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2011-06-08

ソース(記事原文):サイエンスデイリー

ナプロキセンは結腸癌モデルマウスの腫瘍を減少させることを研究者らが報告した

サイエンスデイリー(2011年4月8日)―多数の試験から、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)は結腸癌リスクを減らすことが明らかにされている。NSAIDのナプロキセンやその誘導体であるNOナプロキセンについて検討する動物試験は、主に化学的に誘発された腫瘍形成に焦点を合わせてきたが、このたびフォックス・チェイスがんセンター(Fox Chase Cancer Center)の研究者らは、結腸癌を自然発症する変異マウスの系統でナプロキセンやNOナプロキセンが腫瘍形成を抑えることを明らかにした。試験結果から、ナプロキセンは腫瘍形成の開始も阻止すると考えられる。

フォックス・チェイスのがん予防管理プログラムの共同指導者であるマージー・クラッパー博士(Margie Clapper, PhD, Co-Leader of the Cancer Prevention and Control Program at Fox Chase)は、第102回米国癌学会年次総会(AACR 102nd Annual Meeting 2011)で行われた4月6日の最新アブストラクトセッションの中でこの試験結果を発表している。

ナプロキセンを与えた変異マウスでは微小病変に大きな効果がみられ、対照動物と比較して約90%の減少が認められました。」と同氏は述べた。「この結果から分かることは、腫瘍が大きくなるよりもずっと前の初期であれば、この薬は極めて適切な治療薬となる可能性があるということです。初期の微小病変に大きな影響を与えることで、私達は結腸癌による死亡率を低下させることができるかもしれません。」

これまでの科学者らによって、ナプロキセンとNOナプロキセンはいずれも培養中の結腸癌細胞を殺すことが明らかにされており、NOナプロキセンのほうがナプロキセンよりも強力であることが分かっていた。今回の試験では、チームは結腸癌を遺伝的に自然発症しやすくしたマウスに対し、ナプロキセンを補充していない餌、高用量または低用量ナプロキセンを補充した餌、高用量または低用量NOナプロキセンを補充した餌のいずれかを与えた。45日後に対照動物群と比較したところ、低用量ナプロキセンを与えたマウスのほうが小さい腫瘍は70.3%少なく、また低用量NOナプロキセンを与えたマウスのほうが腫瘍は64.0%少ないことが判明した。さらに高用量ナプロキセンを与えたマウスの場合、微小腺腫として知られる極めて小さい腫瘍に89.3%の減少が認められた。

クラッパー氏と、筆頭著者でありフォックス・チェイスで研究准教授を務めるウェン=チ・チャン博士(first author Wen-Chi Chang, PhD, Assistant Research Professor at Fox Chase)は、培養細胞で明らかにされている情報を基にNOナプロキセンのほうが強力な抗癌剤であると予想していたが、今回の試験はこれが変異マウスには当てはまらないことを示している。

ナプロキセンのほうが優れているという結果は、米国食品医薬品局(U.S. Food and Drug Administration。略称:FDA)による最近の決定とよく合致しているとクラッパー氏は述べている。NOナプロキセンは、NSAIDsの常用に伴う胃腸障害の軽減を目的に科学者らが開発した。しかしFDAは、NOナプロキセンには従来の薬よりも毒性が低いという十分な証拠はみられないとして承認しなかった。「私達の試験結果は、すでに市販されているナプロキセンの使用を大いに支持するものであり、そしてFDAは関節炎治療及びがん予防用として同剤を承認しました」

また同氏は、この新たな試験結果の側面として重要なのは、ごく初期段階にある結腸癌の形成を阻害するナプロキセンの能力であるとも述べている。「ナプロキセンが腫瘍形成を妨げる正確なメカニズムを特定できれば、将来的には化学者らと協力し、その作用経路に作用しつつ、NSAIDsが持つ広域スペクトルの効果(そして副作用)のない化合物を設計することが可能です。」

この試験の共同著者は、フォックス・チェイスのクリスティーナM.フェラーラ氏(Christina M. Ferrara)、ハリーS.クーパー氏(Harry S. Cooper)、ステイシーL.モシエル氏(Stacy L. Mosier)、エスター・カウンガ氏(Esther Kaunga)、アラバマ大学バーミンガム校(University of Alabama, Birmingham)のクリントンJ.グラブス氏(Clinton J. Grubbs)、米国国立癌研究所(メリーランド州ベセスダ)(National Cancer Institute in Bethesda, Maryland)のロナルドA.ルベット氏(Ronald A. Lubet)である。


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