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2007-11-01

ソース(記事原文):サイエンスデイリー

海で見つかった抗癌剤

海洋生物工学者が泥地を好む海洋バクテリアで癌を治療

2007年11月1日

生物医学研究者は、サリニスポラ・トロピカ(Salinispora Tropica)というバクテリアの遺伝子の特定、配列決定を行った。抗癌作用のある混合物を作り出すこのバクテリアは、バハマ沖の海洋堆積物中に見られる。サリノスポラミドAと呼ばれる物質は、固形腫瘍のみならず多発性骨髄腫と呼ばれる骨髄の癌を治療できる可能性を示した。

今年アメリカでは140万人が癌と診断される見込みで、そのうち50万人以上が死に至るほど深刻な病状であると予想される。しかし今、科学者らはそんな癌に対する新兵器を見出した。海である。人々が走ったり、遊んだり、飛び込んだりしていた海の底で、癌を殺すものが発見されたのだ。

「このバクテリアは本当に効力の強い抗癌物質を作ります」とカリフォルニア、サンディエゴにあるスクリップス海洋研究所(Scripps Institution of Oceanography)海洋生化学者のブラッドリー・ムーア(Bradley Moore)博士はアイヴァンホー・ブロードキャスト・ニュース(Ivanhoe Broadcast News)に対して語った。

このバクテリアは1991年に発見されたが、スクリップス海洋研究所の研究者らがゲノム配列の決定を行い、このバクテリアの潜在的抗癌性を明らかにしたのは最近になってからであった。

「薬はこのようにして発見されるのです。我々研究者は、実際に外に出てバクテリアを繁殖させ、ゲノムを観察しなければなりません」とムーア博士は語った。「最近可能になったことは、バクテリアの細胞から酵素を取り出して試験管に入れ、創造主になったつもりで酵素を操作し新しい化学物質を創造するということです」。

こうして新しい薬が誕生する。「癌治療のためのより良い薬を探す重要な研究が行われていますが、自然に目を向けるのもこのような薬を見つける方法のひとつです」とスクリップス海洋研究所の科学研究補佐員のポール・ジェンセン(Paul Jensen)博士はアイヴァンホー・ブロードキャスト・ニュースに対し語った。

さらに、今日使用されている抗癌剤の大多数とは違い、このバクテリアは陸地では見つけられない。

「地球を見ると、陸地より海の方が大きいのです」とムーア博士は語った。

我らが海は、現在我々が気づいているよりも貴重な資源庫であるかもしれないと同氏は語る。臨床試験はすでに進行中である。サン・ディエゴにある製薬会社はこの薬を骨髄腫患者の治療に使用しており、もうすぐ他の癌治療のための試験も行える。

米国地球物理学連合(American Geophysical Union)と米国微生物学会(American Society for Microbiology)がこの報道のTV映像部分の中で情報提供を行った。

背景:スクリップス海洋研究所の研究者らは、バハマで採取された泥の中に潜在的な抗癌作用をもつバクテリアを発見。同バクテリアのゲノムの配列に成功した現在、ある製薬会社がその情報を用いて骨髄腫の患者の治療にあたっている。

バクテリアについて:サリニスポラ・トロピカとして知られるこのバクテリアは、抗生物質を作る有機体とされている陸地に生息するバクテリアのグループであるストレプトマイセス属の同族である。1991年に初めてバハマ沖の海洋堆積物中で発見されてから、このサリニスポラのゲノム配列を解明し、この堆積物中に生息するサリニスポラ・トロピカが天然抗生物質や抗癌物質を作り出すことを明らかにするまでに数年かかった。研究者らの発見によると、同バクテリアのゲノムのうち10%が抗生物質や抗癌物質の分子生産に寄与しているそうだ。それに比べ、その他のバクテリアのゲノムはその6‐8%しか同様の分子生産に貢献していない。ゲノム解析は、海洋生物が化学的防御や養分の吸収、そして他の海洋生物と接触する際に自然に使用する強力な分子を、多くの分子の中から選り分けための様々な方法を示してくれる。現在サリノスポラミドAという混合物については、固形腫瘍や骨髄にある形質細胞にできる癌である多発性骨髄腫治療の為、その臨床試験が行われている。

ゲノム配列決定のいろは:ゲノム配列決定とは、生物のDNA組織の構成要素であるゲノム中のDNAのヌクレオチド配列(塩基配列)を解析することである。ゲノムは一度に全て配列決定できるものではない。これはDNA配列決定法が一度に狭いDNA範囲しか扱えないからである。従って研究者らは、DNAを細かい部分に切り分けて配列決定を行い、もう一度正しい順序でつなぎ直し、ゲノム全体の配列決定を行う。これには2つの方法がある。「階層化ショットガン法」では、ゲノムをおよそ15万塩基対の長さのクローンと呼ばれる単位に切断し、ゲノムマッピング技術を用いてゲノム中の分布を決定する。その後クローンをより小さい、断片をオーバーラップさせた500塩基対の長さに切断して配列決定を行い、オーバーラップ部分を手がかりに全クローンの配列を再建する。

もうひとつの方法は「全ゲノムショットガン法」と呼ばれ、これはゲノムを小さい単位に切断して配列決定を行い、それをもとの完全なゲノムにつなぎ直すという方法である。階層化ショットガン法の方が信頼性は高いが、時間がかかり遅い。全ゲノムショットガン法はより早いが、極小に切り分けた配列を一度に正しくつなぎ直すのが非常に困難である。どちらの方法もサリニスポラ・トロピカの遺伝子パズルを完全解読するには不十分であるとされている。しかし、この生物の天然物化学に関する情報が配列決定のギャップを埋めるのに役立った。

編集者ノート: この記事は、医学的アドバイス、診断、又は治療を提供するためのものではありません。