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2011-08-25
ソース(記事原文):BBCヘルス
世界各国の政府は「肥満症への厳格な対策を講ずるべき」
BBCヘルス(2011年8月25日)―ニック・トリグル著、BBCニュース医療担当記者
専門家らによれば、肥満の危機的状況に取り組むなら、各政府がジャンクフード(インスタント食品・スナック菓子など)に課税するなど、もっと手荒な措置を取ることが必要とされるという。
一連の記事をランセット(医学誌)に発表した国際的な研究者グループは、この問題に真剣に取り組んだ国は未だないとしている。
社会が変化したことで健康的な生活を送るのが難しくなっている、と同研究者らは述べている。
また、国が動かなければ医療制度は破滅する可能性があるとも警告している。
現在、糖尿病などの肥満に関連した疾患が、大半の国で医療費の2%~6%を占めている。
医療費支出の増加
一方、記事の1つで指摘されているように、現在の傾向がこのまま続けば状況はさらに悪化する可能性が高い。
同研究者らは、肥満率が最も高い2つの先進国(米国と英国)に対する予測を行った。
英国での肥満率は2030年までに25%から約40%に上昇すると予測された。
そのような状況になれば、NHS(イギリス国家健康保証制度)に年間20億ポンドの負担額が上乗せされることになり、これは医療費支出の2%に相当する。
米国の場合、肥満の割合が3人に1人から、2人に約1人に増えると考えられ、医療費の負担はさらに大きくなる。
同研究者らは個人から企業まで社会全体が、この問題に取り組むための役割を担っていると認識している。
ただ、より良い環境を生み出すために、政府が法案と直接介入を用いて主導的役割を果たす必要があるとしている。
同研究者らは、不健康な食品への課税・ジャンクフードの広告規制・交通信号ラベル(交通信号のような分かりやすい栄養表示ラベル)・学校単位の教育プログラムなど、多くの対策が、節約(購入を控えること)につながるほか、健康にも有益になるとしている。
肥満対策 | |||
分類 | 節約につながる | 低コスト | 高コスト |
食品 | ・ジャンクフードに課税 ・ジャンクフードの広告規制 ・ 交通信号ラベル(交通信号のような分かりやすい栄養表示ラベル) |
・費用便益の分類 | |
生活習慣 | ・子供にテレビ視聴を控えさせる ・学校での運動と健康的な食生活 ・肥満児に働きかける |
・過体重の子供を持つ家族への補助 | ・学校でのウォーキング訓練 |
治療 | ・肥満のティーンエイジャー(13-19歳)と成人に対す る手術 | ・減量薬 |
情報源 ランセット誌
このほか肥満手術や、過体重小児を持つ家族向け健康プログラムの提供などは、比較的低額の医療費がかかるとはいえ検討してみるべきである。
主任研究者の1人でオックスフォード大学(Oxford University)の専門家クリム・マクファーソン(Klim McPherson)教授は、「健康に良いものを選択できるように、生活環境を変えることである」と述べた。
一方、同氏は、正しい対応策を取ることを避けている国が多すぎるとし、この9月に開催される健康に関する国連会議に対し、政府に対策を講じるよう圧力をかけることで「リーダーシップを発揮する」よう強く求めた。
同氏は、法案よりも企業の自由意志による同意を重視している英国政府を特に批判した。
大臣らは「自らのイデオロギーによって弱体化」しており、過保護国家と非難されることを危惧しすぎている、と同氏は述べている。
また、「大臣らはこの分野で政府が対策を取るのは好ましくないと考えている」と補足した。
オーストラリアを拠点とし、世界保健機構に属するボイド・スウィンバーン(Boyd Swinburn)教授は、政府が「肥満の危機」への対策を講じるのが遅すぎるという見解に同意した。
「根底にある原因に取り組むよりも、薬剤や手術に投資する意欲のほうが大きい」。
また同氏は、自社製品に病みつきになるよう仕向けるとともに、購入を控えさせようとする試みを妨害する食品産業の戦略と、数十年前のタバコ企業の戦略とを比較した。
公衆衛生学協議会(Association of Directors of Public Health)代表のフランク・アサートン(Frank Atherton)博士も、提案されている介入に賛同するとともに、「企業と協力しなくてはならないのは当然だが、この政府の力説は、法案からあまりにもかけ離れた感じがする」と述べた。
一方、食品飲料連盟(Food and Drink Federation)のテリー・ジョーンズ氏は、積極的な対策を講じてきたとしている。
ジョーンズ氏は、「英国の食品・飲料の産業が、国民の健康改善、特に肥満率の上昇に、どれほど力を注いできたかについてランセット誌は把握していない」と述べた。
アン・ミルトン保健相は、結果を出すための最善策は「自主的な努力の結集」にあると政府は考えているとした。
同氏は、メニューにカロリー情報を記載するという企業の公約を引用し、成果は得られているとした。
「『肥満税』(肥満原因となる食品などに課す税金)を課す計画は現在ないが、脂質・糖質・食塩を減らし、より健康的な選択肢が保証されるよう食品会社に働きかけている」。
「また、従来よりも栄養表示(正面表示)を一貫性のある情報に富んだものにするという商法が販売で利用されることを期待する」と同氏は補足した。
ミルトン保健相は「私たちは肥満が社会に提起する重大な脅威について認識しているとともに、健康を改善するために積極的な取り組みを行っている」と締めくくった。