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2011-10-23

ソース(記事原文):ザ・スター・オンライン

眠気と抑うつ状態

ザ・スター・オンライン(2011年10月23日)― うつ病に対する合理的治療法の選択肢として概日リズムのリセットがある。

概日リズム障害は、寝起きのリズムの変化によって生じるもので、うつ病の主因の1つであることが確認されている。マレーシアではうつ病は4番目に多い機能障害性疾患であり、人口の最大10%が罹患している。

うつ病の誤診または十分に効果の得られない治療(もしくはその両方)のほか、約24時間サイクルによる身体的・精神的・行動的パターンをコントロールする概日リズムの変化に比較的わずかな注意しか払わないことが、うつ病治療の妨げとなっている。

「うつ病患者のうち最大82%が、社会的不名誉、誤診、処置不十分が原因で、治療を放置したままとなっている。うつ病患者は精神科医よりも、かかりつけ医(一次医療医)を受診することが多く、患者の過半数は診断されるに至っていない。残りの18%は抗うつ薬を投与されているが、適切な治療を受けている人は10%しかいない」とアセアン精神医学・精神健康連合(Asean Federation for Psychiatry and Mental Health:AFPMH)元代表のモハマド・フセイン(Mohamad Hussain Habil)博士が、セルビエ・マレーシア社(Servier Malaysia)の企画による精神健康月間(Mental Health Month)での「概日リズムとうつ病」関するメディア・ワークショップにおいて語った。

「したがって、うつ病の認識および管理の改善には、概日リズム障害とうつ病の間の相関について理解を深めることが極めて重要となる」

同氏は「うつ病は一般医を受診する主な理由の1つである。より優れた診断を行うことと、日周リズムの破綻にもっと着目することが、気分障害を治療するうえで有効な基盤となる」と補足した。

概日リズム障害とは、脳波の活動、ホルモン産生、細胞再生、その他の生物活性などの24時間リズムに関連のある生物学的過程を調節する人間の「体内時計」が破綻した状態のことである。概日リズムは、寝起きのリズムや、ホルモン放出、体温、その他の重要な身体機能に変化を及ぼすものである。

夜間と日中の規則的リズムが我々の生活を調節しており、これに関連するものに中核体温・ホルモン値・心拍数・腎臓アウトプット・腸運動性の規則的変化がある。概日リズムの乱れが示唆されるうつ病の特徴には、目覚めが早いこと、朝の気分が沈みがちなこと、睡眠パターンの変化、体温の変化、ホルモン活性の変化などがある。

マレーシアプトラ大学(Universiti Putra Malaysia)医学・健康科学部精神医学分野の精神療法指導医アサール・ザイン(アサール氏Md Zain)博士によれば、日周リズムの破綻は大うつ病患者において認められるもので、こうしたリズムの変化はうつ病の要因と考えられるとともに、うつ病の結果として発生した可能性もあるという。

「ストレスもまたうつ病の主な一因である。ストレスは人生における衝撃的な出来事(死別、夫婦間葛藤、重病、介護者としての役割、職場での重圧、試験の失敗、健康不良、金銭面での失敗)から身体の病気に至るまで広範な出来事によって生じるものである」

「これらの出来事は、概日リズムが一致しなくなる原因であり、うつ病患者における生物的・生理的・行動的な障害につながる。例えば、業績が向上しないことや期待に応えられないことで生じる職場のストレスにより、入眠や睡眠維持が困難になる可能性がある」

「続いて、早朝覚醒の困難、早朝気分変動、行動力・意欲の欠乏、食欲不振、集中力障害が起こる。その後、徐々に引きこもるようになる。長期的には、患者の心理状態だけでなく、健康全般や快適な暮らしにも影響を及ぼす」と同氏は述べた。

概日リズムは、人の睡眠パターンの決定に重要となる。「体内時計」は、眠気を誘発するメラトニンというホルモンの産生をコントロールしている。この誘発因子(メラトニン)は、視神経の真上に位置し、眼から脳へ情報を伝えるもので、入ってくる光に関する情報を受け取る。つまり、一般に光が少なければ、体内のメラトニン値が上昇し、眠気を催す。

睡眠は身体的・精神的機能に回復効果を及ぼすもので、良好な精神的・身体的健康に不可欠な要素である。また、認知機能を最適な状態にするのにも重要である。

精神療法指導医ティン・ジョー・ハング(Ting Joe Hang)博士は、睡眠障害には複数のタイプがあり、具体的には不眠症、睡眠時無呼吸、レストレスレッグス症候群、睡眠発作などがあり、この中には概日リズムの乱れに関連しているものもあるとしている。また「一般人口集団の約10%~35%は、ある種の睡眠障害を経験していると考えられる。残念ながら、睡眠障害の過半数の人は、いかなる時でも医師に相談しようとしない」と続けた。

「概日リズム睡眠障害は、必ずしもうつ病に関連しているとは限らず、不眠症または精神疾患として誤診されることが多々ある。ただし、時差ぼけ(定期的な子午線横断移動)、長期間にわたる交替制勤務、睡眠相後退症候群(寝入り・起床・ピークの遅れ、真夜中の覚醒)により概日リズムが変化すると、うつ病を引き起こす。

「大半のうつ病患者は睡眠障害を抱えているが、睡眠障害の人すべてがうつ病というわけではない。薬物療法、カウンセリング、精神療法(セラピー)などの治療方法を計画するうえで慎重な評価が必要とされる」と同氏は補足した。

社会的不名誉のほか、精神的健康を担う専門家の利用率の低さ、それに関連症状への一般的理解の欠如が治療を妨げているとする一致したコンセンサスが演者らの間では存在する一方、新たな非薬理学的・薬理学的な方法による概日リズムの調整を効果的に使用できる可能性がある。

うつ病は一般的な疾患だが、うつ病に関連する概日リズムの破綻にはあまり注目が集まらず、従来通り神経伝達物質による障害に焦点を当てた治療には新しく素晴らしい方法が存在する、ともアサール氏は語った。

「神経伝達物質による障害をターゲットにした抗うつ薬は従来から使用されているが、現時点では脳内のメラトニン受容体をターゲットにした新たな方法で作用するアゴメラチンの使用が重視されている」と同氏は補足した。

アゴメラチンは就寝時刻に服用することで、概日リズムを再同期化させる働きをする。

大うつ病治療の使用にアゴメラチンが承認され、うつ病治療に対する新たな治療手段となっている。


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