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2013-06-15
ソース(記事原文):ユアヘルス・アジアワン
前立腺肥大の男性10人中8人が勃起不全も併発
ユアヘルス・アジアワン(2013年6月15日)― シンガポール新聞社ザ・ストレーツ・タイムズ発行「Mind Your Body」
ジョーン・チュウ(Joan Chew)著
シンガポール - 勃起機能を改善させる薬剤が、前立腺肥大に関連する下部尿路症状の治療にも処方可能となった。
具体的な適応症状には、頻尿や尿意切迫、尿勢減弱、残尿感、排尿後尿滴下などが挙げられる。
タダラフィル(イーライリリー社製造の商品名シアリス)に関しては、前立腺肥大患者にとって必要とされる服用量は5mg錠1日1回のみである。
これまで、患者は複数の薬剤を飲まなければならず、性機能に影響する副作用リスクがあった。
こうした理由から患者は治療に専念したがらなかった、とKTPH病院(Khoo Teck Puat Hospital)泌尿器科部門責任者でコンサルタントのコリン・テオ(Colin Teo)氏は語った。
2003年以降に勃起不全治療薬として用いられてきたタダラフィルの方が、患者の興味を引く薬剤であると同氏は考えている。
タダラフィルは、このもう一つの目的を適応に今年1月に保健科学庁から認可を得た。
現在、本剤は勃起不全に加え、前立腺肥大の徴候・症状も治療する薬剤として、4ヵ所の公立病院と約60ヵ所の個人病院で使用されている。
3人の泌尿器科医に問い合わせたところ、両疾患を有する男性50人以上にタダラフィルを処方したことがあると分かった。
高齢男性を悩ませることとは?
加齢に伴い男性が勃起不全と良性前立腺肥大を併発することは一般的なことである。
グレンイーグルズ医療センター(Gleneagles Medical Centre)とマウントエリザベス病院(Mount Elizabeth Novena Hospital)に属する泌尿器科医ルイス・リュー(Lewis Liew)氏によれば、勃起不能もしくは勃起持続不能となることを「勃起不全」と言い、国内では5人に1人の男性にこの症状がみられる。
年を取ると共に生じる問題であり、糖尿病・心臓病などの内科疾患や、特定の薬剤使用などの要因が、陰茎への血流に影響を与えて生じるものである。
国内では60歳以上の男性の約半数が勃起不全である、と同氏は補足した。
同じく、前立腺という男性生殖器系の一部で精液を産生するクルミ大の腺が、高齢者において大きくなることがあり、前立腺肥大(良性)という疾患につながる。
グレンイーグルズ医療センターの泌尿器科医で腎移植外科医のリー・マン・ケイ(Li Man Kay)氏によれば、前立腺肥大の男性の80%は勃起不全も併発している。
薬剤の副作用
前立腺肥大の治療によく用いられてきた薬剤には、α(アルファ)遮断薬と5αレダクターゼ阻害薬の2種類があり、両剤とも性機能に影響を及ぼす。
α遮断薬は前立腺・膀胱頚部の筋肉を弛緩させて下部尿路症状を軽減させる一方、5αレダクターゼ阻害薬は前立腺の増殖を遅らせ、時に縮小させる。
前立腺がより大きい患者には2剤とも投与される場合がある。
シンガポール総合病院(Singapore General Hospital)泌尿器科部門コンサルタントのリー・ファング・ジャン(Lee Fang Jann)氏によれば、α遮断薬投与患者の3~8%は、姿勢の変化や筋力低下をはじめとして、眩暈や急激な血圧低下を生じることがある。
また、10~15%の患者は、精液が陰茎から出ずに、膀胱内部後方に射精される逆行性射精を起こす、と同氏は続けた。
さらに、5αレダクターゼ阻害薬投与患者の5~9%は、性欲減退と勃起不全の副作用を生じるとしている。
タダラフィルにはこうした副作用がない。
下部尿路症状が6ヵ月間以上認められる前立腺肥大疑い例の45歳以上の男性511人を対象としたヨーロッパの試験で、これらの症状軽減においてタダラフィルはα遮断薬と同等の有効性を有することが示された。
この研究は、欧州泌尿器科学会(European Association of Urology)発行の医学誌「European Urology」1月号に掲載されたもので、タダラフィルがプラセボと比較して勃起不全を有意に改善させる一方、α遮断薬タムスロシンには同様の効果がないことを明らかにした。
タダラフィルに最も多くみられる副作用には頭痛があり、次に上咽頭炎(上気道感染)、それから背部痛、眩暈、胃腸障害(胃痛)と続く。
タダラフィルや、シルデナフィル(バイアグラ)およびバルデナフィル(レビトラ)などの勃起不全治療薬が勃起機能を改善させる作用は、前立腺肥大の症状を改善させる薬剤が持つ作用と同じものである。
これらの薬剤は、血管壁内に存在するホスホジエステラーゼ-5(PDE-5)酵素を遮断することにより、陰茎の平滑筋を弛緩し、血流を増やす助けとなる。
このことからPDE-5阻害剤と呼ばれている。
PDE-5酵素は前立腺と膀胱にも存在するので、タダラフィルは両器官の血流増加と下部尿路症状の抑制に役立つ。
タダラフィルは前立腺の大きさには影響を与えないため、タダラフィル服用中の前立腺肥大患者は5αレダクターゼ阻害薬を引き続き必要とする場合がある。
薬剤が効く仕組み
1剤で2つの疾患が治療可能となるのは患者にとって朗報だが、タダラフィルは1ヵ月の薬代に約200ドル(約2万円)もかかり、誰しも負担できるものではない。
一方、α遮断薬は毎月約30ドル(約3千円)、5αレダクターゼ阻害薬は毎月約100ドル(約1万円)かかる、とリ氏は説明している。
同氏によれば、患者にタダラフィルを使用すべきか、古くからの薬剤にすべきかの判断には、患者の性行為の頻度、財力、および性的期待を加味するという。
タダラフィルに適合したとしても、狭心症(胸痛)に対する硝酸剤を服用している男性の場合、タダラフィルを服用することはできない。というのも、この2種類の薬剤が相互作用することで、血圧が低下しすぎ、心発作を起こす可能性が出てくるからである。
シンガポール新聞社ザ・ストレーツ・タイムズ発行の健康関連誌「Mind Your Body」によれば、ある58歳の退職者(匿名希望)は、タダラフィルにより前立腺症状と性生活の両方が改善されたとしている。
以前の排尿頻度は、日中大抵1時間ごと、夜間は4~5回であった。
彼は「常時、膀胱が一杯な感じがするのに、トイレに行くと尿の勢いは弱かった」と話す。
この患者はリュー医師によって昨年末に前立腺肥大と診断され、排尿回数の減少を促すα遮断薬を処方された。
しかし、同医師によって勃起不全の併発が確認され、今年2月にタダラフィルを処方された。
この退職者はタダラフィルを今では自分にとっての「特効薬」と自覚している。
彼が臆しながらも語ってくれたところでは、性行為中に自分の妻もその違いに気づいたという。
また、この薬剤のおかげで、夜間トイレに行くため目を覚ますこともなくなり、快眠を得られるようになったとしている。
彼は「男性として自信が持て、20代や30代の頃の自分に戻ったような気がする」としている。
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