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2016-08-18

ソース(記事原文):Medical News Today

抗精神病薬の服用で出生異常のリスクは上昇しない

【Medical News Today】(2016年8月18日)


130万人の女性を対象としたマサチューセッツ州ボストンのブリガム・アンド・ウィメンズ病院の新調査によると、妊娠中の抗精神病薬の服用は、全体的な出生異常や特に心奇形のリスクを顕著に上昇させないことを示唆している。

妊娠中に服用した薬(ビタミン、ミネラル剤を除く市販薬および処方薬)の平均数は1976年から1978年の間は2.5であったが、2006年から2008年の間では4.2に増えた。

2008年には、約94パーセントの女性が妊娠中に少なくとも1種類の薬剤を摂取している。妊娠初期においては、82.3パーセントが少なくとも1種類、また27.6パーセントが4種類以上の薬剤を服用していたと報告している。

これらの統計は、妊婦に対して薬物療法の情報を伝えるための公衆衛生調査の重要さを浮き彫りにしている。

妊娠中の抗精神病薬(APs)への暴露はますます一般的になっている。APは精神的苦痛や統合失調症、双極性障害などの精神障害の治療に使用し、またうつ病を治療する抗うつ薬と一緒に使用する。

抗精神病薬には2つの異なるグループがある。ひとつは「定型」と呼ばれる1950年代半ばに最初に発売された古いタイプの薬である。ドパミンの動きを遮断し、種類によってはさらに強い効果をあらわす。

「非定型」抗精神病薬は1990年代に承認された新しい薬剤で、同じくドパミンを遮断するが、その規模は狭めである。さらに、セロトニンなどの脳内の化学伝達物質にも働きかける。

新しい非定型薬は古い定型薬と比較すると、受精に影響するリスクが減少している。精神病患者の脱施設化と合わせると、これらの要因は過去10年間における妊娠中のAP服用の倍加に起因していると考えられる。

医者は、胎児の発育に対するAPの安全性についてほとんど理解しておらず、またAPと先天性奇形の潜在的な関係性についての懸念が持ち上がっている。


もっとも服用される抗精神病薬クエチアピン

JAMA精神医学で発表されたこの研究は、妊娠初期のAP暴露と先天性および心臓の奇形のリスクとの関係性を調査したものである。

ブリガム・アンド・ウィメンズ病院およびハーバード大学医学部の薬剤疫学および医薬品部の準疫学者であり、共同著者のクリスタ・F・G・ユイブレスト博士は、メディケードの全国規模のデータベースの中から、最後の生理後3ヵ月未満の妊婦から産後最低1ヵ月の妊婦に至るまで、妊婦134万1715人分のデータを使用した。

AP への暴露は、妊娠初期中(最初の 90 日間)に少なくとも 1 回の調合薬を処方された場合、と定義した。また定型薬および非定型薬のいずれについても評価された。

評価された薬は、それぞれアリピプラゾール、オランザピン、クエチアピンフマル酸塩、リスペリドン、ジプラシドンなどである。なお妊娠前3ヵ月または妊娠初期の間にAPを処方されなかった女性は暴露とはみなさない。

結果によると、130万人以上の女性のうち9千258人(0.69パーセント)が非定型AP、733人(0.05パーセント)は定型APが妊娠初期に処方された。もっとも頻繁に処方された非定型APは順に、クエチアピン、アリピアプラゾール、リスペリドン、オランザピンそしてジプラシドンであった。


全体的な奇形リスクの上昇にはリスペリドンが関与

ユイブレスト博士とその同僚は、非定型APに暴露した4.45パーセント、また定型APに暴露した3.82パーセントの出生が先天性奇形と関連していたことを発見した。一方、APを処方されなかった女性の出生では3.27パーセントであった。なお心奇形についての結果は、ほぼ同様であった。

著者たちは精神的と身体的の両方および、その関連行動を考慮した後、リスペリドンの可能性を除き、定型または非定型 AP に対する出生異常リスクの明らかな上昇を観察しなかった。

リスペリドンでみられた出生異常に対する絶対リスクおよび相対リスクにおける小さな上昇は、純粋な生物学的機序ではこの結果を容易に説明できず、また発見する機会の可能性を除外できないことから慎重に解釈されるべきである、と著者たちは警告している。

「私たちの結果は、リスペリドンの可能性を除いては、妊娠の早期におけるAP(抗精神病薬)の使用は先天性奇形や心奇形のリスクを有意に上昇させないことを示唆しています」

「リスペリドンに対する結果は、ほかの研究で確認を必要とする最初の安全信号として調査されるべきです」とこの研究は結論を出している。

イリノイ州シカゴにあるノースウェスタン大学フェインバーグ医学院のキャサリン・L・ワイズナー博士および共同著者たちは関連記事の中で以下のように書いている。「著者たちはAP暴露と出生異常の関係性は交絡調整後に弱まったことを発見したが、それは、これらの変化がAP暴露よりも先天性奇形に対する効果の多くの割合を占めていることをほのめかしている」。

「APに暴露している多くの女性が私たちの知識を塗り替えたこの画期的な出来事は、AP(リスペリドン以外)への暴露が出生異常のリスクを顕著に上昇させないことを実証したものであり、このことは女性と薬の処方者にとって主要な関心ごとのひとつになっている」と彼らは締めくくった。


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