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2010-03-01
ソース原文(オリジナル):BBCニュース
ニコチン中毒
英国では、たばこを吸う成人の割合が4分の1を少し上回るが、噛みたばこの利用者数はそれよりはるかに少ない。
この記事は、トリーシャ・マクネアー(Trisha Macnair)博士が、2010年3月に医学的レビューしたものである。
ニコチン中毒とは?
ニコチンは、最も広範囲に利用されている乱用性薬物である。通常、たばこを吸ったり噛んだりすることで放出されるニコチンを摂取するもので、世界中で数百万人が利用している。
ニコチンは、肺から脳まで速やかに移動(約7秒)することで作用する。その行き着く先は、気分、食欲、その他の脳機能をつかさどる脳内神経伝達物質ドーパミンの放出を刺激する部位である。
鎮静特性と少々気分が高揚する特性を求めて摂取されるのが普通だが、実際のところニコチンには刺激作用と抑制作用の両方があるように思われる。これらの作用は、常にニコチンの使用状況で決まると考えられる。このように、ニコチンは、使用者の精神集中またはリラックスを促す可能性がある。
ニコチンは、あらゆる薬物の中で最も常習性が高いものの1つであると一般に認識されている。使用者は、すぐにその作用に依存するようになる(最も影響を受けやすい場合、ほんの2~3本の紙巻たばこで常習性を持つようになる)。ニコチン摂取を突然止めた場合には、一般に、不安や気分変動などの長期的な離脱症状を経験する。この不快感情を改善させようとするため、ニコチンを渇望するようになる。その結果、常習性を断ち切るのは困難になる。
たばこを吸ったり噛んだりすることは違法ではなく、ある程度社会的にも容認されているという事実が(ただし近年その傾向は弱まっている)、禁煙することを一層困難にしている。たばこが今日発見されていたとしたら、ヒトへの消費は危険すぎて認可されないだろうと主張する人が多い。
ニコチンは純薬なので、身体的健康に影響を与えるような副作用はほとんどないものの、血圧の上昇と、心臓病および動脈疾患の進行の促進がみられる。ただし、こうしたダメージの大半を与えるのは、ニコチンと一緒に摂取される他の化学物質である。紙巻たばこが煙を出しながら燃焼するとき、その他に数百もの成分を放出する。下記で説明する化学物質が、健康に最も大きなリスクをもたらすものである。
喫煙することで、ほとんど全ての臓器と体の組織のがんリスクが上昇し、特に肺がん、咽喉がん、胃がんになるリスクが大きい。心臓病、脳卒中、慢性閉塞性肺疾患(慢性の気管支炎と肺気腫として一般に知られている)などの重篤な肺障害は、喫煙者の若年死の可能性を高める原因のほんの一部である。喫煙者の死亡は、非喫煙者よりも数年早いことが多い。
喫煙が英国における年110,000人超の早期死亡の原因であると推定される。
紙巻たばこには何が入っているのか?
紙巻たばこの煙の中には、ニコチン以外にも、4,000を超える化学物質が存在し、その中のいくつかは毒性を持つことでよく知られている。そのほんの一部を以下に挙げる。
* ニコチン - たばこの煙を吸い込むと、ニコチンは血流に吸収され、素早く作用する。即時生理作用には、心拍数と血圧の上昇などがある。
* アンモニア – トイレ洗浄剤にも含まれている。
* アセトン – 爪のニス除去液に含まれる。
* カドミウム – 電池に使われる極めて有害な金属
* 塩化ビニル – ポリ塩化ビニルを作るのに用いる。
* ナフタレン – 防虫剤の玉に使用される。
* 一酸化炭素 – 紙巻たばこ煙のほかに排気ガスやガスヒーターから放出されることが多い有毒ガス。例えば故障したガスストーブからのように大量であれば急速に死に至るが、紙巻たばこを吸ったときのように少量の場合では、喫煙者の呼吸効率の低下をもたらす。
* タール(やに) – 紙巻たばこ煙の中の茶色の濃厚な物質で、指や歯に黄褐色に着色し、喫煙者の肺に蓄積し、肺の機能が悪くなる。
* シアン化物 – 第二次世界大戦のガス室で使用された致死性ガス
* ホルムアルデヒド – 死体を保存するのに使用される。
* ヒ素 – 毒物
紙巻たばこには、ココア、バニラ、甘草、砂糖、ハチ蜜のような小児期に好まれる香味を含有するものもある。
ご存知でしたか?
* ニコチン中毒は、一般に若年喫煙者が紙巻たばこを初めて試みてから約1年以内に定着する。これは、紙巻たばこの購入が法的に認められる年齢に達する前(平均12~13歳)であることが多い。
* 紙巻たばこをやめようとした場合の離脱症状(つまり中毒)は、紙巻たばこを1箱未満、平均6本吸っただけで出現する。
* 喫煙は、脳受容体に永続的な変化を引き起こす。一旦やみつきになると、大半の人は、ニコチンを渇望するようになり、どうしても完全に断ち切れなくなる。
* 元喫煙者の80%は、たとえ何年も前から紙巻たばこをやめていたとしても、ほんの1本吸うことで、その1ヶ月以内には常習に戻ってしまう。
* 軽い紙巻たばこを吸う人(通常女性)は、ただ単にもっと長くせかせかと吸うことで同量のニコチンを摂取している。その結果、肺輪郭に末梢肺腫瘍が発症することが多いほか、唇をすぼめた(たばこをくわえた)ときのような垂直線が唇の周囲に生じることが多い。
* 訓練された指導員のサポートを得ながら、ニコチン依存に対する投薬を併用した場合、長期禁煙できる確率が1年で30%にまで引き上げられるにもかかわらず、禁煙するための支援を求めているのは喫煙者の約5%にすぎない。
禁煙のための治療とヒント
全喫煙者の約半数は、調査が行われた年に1回以上禁煙を試みている。かなりの数で初期の経過は順調であると考えられる。このデータにはばらつきがあるものの、数件の試験からニコチン置換療法と行動支援など利用可能な支援を全て用いた人の40%超が、初期成功をおさめていることが示唆されている。しかし、完全に禁煙するというのは、また別問題である。長期的成功例はもっと稀であり、一般的に最初の1年以内に95%超が再喫煙してしまう。医療専門家や薬物療法の補助なしで、自分個人の意志で禁煙しようとする人の2~3%のみが、長期禁煙者として成功をおさめている。
禁煙支援のため提供される戦略のいくつかを以下に挙げる。
1.評価とアドバイス
大半の一般診療所には、喫煙者の常習性の簡易評価と、たばこを止めるためのアドバイスを提供する医師と看護師がいる。約10%の人が完全に禁煙するための手助けとしてはこれで十分である。元喫煙者との電話交流により、長期的に禁煙できる人の割合が増大するプラス効果のあることを示した試験もいくつかある。喫煙について個別化したフィードバックと、個別化した自助マニュアルについて検討した研究でも、有望な結果を示しているものがある。
2.行動療法
行動療法とは、たばこに火をつけたい衝動にかられるのを我慢したり、ニコチン渇望を抑えたりするスキルや意欲を向上させるための評価とアドバイスを併用する積極的アプローチである。これらの行動療法では、「禁煙」グループまたはそれと同等のプログラムに喫煙者を参加させることなどが多く、そこでは独自で取り組むか、もしくは特別な訓練を受けたセラピストと一緒に取り組むことになる。試験結果から、参加後7人に約1人が6ヶ月以上禁煙できることが示されている。
3.ニコチン代替療法(NRT)
ニコチン代替療法とは、たばこを止めたあと、ニコチンパッチなどのニコチン供給源を別に提供する仕組みである。これは離脱症状と喫煙渇望を軽減させる効果的な方法である。喫煙者は、紙巻たばこを口にくわえない習慣を身につけながら、依然としてニコチン供給源を持ち続け、それを徐々に減量していく。
この種の治療を行うことで、約10%が1年超禁煙することができ(ばらつきあり)、ニコチン代替療法の利用者20人に1人が長期禁煙者となる。
その他のニコチン代替療法剤で利用可能なものには、ニコチンガム、トローチ、鼻腔スプレー、舌下錠、ニコチン「吸入剤」がある。最近の研究では、パッチとガムを組み合わせる併用治療を検討したものがいくつかあり、パッチ単独よりも一層有効であるように思われる。
4.その他の薬
ニコチン依存から離脱するのに役立つ薬には、ブプロピオン(ザイバン)とバレニクリン(チャンピックス)がある。これらの薬は、ニコチン代替療法を使いたくない人や、副作用に苦しむ人に好まれると考えられる。
ブプロピオンは脳内ドーパミン系に作用し、離脱症状と渇望の軽減を促す(そのため抗うつ薬としても作用する)。一般に、同剤を服用している人は、禁煙したときの離脱症状と渇望に対処するのが、ずっと容易であると感じる。他の薬同様に、副作用が現れる可能性がある。例えば、口内乾燥を訴える人や、なかなか眠れない人もいるので、誰にでも適しているわけではない。ブプロピオンを使用する15人に1人は、長期禁煙者となる。
バレニクリンは、脳内ニコチン受容体を持続的に軽く刺激し、紙巻たばこの味を嫌なものにさせ、喫煙者にニコチンの「インパクト」を与えないことで摂取する理由を分からなくする。バレニクリンを使用する8人に1人は、長期禁煙者となる。
まずは必ず担当医に相談することを忘れないようにする。
上記に示した成功率は、一度に用いる薬が1つの場合である。現在、2種類の薬を併用投与すると成功率が高くなる可能性のあることが知られている。
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