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2012-09-04
ソース（記事原文）：サイエンティスト・ライブ
創薬:発生頻度の高い血液のがんに対する新たな治療薬となる可能性
サイエンティスト・ライブ（2012年9月4日）― スウェーデンのカロリンスカ研究所(Karolinska Institutet)が実施した研究で、腎臓と肝臓の進行がんに用いられる薬剤ソラフェニブが、多発性骨髄腫に対しても有効となりうることが明らかにされた。多発性骨髄腫は発生頻度の高い血液のがんの一つであり、通常治癒しない。
主任研究者で実験腫瘍学講師のテオチャリス・パナレタキス(Theocharis Panaretakis)氏によれば、最近開発されたボルテゾミブのような薬剤は、重篤で複雑な疾患を有する人の生存率を向上させているという。とはいえ、疾患進行や治療効果および投与薬への耐性発現(ほぼ全患者の再発につながる)における不均一性がみられることから、優れた新規治療法の発見が強いられた。
骨髄腫は成人にしか認められないもので、40歳未満では稀であり、ほとんどの患者は診断時60歳を過ぎている。この疾患は体内で何年間も休眠状態のままということもあるが、命にかかわったり、治療が必要となったりするのは、症状が出始めた場合に限られる。骨髄腫細胞は主として骨髄内に位置しているが、そこで血液細胞が産生されるため、骨髄腫細胞の存在は規則的な血液産生を著しく乱すことになる。悪性がん細胞(腫瘍)は骨髄外にも蓄積するもので、そのため多発性という用語を伴う。
多発性骨髄腫による主な影響は骨粗鬆症であり、結果として椎骨が圧迫されるので激しい背痛を生じるほか、骨折もみられる。その他の症状には、貧血、疲労、腎不全があり、より感染症を発症しやすくなることも多い。
本研究はがん専門誌(Cancer Research)に掲載されたもので、ヒトとマウスから採取された細胞検体(細胞株)を用いて実施された。カロリンスカ大学病院(Karolinska University Hospital)で診察された骨髄腫患者は、ほぼ全員治療歴がなかった。
ソラフェニブが、特定種類のタンパク質レベルの活性を阻止することによって、研究室環境下でヒト骨髄腫細胞株の細胞死を誘発する仕組みについて同研究者らが明らかにした。この作用は骨髄腫細胞がボルテゾミブ耐性を発現した場合にも得られた。また、生きたマウスでもソラフェニブを検討したところ、同剤が病態を阻止または遅延させることが明らかとなった。全体として、今回の結果は、多発性骨髄腫の治療においてソラフェニブを別の薬剤と併用して使用することを支持するものである、と同研究者らは主張している。
ウプサラ大学(Uppsala University)とベルギーからの研究グループも本研究に携わった。本プロジェクトは、スウェーデンがん学会(Swedish Cancer Society)、スウェーデン研究委員会(Swedish Research Council)、ストックホルムがん学会(Cancer Society in Stockholm)、ウイバーグ財団(ke Wiberg Foundation)によって研究助成された。
論文：「ソラフェニブは5T33MMマウスモデルにおいて、in vitro(試験管内)、ex vivo(生体外)、in vivo(生体内)で多発性骨髄腫に対し有力な抗腫瘍活性を持つ」、ペドラム(Pedram Kharaziha)、ヘンドリック(Hendrik De Raeve)、シャーロット(Charlotte Fristedt)、チャオ(Qiao Li)、 アストリッド(Astrid Gruber)、パー(Per Johnsson)、ジョージア(Georgia Kokaraki)、マリア(Maria Panzar)、エドワード(Edward Laane)、アンダーズ(Anders sterborg)、ボリス(Boris Zhivotovsky)、エレナ(Helena Jernberg-Wiklund)、ダン(Dan Grandr)、フレドク(Fredrik Celsing)、マグナス(Magnus Bjrkholm)、カーリン(Karin Vanderkerken)、シオハリス(Theocharis Panaretakis)著、がん専門誌(Cancer Research)2012年9月4日号オンライン先行版に掲載。
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