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2015-02-24

ソース(記事原文):家庭医療ニュース

関節リウマチに対するメトトレキサートの最新情報

家庭医療ニュース(2015年2月24日) ― ブルース・ジャンサン(BRUCE JANCIN)著、家庭医療ニュースデジタルネットワーク

コロラド州スノーマス ― 昔ながらの関節リウマチ治療薬に新たな効能は期待できるのか?

メトトレキサート(関節リウマチ治療薬)に関して言えば、答えは間違いなく「イエス」である、とハーバード大学医学部(Harvard Medical School、ボストン)内科教授マイケル・ウェインブラット(Michael E. Weinblatt)博士は述べている。

1980年代半ば以降、関節リウマチの主力となっている貴重なメトトレキサートにおいて、臨床的に重要な進歩や改善が継続されている。

同氏は「昨年ボストンで開催された米国リウマチ学会(American College of Rheumatology:ACR)年次総会で、ジォエル・クレーメル(Joel Kremer)氏が主催したメトトレキサートのシンポジウムに参加できて光栄だった。第2回のシンポジウムで、出席者数は並外れて多かった。この2年間でおそらく最も広い会議室の一つを2度埋めたことになると思う。質問が途切れることはなかった。メトトレキサートが昔ながらの薬剤でありながら、依然として大きな関心を集めている」と米国リウマチ学会から資金援助された冬季リウマチ・シンポジウムでの感想を語った。

以下に最新情報を記載する:
関節リウマチに対する経皮的メトトレキサートがようやく認可された。

過去15年間にわたる複数の試験で、15~20 mg/週を上回る用量のメトトレキサートを皮下投与すると、経口投与よりも優れた有効性を得られることが確立されていた。そのため、リウマチ専門医は、経口療法による臨床効果が不十分な関節リウマチ患者に対して、週1回のメトトレキサート皮下注射を長年行ってきた。しかし、保険者(国などの健康保険の運営主体)が度々医師に通達してきたように、これは適応外使用の扱いであった。それが、ようやく認可されるに至った。今や、経皮的メトトレキサートのFDA(米国食品医薬品局)承認済みの適応は関節リウマチである。また、より使いやすい週1回の単回投与用の自己注射型製剤(OtrexupとRasuvo)が市販されている。

関節リウマチ患者49人を対象に、様々な用量の経口メトトレキサートとOtrexupを比較したランダム化クロスオーバー試験では、経口メトトレキサートの全身バイオアベイラビリティ(投与された薬物が体循環液中に到達した割合)が15 mg/週以上でプラトー(一時的な停滞状態)に達した。これに対し、経皮的メトトレキサートの全身曝露量は、検討対象となった最高用量である25 mg/週まで直線的に上昇し続けた。このバイオアベイラビリティの高さは有害事象の増加に関連しなかった(参考文献:Ann. Rheum. Dis. 2014;73:1549-51)。

経口薬の分割投与によりバイオアベイラビリティが改善する。

1980年代半ばにメトトレキサートが関節リウマチに初めて処方された時、以下のパルス療法(短期間のみ比較的多量に投与)が行われていた。具体的には24時間かけて3回(午前8時、午後8時、翌朝の8時)投与し、これを週1回繰り返す。

同氏は「利便性、投与のしやすさ、それに肝臓への曝露の懸念から、経時的に医師の多くが週1回投与に変更していった。一方、メトトレキサートを増量していき、週1回15~20 mgを上回ると、かなりの割合の患者で薬剤が吸収されなくなるということが分かってきた。ただし、分割投与することで薬物濃度がより高くなることが薬物動態試験から示された」と述べている。

例えば、経口メトトレキサート25~35 mg/週の一定用量を投与中の患者10人を対象としたクロスオーバー試験で、8時間の間隔を空けて半量ずつ分割投与すると、標準的な単回投与と比較して、バイオアベイラビリティが28%上昇することが示された。実際、経口投与によるバイオアベイラビリティは、皮下投与で得られたものに匹敵した(参考文献:J. Rheumatol. 2006;33:481-5).

ウェインブラット氏は「今では、多くの医師が、メトトレキサート17.5~20 mg/週を上回る用量で分割投与している。ただし、本剤を月曜日と木曜日に投与してもよいという意味ではないことに注意を促したい。これは40年前に米国国立衛生研究所(NIH)で研究され、骨髄抑制などの急性毒性や肝疾患などの慢性毒性が起きることが多くなることが分かっている。つまり、本剤は週1回24時間の範囲内でのみ投与するものである」とアドバイスしている。

メトトレキサート:新しいスタチンとなるか?

過去10年間にわたる4件のコホート研究で、メトトレキサートが関節リウマチ患者の心血管死亡率を減少するとみられることが報告されている。また、登録データでも裏付けられている。科学的根拠が十分に強いことから、現在、最終的なランダム化臨床試験が実施されている。このCIRT(心血管炎症軽減試験)と呼ばれる大規模試験は、米国国立心臓・肺・血液研究所から財政的援助を受け、有名な心臓病専門医ポール・リッカー(Paul Ridker)氏とハーバード大学医学部内科教授ユージン・ブラウンウォルド(Eugene Braunwald)氏が主導するものである。米国及びカナダの約350ヵ所の施設で、7,000人の被験者を登録する予定であるが、関節リウマチ患者は対象外となる。

被験者は、過去5年以内の急性心筋梗塞の既往があるほか、2型糖尿病又はメタボリックシンドロームを有する心血管系リスクの高い患者とする。経口メトトレキサート10~20 mg/週又はプラセボのいずれかにランダムに割付け、2~4年間投与し、これにガイドラインに準拠した治療を併用する。主要評価項目は、心血管死、非致死性心筋梗塞、又は脳卒中とする。

有益性をもたらす機序として提唱されているのは、メトトレキサートの抗炎症作用である。CIRT試験の結果が肯定的なものであれば、既に安全性特性が十分に理解されている低価格のジェネリック医薬品(メトトレキサート)が、心臓病予防を変える可能性がある。つまり、本剤による全身性炎症の軽減が、心臓病予防に必須のスタチンによるLDL(低比重リポタンパク)値の低下に追加される可能性がある。

CIRT試験の担当医師の一人であるウェインブラット氏は「これはメトトレキサートに関わる最も興味深い領域の一つである」としている。

メトトレキサートは特定の生物学的製剤の有効性を高める。

メトトレキサートの併用は、抗腫瘍壊死因子の生物学的製剤及びリツキシマブの臨床効果を高めることが分かっている。インフリキシマブ又はアダリムマブ投与中の患者を対象とした複数の研究で、メトトレキサートの基礎治療が、生物学的製剤の血清中濃度を20%~25%上昇させることが示されており、このことから効果増強が説明づけられるとみられる。メトトレキサートが経口小分子JAK阻害薬の有効性を増強するのか、もしくは減弱するのかについて、試験が実施中である。

1件の興味深いコホート研究で、メトトレキサートが、アダリムマブの免疫原性を用量依存的に減弱することが示されている。つまり、メトトレキサートが高用量であるほど、患者のアダリムマブに対する阻止抗体を発現する能力は弱まった(Ann.Rheum.Dis.2012;71:1914-5)。

最近、メトトレキサート未治療及び生物学的製剤未治療の関節リウマチ患者395人を対象に実施されたCONCERTOランダム化二重盲検試験が、本研究を引き継いだ。被験者は、非盲検アダリムマブ(生物学的製剤)に加えて、週1回の盲検下メトトレキサート2.5 mg、5 mg、10 mg、20 mgのいずれかの用量を投与する群にランダム割付けられた。DAS28(28関節の評価)などの指標による26週時点の臨床成績は、メトトレキサート10 mg又は20 mg/週を投与された患者で有意に優れていた。血清アダリムマブ値は、この両投与量の患者で、メトトレキサート2.5 mg又は5 mg/週を投与された患者よりも高かった(参考文献:Ann.Rheum.Dis.2014 Feb. 18 [doi:10.1136/annrheumdis-2013-204769]).

患者の管理について知っておきたい重要な知識がある。ウェインブラット氏は「低疾患活動性あるいは寛解が得られている患者においてメトトレキサートの投与量を減量するなら、メトトレキサートをどこまで低量にすべきかの閾値が、少なくともアダリムマブを投与中の場合は存在する」としている。

一方、メトトレキサートの用量と閾値の作用は、エタネルセプトの併用下では起きない、と同氏は補足している。

メトトレキサートと肝臓

関節リウマチやその他のリウマチ性疾患におけるメトトレキサート投与開始時に65歳以上であった退役軍人659人を対象とした全国観察コホート研究にて、平均追跡期間7ヵ月時点で、肝酵素値の中程度上昇の発現率が6%とであったことが明らかにされた。本研究者らは、肝機能検査の異常に関する一連の独立したリスク因子を特定した。肥満はリスクを1.9倍増にし、240 mg/dLを上回る血清総コレステロール値はリスクを5.8倍増、メトトレキサート投与前の肝機能検査異常はリスクを3.2倍増、葉酸補給不足はリスクを2.2倍増にする(関節炎 ケア Res. 2014;66:1159-66)。

ウェインブラット氏は「本試験は多くの医師が不安に感じていたことを裏付けている」としている。つまり、メトトレキサートに関連した肝毒性リスクは、蔓延するメタボリックシンドロームと一致する特性を有する高齢患者において特に高いということである。

本試験で特に重要なのは、肝機能検査異常を認める患者はメトトレキサートを開始すべきでないという点である、と同氏は補足した。この指針は、1990年代半ばに発表された関節リウマチにおけるメトトレキサートに関する最初のガイドラインに含まれていた。

「リウマチ専門医らが見過ごしてしまったと考えられる。なぜ検査値が上昇するのか解明する必要があると思われる。多くの場合、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)に関連し得ることに気づくだろう」と同氏は述べている。「個人的にはメトトレキサート毒性の最大リスク因子の一つが肥満であると考えている」

ウェインブラット氏は、24社以上の製薬会社から顧問料又は別の報酬を受け取っていることを報告している。


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