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2011-09-09
ソース(記事原文):BBCヘルス
慢性背部痛の薬剤につながりうる遺伝子の発見
BBCヘルス(2011年9月9日)―慢性痛の原因となる遺伝子を特定するに至り、これが持続性の背部痛を治療するための薬に結びつく可能性がある、と研究者らは述べている。
ケンブリッジ大学(University of Cambridge)の研究者らが、HCN2遺伝子をマウスの痛覚神経(痛みを感じる神経)から除去したことを、サイエンス(科学誌)で報告した。
遺伝子を除去すると慢性痛が止まったが、急性痛への影響はなかった。
英国では7人に約1人が、関節炎や頭痛などを含む慢性痛に罹患している。
今回の結果は、慢性痛を制御するHCN2遺伝子が産生するタンパク質を遮断するための新薬開発への可能性を広げるものである、と同研究者らは述べている。
痛覚神経終末部に発現するHCN2遺伝子は、何年も前から知られているが、痛みを制御する役割については解明されていなかった。
本研究では、同研究者らが痛覚神経からHCN2遺伝子を除去した。続いて、細胞培養でこれらの神経に電気刺激を用いて、HCN2を除去することにより、どのように変化するのかを判定するための試験を実施した。
次に、マウスのHCN2遺伝子を欠失させ、この遺伝学的に改変したマウスを検討した。
研究者らは、マウスが異なるタイプの疼痛性刺激を回避する速さを測定することによって、HCN2遺伝子の欠失により神経因性疼痛が消えることを結論づけた。
ただし、HCN2の欠失が、通常の急性痛、例えば突然自分の舌を噛んだときなどに生じる痛みには影響しないことを、同研究者らは明らかにした。
「絶え間ない痛み」
慢性痛は主に2種類に分けられる。熱傷または関節炎などの持続性の神経損傷によって神経終末部が極めて敏感になり、痛みの感覚が増す場合、これを炎症痛という。
神経の損傷により継続的な痛みが生じる場合、これを神経因性疼痛という。研究によると、この種の慢性痛は、終生続くことが多いが、意外にも発生頻度は高く、現在の薬剤による治療では十分でないという。
慢性痛は、糖尿病や帯状疱疹の患者や、癌化学療法の直後に多くみられる。その他にも、腰の痛みや、その他の慢性疼痛の疾患でもよくみられる。
本研究の主著者でケンブリッジ大学薬理学部長ピーター・マクノートン(Peter McNaughton)教授は、今こうした患者に治療への希望がみえるとしている。
「神経因性疼痛に苦しむ患者では、有効な薬がないため、痛みが中断することはほとんどないか、全くないことが多い。今回の研究は、HCN2を遮断することによって慢性痛を治療する新薬の開発に向かう基盤となる」
同氏は「多くの遺伝子が、痛覚に重要な役割を担っているが、たいていの場合、これらの遺伝子を阻害すると、あらゆる痛みや感覚が、あっさり消える」と補足した。
「HCN2遺伝子に関する研究で大変興味深いのは、この遺伝子を除去するか、薬理学的に遮断することにより、正常な急性痛に影響を及ぼすことなく、神経因性疼痛を消せることにある。正常な痛覚は、偶発的な損傷を回避するのに不可欠であるため、今回の研究は臨床的に非常に役立つ可能性がある」
慈善団体バックケア(BackCare)代表のブライアン・ハモンド(Brian Hammond)博士は、本研究結果は朗報であるとしている。
「慢性痛の苦しみを和らげる有効な治療法は、いずれも歓迎すべきものである。飛躍的な進歩となるのは、痛みを軽減するのに役立つ治療である一方、身体の警告メカニズムを損なわずにそのまま残すところにある」
本研究は、生物工学&生物科学研究審議会(Biotechnology and Biological Sciences Research Council:BBSRC)から研究助成を受けた。