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2010-10-18

ソース(記事原文):サイエンスデイリー

酸逆流および機能性消化不良が睡眠障害に重大な影響を及ぼす

サイエンスデイリー(米科学誌[2010年10月18日]) — 胃食道逆流症(GERD)や機能性消化不良などの上部消化管の異常が睡眠に及ぼす影響と、睡眠障害に苦しむ胸やけ患者または酸逆流患者の症状緩和を目的とした治療法が、3件の睡眠機能障害に関する新研究で検討され、テキサス州サンアントニオで開催された第75回米国消化器病学会(ACG)サイエンス年次総会で発表された。

機能性消化不良は高頻度にみられるが、ほとんど解明されていない上部消化管の病態であり、米国では成人の約10%が罹患している。症状は、慢性腹痛と上腹部の満腹感・圧迫感・不快感であると言われている。これらの感覚は、食後に症状が悪化する場合が多いことから、摂食との関連が認められる。

機能性消化不良患者における睡眠障害の有病率は明らかではないが、1件の新研究から、機能性消化不良患者のほうが健常対照者よりも睡眠障害が有意に多く認められることが見出された。

「機能性消化不良:睡眠障害のリスク因子 (Functional Dyspepsia: A Risk Factor for Disordered Sleep)」という研究によると、機能性消化不良患者では、健常対照者と比較して、睡眠障害が3.25倍高かった。また、機能性消化不良の女性では、同じ病態を持つ男性よりも睡眠障害が2.3倍高かったことも見出された。

性別は睡眠障害と関連している傾向が認められる一方で、年齢、喫煙、飲酒は要因とはならなかった。本研究では、精神的要因と身体的要因が、機能性消化不良患者の睡眠障害と関連することも見出された。

日常的な運動により、例として、患者が睡眠障害を起こす可能性が低くなると考えられた。本研究では、機能性消化不良患者は、不安とうつ病も高スコアであったことから、うつ病が機能性消化不良の症状出現の要因である可能性が示唆される。

本試験の結果を発表したダートマス医科大学院(Dartmouth Medical School)准教授ブライアン・レイシー(Brian Lacy)博士は、「疲労は痛覚に影響を及ぼす」と語った。「ここでの重要な発見は、睡眠障害が、上部消化管の神経機能に影響を及ぼす可能性があり、これが消化不良の悪化につながる場合があるということである。このことは、さらなる疼痛と不眠を引き起こす悪循環をまねいている」とレイシー氏は述べた。「機能性消化不良に関する今後の臨床試験には、有効な睡眠の評価項目を含めるべきである。というのも、機能性消化不良の症状の改善が、睡眠の改善を反映するものとなる可能性があるからである」と同氏は補足した。

胃食道逆流症による睡眠障害にみられる運転能力の低下は、エソメプラゾールにより改善

別の試験である「胃食道逆流症による睡眠障害と、エソメプラゾール投与による運転能力低下の回復― プロスペクティブな予備試験(GERD‐Induced Sleep Disorders and a Reversible Driving Impairment with Esomeprazole‐A Prospective Pilot Study)」の結果から、胃食道逆流症による睡眠機能障害が、これまで認識されなかったシミュレーションでの運転成績(遂行能力)に著しい悪影響を及ぼすことが示され、この影響はエソメプラゾールの投与により改善されたことが分かった。

米国バージニア州ノーフォークにあるイースタン・ヴァージニア医科大学(Eastern Virginia Medical School)消化器病学部長で教授のデイビッド・ジョンソン(David A. Johnson)博士は、既発の胃食道逆流症に夜間症状を併発するヘルシーペイシェント(相対的健康者)11人を評価したプロスペクティブな予備試験の結果を発表した。

有効であると認められた商用の運転シミュレータで試験が実施された。このシミュレータは、運転手の操作(ハンドル操作、手動加減速ギア、ブレーキ)に反応し、現実の走行路面のイメージを表示する。運転成績(車線ずれの標準偏差[SDLP])を、被験者が投薬中ならびに休薬中のとき、連続した6回の10分間にわたる運転で比較した。

本試験では、SDLPは経時的に大きくなり(p=0.0002)、エソメプラゾールの投与で改善がみられた。エソメプラゾールを投与中の患者では、夜間睡眠障害の数が全体で平均62.5%減少したのに対し、非投与中の患者では9.5%の減少であった。日中の眠気の程度を判定するのに用いるエップワース眠気尺度(ESS)では、7.9±2.5から5.9±3.5に低下し、胃食道逆流症の症状スコアは2.10から0.33に低下した。

ジョンソン氏は「眠気の減少が成績の改善を促すことが、ESSスコアの改善から示唆される」と述べた。「生活の質と作業生産性の評価の測定から、胃食道逆流症が、睡眠の質を落とし、翌日の働きを低下させることが分かっている。また、睡眠機能障害(睡眠時無呼吸など)は、シミュレータを用いた運転成績の悪化などの精神運動機能低下との関連が示されている。したがって、胃食道逆流症に夜間症状を併発する患者に対する適切な治療は、今までにない救命の意義を持つ可能性があると考えられる」

ジョンソン氏は、今回の結果を検証するために、さらなるプロスペクティブな盲検比較試験が必要となるとも指摘した。

バクロフェン投与で逆流が減少し、夜間の胸やけ患者の睡眠の質が改善

夜間の胸やけに悩まされる患者においても、筋肉を弛緩させる鎮痙薬バクロフェンの投与により症状が緩和される場合があり、良い質の睡眠が得られる可能性のあることが別の新研究「バクロフェンにより逆流が減少し、夜間の胸やけに悩まされる患者で睡眠の質が改善(Baclofen Decreases Reflux and Improves Sleep Quality in Individuals with Nighttime Heartburn)」で示された。

バクロフェン投与により胃食道逆流症の発現数が減少することは明らかとなっているが、今回の新研究では胃食道逆流症と睡眠障害を併発する事が確認された患者において、バクロフェンにより睡眠中の逆流イベント数が減少することに加え、複数の睡眠の評価項目が有意に改善することが見出された。

リン医療科学研究所(Lynn Health Science Institute)の代表兼最高経営責任者であり、オクラホマ大学医療科学センター(University of Oklahoma Health Sciences Center)臨床医学部教授でもある研究共著者ウィリアム・オル(Dr.William Orr)氏は、「胃食道逆流症患者の約70%が夜間の胸やけを訴え、そのうちの40%が夜間の睡眠障害を経験していることが報告されている」と述べた。「こうした患者は、翌日気分が優れず、持てる能力も発揮できない」

バクロフェンは1977年にFDAに認可され、一般に震えや振戦などコントロール不良の行動を治療するために神経科医が使用している。本剤は、骨格筋の収縮と弛緩をつかさどる脳の部分の神経活性を抑制するものである。

オル氏は「本研究では、バクロフェン投与により、睡眠開始後に発生する覚醒度が有意に低下することが見出された」と述べた。「バクロフェンは、下部食道括約筋が弛緩するのを阻止し、胃酸が食道に入り込むのを予防することで、逆流の生理学的原因に対処するものである。逆流の発生を抑制する薬は少なく、プロトンポンプ阻害薬(PPI)を服用している患者の40~50%は、十分な緩和が得られておらず、特に夜間でその傾向が強い」

バクロフェン投与により、プラセボと比べ、逆流イベント数が減少した(4件に対し1.3件)。バクロフェン投与中の患者では、睡眠時間が延び(434分に対し379分)、睡眠効率も上がった(91%に対し79%)ことが、本研究で示された。オル氏は「今回の研究結果から、バクロフェンが、夜間の胸やけと睡眠障害を併発する患者に対するプロトンポンプ阻害薬の補助療法として有用である可能性が示唆される」と述べた。


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