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2000-10-11
ソース(記事原文):ABCニュース・ヘルス
研究報告:喘息治療薬は子供の発育を遅らせるものではない
著者:メリッサ・ショール
喘息持ちの子を持つ親御さんも一息つけるだろう。
新しい研究が2件行われた。それらの研究結果は、コルチコステロイドを使用する喘息持ちの子供に見られる成長の遅れは一時的なものであり、成人になる前に他の子供たちに追いつくであろうと報告している。コルチコステロイドとは、喘息の治療によく用いられる医薬品である。2件とも10月12日刊行のザ・ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシンに掲載されている。
過去10年間に行われた研究で、コルチコステロイドを長期にわたって使用すると、使用開始年度に身長の伸びが1センチメートル又は0.5インチ程失われることが明らかになっている。この研究結果により、中度の喘息を持つ親は喘息症状と喘息治療に伴う副作用のどちらを取るか、判断に迷うこととなった。
喘息は小児の慢性呼吸器疾患であり、数ある疾患の中で患者数は最も多い。米国アレルギー・喘息・免疫学会によると、米国では500万の子供たちが喘息を患っており、その数は増え続けているという。喘息による学校欠席総日数は、年1100万日に上り、そして救急センターへの搬送件数総数は50万件を超える。
治療薬の使用を勧めるも、敬遠される。
コルチコステロイド(陸上選手がパフォーマンスの向上を目的に使用するものとは異なる)は、気管の炎症を抑える。これにより咳や喘鳴音等の喘息症状は緩和される。
米国国立心肺血液研究所は、コルチコステロイドを最も効果的な長期喘息管理薬として定め、口腔又は鼻孔から吸引するものを勧めてはいる。しかし、1998年に行われた喘息に関する調査で明らかになったのは、その調査月の前月にコルチコステロイドを使用した患者は5人に1人しかいなかったという事実である。
医師と患者の両方が、コルチコステロイドの使用に積極的ではなかった。なぜなら、仮に毎年発育が遅れるとして、コルチコステロイドの使用が長期に及んだ場合に予想される遅れは、身長にして4センチメートルから6センチメートル、又は1.5インチから2.5インチになるためである。
1998年、アメリカ食品医薬品局は、喘息治療用のコルチコステロイドの容器に副作用例を記述したラベルを貼るよう製薬会社に要請した。更に同局は、コルチコステロイドを使用している児童の発育状態を観察するよう医師に注意喚起した。
子供が受ける治療に何らかのリスクが伴うのであれば、両親がそれに対し敏感になるのは当然である、とボルチモア市にあるジョーンズ・ホプキンス・アレルギー・アンド・アスマ・センターの内科医であり、今回の研究において中心的な役割を果たした参加者の一人でもあるフランクリン・アドキンソン医師は述べている。今回の研究により、発育途中の子供たちにとっても、喘息治療に最も有効であるコルチコステロイドの安全性が再確認されたのである。
発育状態に関する研究も行われた
アドキンソン医師が率いたチームの研究員は、合衆国内の8つの医療センターから集まった人々である。彼らは、軽度から中度の喘息を持つ5歳から12歳の1000人以上の子供たちを、偽薬を用いるグループ、非ステロイド系抗炎症薬を用いるグループ、そしてコルチコステロイド・ブデソニド(パルミコート)を用いるグループに分けた。ブデソニドとプロピオン酸ベクロメタゾン(べクロベント)はどちらとも吸引用のコルチコステロイドであり、発育の遅れと何らかの関連性があるものであると研究者はみている。
研究開始から4年から6年が経過し、喘息による入院件数の減少、そして喘息の炎症を抑制する効能の2つの観点から、コルチコステロイドが最も効果のある治療薬であることが判明した。更に最初の1年間に見られる発育の遅れは、身長にして1センチメートル程度であったことが確認された。
研究開始後1年を過ぎると、子供たちの発育に遅れはみられなかった。しかし、この研究が終了する頃に子供たちの身長を測ったところ、過去の研究結果が示した通り、平均身長と比べて1.1センチメートルほど低かった。
デンマークの研究者らによって行われた調査では、前述の研究に用いられたものと同じコルチコステロイドを服用する211人の子供たちを思春期が終わるまでの9年間追跡調査した。この調査では、子供たちの身長の伸びに遅れはみられなかった。
発育状態は平均値に同じになる
医師の中には、これら2つの研究結果は喘息持ちの子供を持つ親と小児科医にとって素晴らしいニュースであると、歓迎する人々もいる。
医学的にいえば、これらの医薬品は小児喘息を罹っている子供たちにとって素晴らしい薬であるが、今まで敬遠されてきた、とシカゴ大学に勤める喘息の専門家アラン・レフ医師は言う。「ステロイドを嫌って得られるものよりも、それによりもたらされる害の方が大きいのである」
しかし、ミネソタ州ロチェスターにあるメイヨ―・クリニックの医学部教授ジェームズ・リー博士は、依然として子供たちの発育状態に遅れがみられることを忘れるべきではない。確かにコルチコステロイドが子供の発育に与える影響は、それを使用し始めた最初の年に1センチメートルほど身長が短くなるというものであり、平均身長と比べて5年間で5センチメートルほど低くなるわけではないことが、ある程度確認されたわけだが、同時に、コルチコステロイドは何らかの作用により発育を遅らせることも確認されたのである、と述べている。同博士は、アメリカ食品医薬品局にコルチコステロイドにラベルを貼るよう進言した人物である。
ステロイドがどのように骨に影響を与えるのか、そして内臓に与えるコルチコステロイドの影響ついては、未だに判明していない。
ボストン市内にあるチルドレンズ・ホスピタルの呼吸器病科の主任メリー・エレン・ウォール医師と内分泌科主任のジョセフ・マイゾウブ医師は、10月12日刊行のザ・ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシンの中で、コルチコステロイドは発育を遅らせる可能性があるので乳幼児に与えるべきではないだろう、と発言している。そして、最終的な結論はまだ出されていないものの、成人がコルチコステロイドを大量に服用すると白内障になる可能性があることも指摘されている。
米国国立心肺血液研究所による経済的支援により、今回の研究は複数の研究所を交えて行われた。米国国立心肺血液研究所の役員であるクロード・レンファント氏は、コルチコステロイドの効能は、その副作用を補って余りある、と述べた。
子供の成長の遅れが例えわずかでもあることを、ご両親が懸念するのは分かっている。しかし、この副作用と、小児喘息を罹っている子供たちが遊び場や学校で元気に遊べることや、夜によく寝むれること、そして医者にかからずにすむことなどと比べると、どちらを優先すべきか答えは自ずと出てくるだろう。
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