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2011-11-24

ソース(記事原文):キャリック・トゥデイ

スタチンの有益性についての検討

キャリック・トゥデイ(2011年10月24日)― 「心臓発作や脳卒中のリスクがある人たちに強力なスタチン処方をすれば、1年に何千件もの死亡を防ぐことができる」とデイリー・メール(Daily Mail)紙が報じました。この新聞によれば、スタチンの強力な使用は標準療法よりもコレステロール値を下げて、心臓発作や脳卒中のリスクをさらに15%減らすそうです。

この報道の根拠となっているのは、スタチンの有効性を検討した最近の研究についての大規模なメタアナリシスです。その主な強みは分析の規模で、26件の無作為化試験の患者170,000例からのデータが対象となっていることから、結果は信頼できるだろうと考えられます。注目すべき重要なことは、心疾患や脳卒中のリスクが高い人に限り、この研究は当てはまるということです。

また、今回の研究では強化スタチン療法の安全性も検討しましたが、ミオパチー(筋力低下や筋損傷を伴う疼痛状態で、スタチンの既知の副作用)の発生率が高まったかどうかについては調べませんでした。研究者らは、強化コレステロール低下療法の際は、最もよく処方されているシンバスタチンの用量をただ増やすより、異なる種類の強力なスタチンを組み合わせるよう勧めています。

要するに、自身の治療の有効性が気掛かりな人は、勝手に用量を増やそうとするのではなく、かかりつけ医に相談するべきです。

記事の出所は?

この新聞は、主に医学雑誌ランセット(Lancet)に掲載されたメタアナリシスを基に報道しています。BBCニュース(BBC News)は、同じ雑誌に掲載されたある無作為化試験についても触れました。

このメタアナリシスは、オックスフォード大学(University of Oxford)とシドニー大学(University of Sydney)の研究者らによって行われました。また、英国医学研究会議(UK Medical Research Council)、英国心臓財団(British Heart Foundation)、ECバイオメドプログラム(European Community Biomed Programme)、オーストラリア国家保健医学研究会議(Australian National Health and Medical Research Council)、オーストラリア国立心臓財団(National Heart Foundation)から資金提供を受けました。この分析の対象となった元の試験の大半は、製薬業界から資金提供を受けていました。

複数の新聞とBBCがこの研究を取り上げました。研究結果はおおむね正確に報道されましたが、結果の意義については誇張されたかもしれません。

デイリー・メール紙とデイリー・エクスプレス(Daily Express)紙の見出しには、「新たなる驚異のスタチン」および「新たなる特効薬」という言葉が用いられており、これは、元の試験で使われたスタチンがすでに一般利用されていると誤解を招く恐れがありました。いくつかの報道では、スタチンの中にはその使用に伴い筋力低下や筋損傷が起こるものもあり、それらは高用量での長期使用に適さないかもしれないと正しく指摘されていました。テレグラフ(Telegraph)紙は、この研究結果が当てはまるのは高リスクの人のみだと警告している1人の専門家についても報じました。

この研究はどういうものだったのか?

以前の研究により、スタチンは低比重リポ蛋白(LDL)コレステロール(「悪玉」コレステロール)値を下げることで、冠動脈死、心臓発作、脳卒中などの有害事象のリスクを減らすことが証明されました。

研究者らの話では、標準的なスタチン療法(例えば、シンバスタチンを連日20mg~40mg)により、LDLコレステロールはおよそ3分の1減少するのが典型的だそうです。

今回の研究で彼らは、強化スタチン療法によってLDLコレステロール値の低下が一層大きくなれば、さらにリスクが減るという理論を検討したいと考えました。彼らは、コレステロール値をさらに低下させる強化スタチン療法の安全性と有効性を調べるよう分析を計画しました。

今回はメタアナリシスという研究でした。これは、統計的手法を用いて複数の既存研究のエビデンスを統合することにより、治療や処置の有効性について全体的な評価を行うというものです。メタアナリシスの利点は、複数の試験を調べるため統計的検出力が比較的高く、有効性の評価は単一の試験の結果よりも信頼できる可能性が高いということです。

ただし、メタアナリシスは他の臨床試験の統計学的検討です。したがって、対象とした試験と似たり寄ったりのものに過ぎず、それらの試験計画にばらつきがあり過ぎると、結果を統合するのは妥当ではないということになります。

研究の対象となったのは?

この研究者らは、コレステロール研究者たちの大規模なコンソーシアムの一員であり、すべての適格試験のデータにアクセスできました。彼らがメタアナリシスの対象とした適格試験は、スタチン療法がLDLコレステロール値の低下に及ぼす影響を検討した2009年末までの無作為化対照試験すべてでした。それら試験は、被験者が1,000例以上で、少なくとも2年間は治療を実施している必要がありました。

それらの試験結果は、異なる強さのスタチン療法を比較した試験と、プラセボとスタチン療法を比較した試験に分けられました。その結果、異なる強さのスタチン療法を比較した試験は5件で、被験者数は計40,000例でした。プラセボとスタチン療法を比較した試験は21件で、被験者数は計130,000例でした。

どちらのタイプの試験についても、各試験の開始から1年後における、冠動脈死、心臓発作、脳卒中などの事象の平均リスク減少率、およびLDLコレステロール1.0 mmol/Lごとの平均リスク減少率を研究者らは算出しました。

個々の試験結果を、統計解析で統合しました。次に研究者らは、例えばがんのリスクが高まるなどの有害影響が強化スタチン療法にはあるのか評価をしました。また、スタチンのまれな既知の副作用である筋障害(横紋筋融解症)のリスクが高まるかどうかについても調べました。

基本的な結果はどんなものだったのか?

強化療法と標準療法を比較した5件の試験では、強化療法のほうが以下の結果を生み出したことを研究者らは明らかにしました。

初回主要血管イベントが全体的にさらに15%減少(95%信頼区間[CI]、11~18%)
冠動脈死または非致死性心臓発作がさらに13%減少(95%CI 7~19%)
血行再建(心臓への血液供給を改善するための処置)がさらに19%減少(95%CI 15~24%)
虚血性脳卒中がさらに16%減少(95%CI 5~26%)
1年後に平均してさらにコレステロール0.51mmol/Lのリスク減少(RR)

これらのさらなるリスク減少率は、プラセボとスタチンを比較した21試験で見られた、コレステロール1.0mmol/L低下ごとの減少率と似ていました。これは、データをどのように調べてもリスク減少率は同様であったという彼らの結論を裏付けています。両方のタイプの試験を統合しても、LDLコレステロールが2mmol/L以上低下した被験者を含むすべてのタイプの被験者で、LDLコレステロール1.0mmol/Lごとの主要イベント減少率は同様であったことが明らかにされました。

26試験すべてで見ると、全死因死亡はLDLコレステロール1.0 mmol/L低下ごとに10%減少し(RR 0.90、95%CI 0.87~0.93)、心臓が原因の死亡の減少を大きく反映していました。

強化スタチン療法に伴う、がんなどの心臓が原因でない死亡の増加、またはコレステロール低値でのがんの発生率上昇は認められませんでした。

研究者らは結果をどのように解釈したのか?

研究者らは、強化スタチン療法はLDLコレステロール値をさらに低下させることで、安全に心臓発作や脳卒中リスクをさらに下げると話しています。LDLコレステロール1.0 mmol/L低下ごとに、それらイベントの年間発生率は5分の1超低下しました。彼らは、LDLコレステロールの2~3 mmol/L低下で、心臓発作や脳卒中リスクが40~50%低下すると示唆しています。

また、ロスバスタチンのように比較的新しく強力なスタチンを使用することで、あるいは後発スタチンの用量を増やすよりも他のコレステロール低下療法と標準用量を組み合わせることで、こうした有益性を得るだけでなく筋力低下などの副作用の可能性が低くなるかもしれないという示唆もしています。

まとめ

これは重要な研究です。高リスク患者において、高用量スタチン療法によるLDLコレステロール低下は、標準スタチン療法よりも心臓発作や脳卒中といった有害転帰のリスクを減らすことが示されています。このリスク減少は、LDLコレステロール値の低下と直接関連しています。

以下に留意点をいくつか挙げます。

この分析では、がんや出血性脳卒中などいくつかの有害転帰を調べましたが、比較的少ない副作用、特に筋力低下の発生率については、強化療法と標準療法間の比較を実施しませんでした。
異なる強さのスタチン療法を比較した5試験のうち、治療間の統計的有意差が明らかにされたのは2件だけでした。ただし研究者らは、達成された絶対LDLコレステロール低下を調べた後では、これら5試験の結果は互いに両立しているため、これを重大な制限とは見なさなかったということだと話しています。
研究者らは、より強力で価格も高いスタチンのほうが、後発スタチンよりもコレステロールを大幅に低下させ、また副作用発生率も低い可能性があると主張しています。この点については、今回の研究で直接取り組まれていません。この、どのスタチンが優れているのかという問題は、その答えがあるのなら、それらを互いに比較している複数の直接試験でさらなる分析を行う必要があります。

全体的に見ると、心疾患や脳卒中のリスクが高い人たちにとってはスタチンの有益性に議論の余地はなく、今回の研究がこれを裏付けています。理想的なコレステロール値(目標値)とはどんなものか関心がある患者は、そうした値というのは自身の全般的リスクレベルによって決まるため、かかりつけ医に相談してください。


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