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2010-03-30

ソース(記事原文):サイエンスデイリー

白血病再発を防止、細胞経路がターゲット

サイエンス・デイリー(Science Daily)2010年3月30日 --- 急性骨髄性白血病(AML)の寛解期にある、子供の約40%と大人の70%以下が疾患を再発させている。近年、医師らは、この原因が白血病幹細胞にあると考えるようになっている。この幹細胞は、白血病に特徴的な未熟血球を作り出し、そして典型的ながん治療に耐性を示すがん細胞を絶え間なく複製する。ボストン小児病院(Children's Hospital Boston)の研究者らは、これらの細胞を全滅させ、再発を防ぐことができる方法を一つ発見した。

同研究は、サイエンス誌(Science)のオンライン版3月26日号で発表された。白血病幹細胞は、Wnt/β-カテニン経路として知られる特定の細胞経路なしでは成長できないため、この経路をターゲットとすることで、AMLの進行や発症を防ぐ可能性があるという。

同研究の首席著者であり、小児血液腫瘍学こども課の医師でもあるスコット・アームストロング博士(Scott Armstrong, PhD)は、「本研究の最大の可能性は、β-カテニンを抑制する薬剤による白血病再発の抑制にあり」と述べている。

同研究の主執筆者であり、アームストロング氏のチームのメンバーでもある、小児血液腫瘍学こども課の王英姿(インジ・ワン)博士(Yingzi Wang, PhD)は、初期血球の二つの異なるタイプに取り組むことで、白血病幹細胞において重要な役割を果たすβ-カテニンに焦点をしぼった。これら二つの初期血球とは、すべての異なるタイプの血球を作り出す血液幹細胞と、特定の白血球を作り出すだけの、より成熟し分化した細胞である、顆粒球/マクロファージ限定の前駆細胞のことである。研究者らは、AMLを誘発するものとして以前に発見された二つの遺伝子Hoxa9とMeis1を活性化し、これらの細胞をマウスに注入することで、これを行った(β-カテニンに焦点をしぼった)。

この血液幹細胞を注入されたマウスでは、これら二つの遺伝子の活性化によってAMLが誘発された。しかし前駆細胞を注入されたマウスでは、誘発されなかった。遺伝子解析によって、この前駆細胞は活性のβ-カテニン経路が欠落していることが分かった。この経路はヒトが生まれた後の血液幹細胞においてはまだ活性状態で、胎児の発達中のみ重要な役割を果たすが、より分化のすすんだ前駆細胞においては完全に不活性となる。研究チームは、このことによって、白血病の幹細胞が発現し成長し白血病を誘発するには、β-カテニンが必要なのだと考えるようになった。

研究者らはこの考えを検証するために、Hoxa9とMeis1を活性化した後、これら前駆細胞の中に活性型のβ-カテニンを取り入れた。いったんマウスに注入されると、これら前駆細胞は後になって、白血病を誘発した。

研究者らはさらに、β-カテニン経路をブロックするインドメタシンという薬剤で白血病の幹細胞を注入したマウスを取り扱うことで、β-カテニンの役割を裏付けた。実験によって、インドメメタシンを注入されたマウスにおいては、白血病幹細胞の数が減少することが判明した。インドメタシンはまた、完全に白血病を発症させたマウスにおいても、幹細胞の数を減少させた。

AML患者である幼い子どもの多くが、研究者らが混合血統白血病融合たんぱく質と呼ぶものの結果、白血病を発症させている。混合血統白血病融合たんぱく質は、Hoxa9とMeis1を活性化させる。これらのたんぱく質の一つもまたβ-カテニン経路に影響を与えたかどうかを検証するために、研究チームは混合血統白血病融合たんぱく質MLL-AF9で前駆細胞を処置した。MLL-AF9は、β-カテニン経路と同様にHoxa9とMeis1を活性化した。そして、前駆細胞を注入されたマウスは白血病を発症させた。しかし、インビボ(生体)のβ-カテニン経路を非活性化させる化学物質で処置したマウスの場合、白血病幹細胞は成長することがなかった。

同研究が示唆していることは、白血病幹細胞は生き残るために、β-カテニン経路を必要としており、この経路をブロックする処置によって、白血病幹細胞を全滅させ、AML患者が白血病を再発させるのを防ぐという可能性である。

アームストロング氏によると、これらの発見が臨床に適用される前に、より良いβ-カテニン抑制剤が必要だという。というのも、白血病幹細胞を全滅させるための高用量のインドメタシンを、中毒(有毒)作用なしに、白血病患者に与えることができるか否か分からないからである。研究者らの次の課題は、なぜ白血病幹細胞は生存のためにβ-カテニンを必要とするのかを見きわめることである。

アームストロング氏は、「このβ-カテニン経路によりそった研究であれば何であれ、治療機会の可能性となる」と述べている。

同研究は、米国立衛生研究所(National Institutes of Health)、米がん協会(American Cancer Society)、ハーバード幹細胞研究所(Harvard Stem Cell Institute)の支援を受けた。アームストロング氏の研究は一部、白血病リンパ腫協会(Leukemia and Lymphoma Society)の助成を受けた。


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