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2009-06-01
ソース(記事原文):BBCヘルス
消化性潰瘍
トリシャ・マクネア博士
胃の潰瘍(胃潰瘍)と十二指腸(胃の後に続く腸の最初の部分)の潰瘍は、ともに消化性潰瘍として知られています。
この記事はトリシャ・マクネア博士によって書かれ、2009年6月時点では医学的に最新のものです。
かつては、慢性胃潰瘍の痛みを完全に取り除いたり、命を脅かす恐れのある出血リスクを避けたりするためには、胃のかなりの部分を切除するのが唯一の方法でした。現在では、抗生物質による治療がほぼすべての人に適用されています。
症状
ほとんどの胃潰瘍はごく小さいものの、その痛みは大変なものです。そうした痛みには次のような傾向があります。
・持続性の差し込む痛みや焼け付く痛み。
・上腹部の中央が痛む(ただし、痛みが背中に抜けることもあります。)。
・夜間または早朝に悪化する。
・食事を抜くと悪化する。
・食べ物または制酸薬やミルクのような「白い薬」の摂取により和らぐ。
そのほかの症状として以下が挙げられます。
・疲労感
・悪心や嘔吐
・消化不良や胸焼けのほか、血を吐いたり血便が出たりする(潰瘍の症状がこれだけということもあります。)。
・出血が原因で貧血となり、顔面蒼白や息切れが生じる。
ただし、中には症状が全くあらわれない人もいます。
消化性潰瘍を治療しないままでいると、急激な内出血が起こる恐れがあり非常に危険です。あるいは腸に穿孔や閉塞が生じることもあります。
原因とリスク因子
消化性潰瘍は、胃や十二指腸の粘膜が破壊されたり、侵食されたりして生じます。通常その粘膜は、食べ物のかけらが入ってくる、そしてそれらをかき回すというかなり厳しい試練に耐えています。またその間は胃の強力な消化液の作用にも耐えているのです。
この消化性潰瘍の主要原因がヘリコバクター・ピロリ菌(H.ピロリ)であるという発見は、現代医学の偉大なサクセスストーリーの1つとなっています。
胃や十二指腸の粘膜は複数のメカニズムによって保護されていますが、特定の条件下でそれらが上手くいかなくなると、胃酸や消化酵素によるダメージを受けてしまいます。特定の条件とは次のようなものです。
・H.ピロリ感染―多くの人がこの細菌を保有しています。H.ピロリ菌感染者すべてに潰瘍ができるわけではありませんが、潰瘍ができてしまった人ほぼ全員がH.ピロリ菌保有者です。
・非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)―NSAIDsには、アスピリン、イブプロフェンのほか、関節炎などを適応とする多くの消炎鎮痛薬があります。消化性潰瘍や出血は、これらの薬を使用した時によくみられる問題です。
・喫煙
・アルコールの過剰摂取
消化性潰瘍のリスクを高める因子として、そのほかには潰瘍の家族歴、血液型がO型であることなどが挙げられます。
以前は強いストレスが原因で潰瘍が生じると考えられていましたが、現在、精神的ストレスというのは既存の潰瘍の痛みをひどくするだけであり、場合によっては治癒を妨げることもあるというのが多くの医師の考えです。
重度のやけど、大手術、あるいは大きな外傷など体にかなり大きい身体的ストレスをかけてしまう出来事は、消化性潰瘍との関連性があるようです。
消化性潰瘍の確定診断のための検査には以下があります。
・胃内視鏡検査―内視鏡の細い管を胃の中に通して、胃や十二指腸の粘膜を調べます。
・バリウム検査―バリウムと呼ばれるものを飲み、X線で潰瘍を浮き彫りにします。
またH.ピロリの有無も検査で調べます。そのための検査として、血液検査、呼気検査、あるいは胃や十二指腸の粘膜の生検が挙げられます。
治療と回復
H.ピロリが発見されれば、除菌療法が主な治療法になります。一般に、この治療法は2種類の抗生物質と胃酸の産生を抑える薬を1種類を組み合わせて、これを1週間服用するというものです。これは「3剤併用療法」として広く知られています。
また喫煙などの潰瘍を悪化させる因子を減らしたり、NSAIDsの服用を中止したりすることも大切です。
通常、消化性潰瘍は薬物療法によって治癒しますが、未だ一部のケースでは手術が必要です。手術では、胃酸の産生をコントロールする神経(迷走神経)の切断、あるいは胃そのものの一部切除を行うこともあります。