療に使用されている薬が、もっともありふれた超強力な細菌のひとつであるMRSAに対して効果があるかもしれないことを研究者たちが発見した。
ネイチャー・コミュニケーションジャーナル誌で発表されたこの研究では、マウスにおけるMRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)の感染を減少させるために、タモキシフェンがどのように免疫システムを高めたのかについて明らかにしている。MRSAはアメリカにおいて医療機関関連感染のもっとも一般的な原因であり、肺炎、血流感染、皮膚および傷口感染など多数の重篤な疾病を引き起こす。
疾病対策センター(CDC)によると、アメリカでは毎年8万人以上がMRSAに感染し、1万1000人以上がこれにより死亡している。
MRSAは多くの抗生物質に対して耐性を持ち、治療が難しいために国民の健康にとって脅威になりつつある。MRSAを患う人では、黄色ブドウ球菌感染症に対して非耐性の人よりも64%多く死ぬ傾向にある、と世界保健機関(WHO)は断言している。世界的な指導者は新世代の抗生物質開発の必要性を強調したが、研究者たちはどうすれば現存する薬剤が抗生物質耐性に立ち向かうことができるかを追求し続けている。
「多剤耐性細菌性病原体の脅威は高まりつつありますが、新種の抗生物質開発の成果はありません」と語るのはカリフォルニア州サンディエゴ大学小児薬学教授のビクター・ニゼット博士。「薬棚を開けて、私たちが既に知っているほかの薬が持つ抗菌作用の可能性をよく調べることが、患者にとって安全なのです」。
タモキシフェンは、現在はホルモン受容体陽性の乳がんの治療に使用されている薬である。一部の乳がんの成長に必要とされるホルモンであるエストロゲン受容体に結合することで効果を発揮する。
その一方で、タモキシフェンにはさらなる効果がある。過去に実施された実験では、スフィンゴ脂質と呼ばれる脂肪分子を細胞が産生する過程でタモキシフェンが影響をおよぼすことを示している。スフィンゴ脂質は、特に細菌感染を防ぐ助けをする白血球細胞である好中球を制御する役割を果たしている。
これを踏まえてニゼット博士とその同僚は、タモキシフェンが好中球の行動に影響を与えることでMRSAに対して効果を発揮するかどうかの究明に着手した。
最初に、研究チームはヒトの好中球をタモキシフェンで治療した。治療しない好中球と比較して、タモキシフェンで治療した好中球は細菌の標的や取り込み対してより効果を発揮しただけでなく、病原菌をワナに送り殺菌するために好中球が放出する大量のDNA、酵素そしてたんぱく質である好中球細胞外トラップ(NETs)を3倍以上産生した。
研究チームは、ほかのエストロゲン標的薬剤では好中球に対してタモキシフェンと同じような効果があらわれないことを発見し、またさらなる研究によってタモキシフェンはセラミドと呼ばれる特定のスフィンゴ脂質の活動に影響を与えて好中球活性を活発にすることが明らかになった。
次に、マウスをMRSAに感染させる1時間前と感染後8時間にタモキシフェンまたは対照薬で治療し、タモキシフェンの効果をテストした。研究チームはマウスを5日間監視した。
対照薬を投与されたマウスでは、MRSA感染後に1日以上生存できなかったが、タモキシフェンを投与したマウスの35%は感染後でも5日間生存することができた。さらにタモキシフェン治療をしているマウスでは、対照薬治療のマウスと比較して腹腔内に蓄積する液体である腹水内のMRSAの度合いが5倍低かった。
「既に乳がん治療のために服用している人では効果が低い可能性」
とニゼット博士は結果について批評している。
「患者が免疫欠陥もしくは今までの抗生物質が効かない場合に、タモキシフェンは免疫機能を保護するように働く薬理学的特性があることを発見した」。
タモキシフェンはMRSAに対して見込みのある治療法のように思われるが、一部の細菌はNETを回避するように進化したため、抗生物質耐性を持つほかの細菌への効果はあまりないかもしれないことが研究者たちによって指摘されている。
さらに研究チームは、既に乳がんの治療でタモキシフェンを使用している人では効果が低い可能性があることを研究が浮き彫りにしたことも述べている。過去の研究の結果で、NETが気管支ぜん息や血管の炎症である脈管炎などと結びついていることを考慮すると、感染していない状態でのNETの過剰産生は危険なのかもしれない、と研究者たちは説明している。
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