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2014-08-18

ソース(記事原文):メッドスケープ

フェノフィブラートは糖尿病の男性同様、女性にも有効

メッドスケープ(2014年8月18日) ― リーサ・ナインゴラン(Lisa Nainggolan)著

FIELD試験(糖尿病におけるフェノフィブラート治療によるイベント減少を検討する試験)の新たな解析で、脂質低下療法の効果は男性と同様に女性においても認められることが明らかにされた。研究者らによれば、先に行われた大規模試験ACCORD Lipid(脂質治療が2型糖尿病患者の心血管疾患のリスクを抑制するかを検討した試験)により、フェノフィブラートが女性に対して効果がないだけでなく、むしろ有害となり得ることが示唆されていたことから、今回の結果は重要なものとなる。

新たなFIELD解析の主著者で、オーストラリアのロイヤル・ブリズベン病院(Royal Brisbane Hospital)に勤めるマイケル・デムデン(Michael C.d'Emden)氏は「本試験結果の重要点は、女性における効果は、少なくとも男性と同等であるということである」とメッドスケープ・メディカルニュース(Medscape Medical News)に語った。

同氏は「フェノフィブラートは女性に効果的かつ安全であり、特に脂質代謝異常(トリグリセリド高値でHDLコレステロール低値)の女性に効果があるという頼もしいデータを本結果は提示している。これはACCORD Lipid試験の結果とは対照的なものとなったが、ACCORD Lipid試験では対象女性者の人数が少なく、その多くは心血管疾患リスクの低い傾向がみられた。ACCORD試験では、全体的に女性での効果が低かった」と補足した。

デムデン氏らは、今回の新たな結果を欧州糖尿病学会誌「Diabetologia」で報告している。

糖尿病患者に対するフェノフィブラート使用の一般的基準がどう定められているのか尋ねたところ、同氏は「これまでのデータでは、スタチン療法を2型糖尿病患者の一次療法とすべきであることが明示されている」としている。

「本試験及びACCORD Lipid試験の結果は、フェノフィブラートが脂質を減少させ、さらには心血管イベント(心筋梗塞・脳梗塞・脳出血)を減らすことを示すものであり、特にスタチン療法を行っても異脂肪血症のまま変わらない患者に当てはまる」と同氏は補足した。

ACCORD Lipidワーキンググループの主任研究者で、ニューヨークのコロンビア大医科大学(Columbia University Medical Center)に所属するヘンリー・ギンスバーグ(Henry Ginsberg)氏に、新たな試験結果へのコメントを求めたところ、「今回のデータから、フェノフィブラートへの反応は男女において同様であるように思われる」とメッドスケープ・メディカルニュース誌に語った。

同氏は、糖尿病患者で実施したACCORD Lipid試験の男女別による解析を3年前にFDAに提出したが、未公表である、と補足した。

「ACCORD試験では、心血管イベント(心筋梗塞・脳梗塞・脳出血)の既往がある女性は、フェノフィブラート投与により、プラセボよりも全体的に結果が悪化するように思われることが示され、大変意外であった。ただし、この試験は少人数のグループを対象としている。一方、もし被験者が異脂肪血症を併発していたとしたら、こうしたリスクが消失し、フェノフィブラート投与で同一又はより良い結果を得られ、[FIELD試験の研究者ら]が報告しているのと同様の結果になっていたかもしれない。ただし、ACCORD試験の解析対象はごく少人数の女性部分集団となっている。かなり多くの変数を検討してみたが、悪化する原因は見つかっていない」と続けた。

「FIELD試験Iでは男女差が認められないという点には同意見である。個人的な考えでは、スタチン(トリグリセリド200 mg/dL[2.3mmoL]超)を投与しても異脂肪血症(HDLコレステロール低値)に変化のない糖尿病にはフェノフィブラートが効く可能性が高い。なお、これはサブグループ解析によるものである」

ギンスバーグ氏は、この問題を厳密に検討するための新規VA試験を間もなく開始する予定であるが、結果の発表には数年かかる。

FIELD試験とACCORD試験:女性におけるフェノフィブラート使用についての疑問提起

FIELD試験は、脂質低下療法を行うには明らかな適応症のない(スタチン不使用者)2型糖尿病患者約1万人(50歳~75歳)を対象とした二重盲検プラセボ対照試験であり、フェノフィブラート1日200 mg群又はプラセボ群のいずれかに被験者を割り付け、5年間投与した。試験担当医の自己判断により、スタチンなどの付加的な心血管治療薬を試験期間中に投与してもよいこととした。

2005年に発表された主な結果はネガティブ(有効性を示せず)であり、主要評価項目(冠動脈心疾患による死亡又は非致死性の心筋梗塞)がプラセボと比較して、フェノフィブラートで有意に減少することは示せなかった。なお、主要評価項目の一つである非致死性の心筋梗塞はフェノフィブラートで有意に減少した一方、冠動脈心疾患による死亡はフェノフィブラートで有意でないものの微増した。

また、フェノフィブラート群では、アルブミン尿や網膜症などの複数の微小血管合併症において有意な減少がみられた。その上、昨年12月、FIELD試験とACCORD Eye試験に基づき、2型糖尿病患者における既存の糖尿病網膜症の進行を遅延させることにおいて、フェノフィブラートが世界初の経口薬としてオーストラリアで認可された。

しかし、糖尿病の女性に対する治療薬としてのフェノフィブラートの役割についての疑問は残されたままである。ACCORD Lipid試験において、基礎療法としてのシンバスタチンにフェノフィブラートを追加投与する評価が行われた。フェノフィブラート投与群の女性851人における心血管疾患イベント発生率は9.1%で、プラセボ群の女性843人の発生率6.6%の方が有意でないものの低発生率であった。治療と性別との間に有意な交互作用が認められ、男性の優位性が示された(P = 0.01)。

結果的に2011年11月、米国食品医薬品局(FDA)が安全性に警告を発した。

フェノフィブラートが女性にも有効であることが新たな解析で示される

今回、ムデン氏らは、事前に規定された男女別FIELD解析を報告した。FIELD試験では、2型糖尿病の女性3,657人と男性6,138人を対象に、フェノフィブラート群又はプラセボ群に割り付けた。

治療開始前の総コレステロール値やLDL・HDL・non-HDLコレステロール、それにアポリポタンパク質において男女差がみられた。これらの数値とトリグリセリド量は、男女ともにフェノフィブラート投与で改善した(全てについてP < 0.001)。

新たな解析から、閉経状態やスタチン投与にかかわらず、フェノフィブラート投与により、総コレステロールとLDL及びnon-HDLコレステロール、それにアポリポタンパク質Bが女性で一層減少した(全てについてP < 0.001)ことが示されたことは、何より重要と言える。

共変動調整を行ったところ、フェノフィブラートは心血管系の総合評価項目(心血管系の死亡、致死性・非致死性の脳卒中、頚動脈・冠動脈の再建)を、女性で30%(P = 0.008)、男性で13%それぞれ減少させ(P = 0.07)、治療-性別の交互作用は認められなかった(P > 0.1)。

トリグリセリド高値かつHDLコレステロール低値で、糖尿病合併症のリスクが特に高い患者では、フェノフィブラート投与により、心血管系の総合評価項目が女性で30%、男性で24%減少し、治療-性別の交互作用は認められなかった(P > 0.1)。

とはいえ、ギンスバーグ氏は「(FIELD試験[2005年]で)選定した主要評価項目がネガティブであったという事実は変わらない。それ以外の後付解析や事前に規定したサブグループ解析もそうである」としている。

フェノフィブラートは微小血管の合併症も減少させる。

また、デムデン氏は、確定診断された網膜症を伴う2型糖尿病患者への適応で本剤の承認を最近獲得したオーストラリアに言及し、フェノフィブラートを投与した糖尿病患者における微小血管イベントの減少に関する有力な結果について指摘した。

「フェノフィブラートは網膜症に有意な効果を持つことが示された初めての経口薬である。ただし、これはフェノフィブラートでしか証明されておらず、その他のフィブラート系薬剤は含まれない。また、FIELD試験では、末梢血管疾患/末梢神経障害などの微小血管障害や糖尿病腎症への効果についても証明されている」と同氏は補足した。

「この効果の一貫性により、微小血管障害の発症リスク低下におけるフェノフィブラートの関与が示唆される。初期の微小血管障害(主に網膜症)の所見を認める患者において、本剤の使用が検討されるべきである」と続けた。

しかし、ギンスバーグ氏によると、微小血管障害とフェノフィブラートに関する結果は、実際のところ米国内では「受け入れ」られておらず、フィブラートを用いるか否かの決定に加味されていない。

「米国では、残念ながら、眼研究(ACCORD Eye試験やFIELD試験結果)は、網膜症の治療に対し影響を及ぼしておらず、実際、眼科医は試験結果に反応していないことを踏まえると、はるかに大規模な試験が必要なのではないかと考えられる」と同氏は述べている。

また、やや直観に反し、ACCORD Eye試験におけるフェノフィブラートの網膜症への有益性は、異脂肪血症を伴わない患者で認められることから、(微小血管と大血管の各有益性の)メカニズムが非常に異なることが示唆される、と同氏は補足している。

同氏によれば、内分泌病専門医が、糖尿病の微小血管系合併症の減少に関するFIELD試験の結果に「関心を向けた」のかどうかも定かでないという。

スタチンを投与しても異脂肪血症を伴う糖尿病患者におけるフェノフィブラート

デムデン氏によれば、結論として、今回の新たなFIELD試験の結果から、スタチン療法を行っても異脂肪血症に変化のない糖尿病患者において、フェノフィブラートを使用することが支持されるとしている。

同氏は「FIELD試験は、脂質低下療法の推奨には男女差のないことを裏付けている」としている。しかし、本試験では、さまざまな人種の被験者数が少なすぎ、人種に基づく適応についての指針を示すことはできないと続けた。

「スタチンが何よりも優先であるという点において皆、意見が一致している」とギンスバーグ氏は締めくくった。

デムデン氏はソルベー社(現、アボット製薬株式会社)から報道担当としての報酬を得ている。共著者の金銭上の開示は論文に記載されている。

欧州糖尿病学会誌「Diabetologia」2014年8月18日号オンライン版掲載


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