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2013-12-30

ソース(記事原文):国際ビジネスタイムズ

絶対音感が身につく薬?音楽家でなくてもバルプロ酸でドレミの聞き分けが可能に

国際ビジネスタイムズ(2013年12月30日) ― ゾエ・ミンツ(Zoe Mintz)

てんかんや双極性障害の躁状態を治療する薬の副次的効果が、人によっては嬉しいものになるかもしれません。

『フロンティアーズ(Frontiers)』に発表された新しい研究によると、動物でも人でも、FDA承認薬のバルプロ酸で絶対音感を習得できると考えられるそうです。「ヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)」を阻害するバルプロ酸をまずはマウスに投与したところ、絶対音感の能力が認められました。そこで研究者たちが今度は成人男性にこの薬を投与したところ、投与前にはできなかった音高の識別ができるようになったのです。

絶対音感とは、基準の音がなくてもドレミを聞き分けられる能力のことです。この能力は大変珍しく、西洋音楽の12音が聞き分けられる人は一般集団に0.01パーセントしかいません。中にはこの才能を生まれながらに持っている人もいますが、使いこなすには音楽トレーニングが必要です。研究者たちによれば、通常、6歳までに音楽トレーニングを始めないと絶対音感を習得できないそうです。

「6歳前の子どもはどこかの時点で、ちゃんとした音名(ラベル)を学んでから、自分が感じ取った音の高さに音名を結び付ける学習をしなければいけません」。モントリオール・マギル大学(McGill University)の心理学者、ダニエル・レビチン(Daniel Levitin)は『サイコロジー・トゥデイ(Psychology Today)』にそう話します。

大人が絶対音感を習得するには多岐にわたる音楽トレーニングが有用なことを、これまでの研究が示しています。中には絶対音感保持者に遺伝が関与する可能性を示し、家族内での関連性を引き出した研究もありました。一方、言語との関連性を調べた研究もあります。中国語やベトナム語などの声調言語が母語の音楽学校生は、英語ネイティブよりも絶対音感の能力を示す傾向が強かったそうです。

カナダ、米国、英国、フランスの研究者たちによる最新の研究では、絶対音感の習得に初めて薬を使いました。

「今回の研究では、成人は絶対音感を習得するために臨界期を再開できるか検討した」と、彼らは論文の中で説明しています。「バルプロ酸(VPA)は抗てんかん薬や気分安定薬としてよく使われており、HDACを阻害し、エピゲノムを調節して神経可塑性を促進することが分かっている。音楽家ではなくトレーニングも受けていない成人へのVPA投与は、古典的な絶対音感テストでの音高識別を促進するか立証を試みた」。

二重盲検試験で成人男性24人を追跡調査しました。最初の15日間にバルプロ酸、次の15日間にプラセボを服用する人と、逆パターンで服用する人に分けました。被験者たちはトレーニングビデオで音高を学習してから、楽音を聞き分けられるか調べるテストを受けました。最初の15日間が終了した後の平均正答数は、VPA服用群で5.09、プラセボ群で3.50でした。

音楽家を目指す人たちが絶対音感を習得するためのサポートとして、バルプロ酸を使うにはまだ何年もかかるかもしれません。しかし研究者たちによると、この研究は「神経可塑性を薬で取り戻せるという『概念を実証』している」そうです。さらに、「絶対音感タスク(あるいはトレーニングや介入が行われるタスク)に対するVPAの特異性をさらなる研究で明らかにし続けていけば、薬の全身投与を安全に利用して、具体的かつ狙いを定めた方法で神経可塑性を取り戻せるようになる時期についての重要情報が集まっていくだろう」と論じています。


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