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2011-01-02

ソース(記事原文):サイエンス・デイリー

ウォーキングはアルツハイマー病の進行を遅らせると研究が示している

サイエンスデイリー(ScienceDaily:オンライン科学誌)(2011年1月2日)─北米放射線学会(Radiological Society of North America: RSNA)の年次総会で11月29日に発表された研究によると、ウォーキングは軽度認識障害(MCI)やアルツハイマー病の患者だけでなく、成人健常者の認識低下を遅らせる可能性があるそうだ。

「週に5マイル(約8キロメートル)歩くとアルツハイマー病やMCIの患者さんの脳の構造を、特に脳の主要な記憶中枢と学習中枢の領域を10年にわたって守れることがわかりました」とサイラス・ラジ博士(Cyrus Raji)は言う。同博士は米国ペンシルバニア州(Pennsylvania)のピッツバーグ大学放射線科(Department of Radiology at University of Pittsburgh)に所属している。「患者さんたちの記憶障害の進行が5年にわたってゆるやかになることもわかりました」

アルツハイマー病は不可逆性で進行性の脳疾患で、記憶力と認知能力をゆっくりと破壊する。米国国立加齢研究所(National Institute on Aging)によると240万人から510万人の米国人がアルツハイマー病に罹患している。現在の人口趨勢を基にすると、患者数は次の10年間に大幅に増加すると予想される。

MCIの患者は、高齢者によくある物忘れを上回る認知的問題や記憶障害を示すが、まだアルツハイマー病で見られる症状ほどは重度でない。患者の約半数がアルツハイマー病に移行する。

「アルツハイマー病の治療法はまだ現実のものになっていないので、すでに認知障害が起きている患者さんの病気の進行や症状を穏やかにする方法を見つけたいと思っています。」博士は語る。

現在進行中の20年にわたる試験で、博士と同僚らは身体的活動と脳の構造の関係を解析した。299名の成人健常者(平均年齢78歳)と認知障害のある成人127名(平均年齢81歳)からなる計426名が対象となった。認知障害のある被験者のうち83名がMCIを、44名がアルツハイマー型認知症を発症していた。

被験者は心血管健康状態調査(Cardiovascular Health Study)の参加者の中から選ばれた。研究者らは各々の被験者が1週間に歩いた距離を計測し、10年後に被験者全員の三次元MRI検査を行って脳容積の変化を特定した。

「脳容積は脳のバイタルサインです。」と博士は言う。「脳が小さくなるということは脳細胞が死んでいるということです。しかし容積が比較的大きいままであれば脳の健康は維持されています」

さらにミニ・メンタル・ステート検査(認知症の簡易判定検査:MMSE)を用い、認識低下を5年間追跡した。身体的活動量はMRIやMMSEの結果と相関していた。解析は、年齢、性、体脂肪組成、頭部サイズ、教育の程度、その他の因子で補正した。

この発見が例外なく示しているのは、大きな身体的活動量は大きな脳容積と関係するということだ。認知障害のある患者が脳容積を維持し認識低下速度をゆるやかにするには、週に少なくとも街を58ブロック、または約5マイル(約8キロメートル)歩く必要があった。成人健常者が脳容積を維持し認識低下の危険性を有意に減らすには、週に少なくとも72ブロック、または6マイル(約9.7キロメートル)歩く必要がある。

MMSEスコアについては、認知障害があって、身体的活動量が十分でなかった患者では5年間に平均5ポイント低下したが、身体的活動要件を満たした患者ではわずか1ポイントしか減少しなかった。

「アルツハイマー病は破壊的な疾患です。残念ながらウォーキングは治療法ではありません」博士はこう述べた。「しかしウォーキングはこの疾患に対する脳の耐性を改善して、記憶障害を長期にわたって軽減できるのです」

この論文の共同執筆者は、カーク・エリクスン博士(Kirk Erickson)、オスカー・ロペス医師(Oscar Lopez)、ジェームズ・ベッカー博士(James Becker)、カテリーナ・ロサノ医師(Caterina Rosano)、アン・ニューマン医師/公衆衛生修士(Anne Newman)、H.マイケル・ガッチ博士(H. Michael Gach)、ポール・トンプソン博士(Paul Thompson)、エイプリル・ホー理学士(April Ho)、そしてルイス・カラー博士(Lewis Kuller)である。