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2013-04-08
ソース(記事原文):メディカル・エキスプレス
脆弱X症候群の子どもの行動が抗生物質ミノサイクリンで改善
メディカル・エキスプレス(2013年4月8日)― ミノサイクリンは広域スペクトルを持つテトラサイクリン系抗生物質で、古くからある薬だ。カリフォルニア大学デービス校MIND研究所(UC Davis MIND Institute)の研究者らが、脆弱X症候群の子どもの治療薬としてミノサイクリンを試験で使用したところ、この薬は子どもに有意な改善をもたらすことが分かった。彼らによると、脆弱X症候群の標的治療薬になるミノサイクリンは処方箋ですぐに入手できる薬のため、この所見は重要である。
脆弱X症候群の子どもを、ミノサイクリンとプラセボ(有効成分なし)それぞれで3カ月ずつ治療した。プラセボ治療後と比較すると、ミノサイクリン治療後の子どもは一般行動、不安・気分関連行動に大幅な改善が認められた。この研究の指揮を執ったのは、MIND研究所・脆弱X治療研究センター(Fragile X Treatment and Research Center)のメアリー・ヤツェナ・リー(Mary Jacena Leigh)臨床准教授(発達行動小児科学)だ。
「今回の研究は、脆弱X症候群の標的治療薬としてミノサイクリンは有効であるというエビデンスを示しています。ミノサイクリンは古くからある薬で、現在でも抗菌薬として処方されます」リー准教授はそう話した。「長期の有益性と副作用を調べるために、さらに試験を複数実施する必要があります。ミノサイクリン以外にも、この疾患の患者のために現在開発中の治療教育や薬物療法がありますが、試験ではそれらと併用して調べることになるでしょう。」
この研究は、発達行動小児科学会(Society for Developmental and Behavioral Pediatrics)のオフィシャルジャーナル、『ジャーナル・オブ・ディベロップメンタル・アンド・ビヘイビオラル・ピディアトリクス(Journal of Developmental and Behavioral Pediatrics)』オンライン版に、4月8日発表された。本ジャーナルの出版元は、ウォルターズ・クルワー・ヘルス社(Wolters Kluwer Health)傘下のリッピンコット・ウィリアムズ・アンド・ウィルキンス社(Lippincott Williams & Wilkins)である。
脆弱X症候群は遺伝性であり、知的障害(以前の呼称は「精神遅滞」)の原因として最も一般的なものである。この疾患は単一遺伝子によって生じ、自閉症スペクトラム障害の主な原因としても知られている。米国疾病管理予防センター(United States Centers for Disease Control and Prevention : CDC)の推計によると、およそ4,000人の男女に1人がこの障害を持つそうだ。脆弱X症候群の原因は、X染色体上のFMR1という単一遺伝子の変異である。
今回の試験では、脆弱X症候群の子ども66名を、まず3カ月のミノサイクリンまたはプラセボ服用という2つの治療群のいずれかに無作為に割り付けた。その後、ミノサイクリン治療を受けた子どもはプラセボに、プラセボ治療を受けた子どもはミノサイクリンに切り替えた。試験が完了するまで、親も医師も、子どもがどちらの治療を受けているのか知らされなかった。
試験を完遂したのは55名だった。プラセボ治療中と比べると、ミノサイクリン治療中の子どもには特定の領域でわずかながらも有意な改善がみられた。特に、親と医師が子どもの状態について全般的印象を評価した臨床全般印象尺度(Clinical Global Impression Scale)で、スコアが改善した。
また親の評価として、ミノサイクリン治療中の子どもには、不安・気分関連行動にも大幅な改善がみられた。行動障害や言語機能などのその他評価項目については、ミノサイクリン治療中でも有意に改善しなかった。
副作用は両治療群でおおむね大差なく、重篤な有害事象はなかった。テトラサイクリン系抗生物質の既知の副作用として、ミノサイクリンは歯の変色を引き起こすが、この副作用はどちらの治療群でもみられた。
「一部の子どもはミノサイクリンに非常によく反応しましたが、そうでない子もいたため、現在、効果が得られる患者かどうかを判定できるバイオマーカーを調べています」。研究論文の上席著者で、MIND研究所のメディカルディレクターでもあるランディ・ハーゲルマン(Randi Hagerman)はそう話した。
ミノサイクリンは比較的古い抗生物質であり、重症にきびの治療によく使われている。動物モデルを使った研究、およびヒトでの初期臨床試験では、この薬が脆弱X症候群の治療に有効な可能性が示唆されている。そのほか多発性硬化症などの疾患に対しても、「神経保護」作用を持つ可能性があるとして研究が行われている。
ミノサイクリン以外に、脆弱X症候群の治療薬として現在研究中のものの中には、ガナキソロン、アルバクロフェンといったmGluR5アゴニストやGABAアゴニストと呼ばれるクラスの薬剤があり、これらもMIND研究所で研究が行われている。しかし現在のところ、処方箋で入手できる薬として脆弱X症候群の標的治療薬となれるのは、ミノサイクリンだけだ。この薬の使用経験は長く、そのため副作用や安全性は特徴がよく知られている。
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