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2011-10-10
ソース(記事原文):英テレグラフ紙
乳癌は発病前に阻止しましょう!
乳癌発症の家系的リスクが高い女性に対し、極めて有望な結果を伴う予防薬が投与されている。
英テレグラフ紙 (2011年10月10日) ― スティーブン・アダムス(Stephen Adams)著
癌は切除したり放射線や薬剤で破壊したりするものである。それなら発症する前に予防しないのはなぜだろう。何百万もの人が心臓発作と脳卒中の予防にスタチン系薬剤を服用しているのに、英国の死因の第2位である乳癌に対して同じアプローチを採用できないものだろうか。
これは腫瘍医が問い始める疑問である。新分野である予防的化学療法(癌予防に薬剤を用いること)の世界的第一人者であり、ロンドンのウォルフソン研究所がん予防センター(Wolfson Institute's Centre for Cancer Prevention)疫学教授のジャック・カジック(Jack Cuzick)氏は、「心臓病専門医が、治療するよりも予防する方が良いことをかなり前に解き明かした」と述べている。「我々腫瘍医は20年~30年の遅れをとっている」
しかし、巻き返しを図る勝負が今本格化しており乳癌研究の道を拓きつつある。英国では、カジック教授をはじめとする専門家らが、元来乳癌を治療するために開発されたアナストロゾールという薬剤が実際には予防することもできるのかどうかを乳癌リスクの高い6,000人を超える女性を対象とした試験において調査している。一方、米国では4,500人の女性を対象とした試験により、別の薬剤エキセメスタンが、乳癌の発症リスクを3分の2に低下させることを明らかにした。
エキセメスタンに関する研究結果を全米会議で発表したハーバード大学医学部ポール・ゴス(Paul Goss)教授は「素晴らしい新規ツールが我々の手元にある。この注目すべきツールは閉経期の女性の乳癌リスクを65%低下するものである」と述べている。
研究者らが薬剤の乳癌を予防する可能性に初めて気づいたのは1990年代で、片方の乳房の腫瘍に対し薬物療法を行っている女性が、対側乳癌を発症する割合が低いことに気づいたときであった。問題になっているのはタモキシフェンという薬剤で、30年以上にわたり乳癌の縮小および治療に使用されている。乳癌の40%以上がエストロゲン受容体陽性(ER+)で、つまりホルモンが癌の増殖を刺激している。タモキシフェンは癌細胞によるエストロゲンの取り込みを阻害することで作用する。
米国では1998年に、乳癌を発症したことのない女性に対する乳癌の予防薬にタモキシフェンが認可された。研究が発表された後の同年に乳癌の家族歴のある女性は、乳癌リスクが約半減することが明らかになった。また、もう1つのラロキシフェンという薬剤は、閉経後の骨密度を保護するために開発されたもので、19,000人の閉経女性を対象とした試験で乳癌発症率を半減することが見出され、乳癌予防薬に認可された。
しかし、これらの薬剤は有望であることが示されたにもかかわらず、いずれも乳癌予防に広く使用されていない。これは主に両剤に生命を脅かす血餅の小リスク(ただしラロキシフェンのリスクの方がタモキシフェンよりも小さい)と、その他の重篤な副作用が認められるからである。タモキシフェンは稀だが子宮体癌(子宮内膜の癌)を引き起こすこともある。
最近実施されたアナストロゾールとエキセメスタンの試験から得られた朗報によれば、両剤の重大リスクはかなり少ないように思われるという。ただし、これらの有力な薬剤には、ホットフラッシュをさらに悪化させるなどの不快な副作用がある。また、マサチューセッツ総合病院の乳癌研究責任者のゴス教授は、両剤を長期的に投与した場合、女性の骨を弱めることになるのは「理論的に可能」と結論付けている。両剤ともアロマターゼ阻害薬というクラスの薬剤であり、単に癌細胞による取り込みを阻止するのではなく、エストロゲンの産生を止めるものである。つまり閉経後の女性に限り使用することが適している。
これらの新薬は有望である一方、リスクのない薬剤は存在しない、と専門家らは結論している。予防的化学療法の分野ではジレンマに陥ることが多い。健康な女性への薬剤の副作用リスクと、潜在的な利益を、どのように比較検討すればいいのか。
ゴス教授は「『エキセメスタン』に副作用がなかったとしたら、水道水に入れればいいと言える」としている。必然的に、乳癌予防の薬剤は、有益性が潜在的有害性を上回る人(乳癌リスクが高い女性)を対象としている。「高リスク」とは一般に、母親か姉妹が50歳までに乳癌(または卵巣癌)になった人と定義される。
予防的化学療法の支持者が抱える別の難題は、患者や医師に認めてもらうにはどうしたらいいかということである。即時の実体的な効果がなく、リスクを低下する可能性があるだけの場合には微妙な課題である。「心臓病専門医は患者に対し『コレステロールが低下している』などのように何らかの効き目を指摘することによって予防の概念を説得することが可能となっている」とゴス教授は説明している。「乳癌ではそれができていない」
さらに、英国における一つの大きな問題は、乳癌予防薬に規制当局の認可が得られていないことである。理由はお金である、とカジック教授はいう。タモキシフェンとラロキシフェンの特許は利益が大きいがすでに失効しているので、これらのジェネリック医薬品を非常に安く製造できる。これにより潜在的利益が事実上目減りするので、製薬会社は欧州連合または英国の規制当局から新たな販売認可を得るための高額な申請プロセスを通過するような意欲がほとんどない。
カジック教授は「まさに手のうちようのない状況である」としている。同氏は「英国がん研究所(Cancer Research UK)や医学研究審議会のような学術研究機関が協力して研究データを発表し、ジェネリック医薬品として予防的化学療法剤の認可を得られれば、賢明なことではないかと思う」とも述べている。「この提案に関しては今のところ何の進展もないが、良い解決策になると考えられる」
「私が試験に参加したのは、母の癌がどれほど致死的であったかを目の当たりにしたから」
10代で母親ポーリーン(Pauline)を乳癌で亡くしたスー・ホローウェイ(Sue Holloway)さんは、この致死的な乳癌を予防するためには薬剤投与が有益となりうることを信じている。
ヨークシャー州(Langthorpe市)の薬局補助員として勤めるスーさんは「私の母は15年間にわたり乳癌と懸命に闘いました」という。「私が幼少の間ずっと母が病気であったのを覚えています。母は44歳で亡くなり、当時私は17歳でした」
スーさんが母親になったのはジョアナを養女として迎えた28歳のときだった。彼女は歴史が繰り返されるのを避けたかった。そこで、健常女性を対象とした乳癌予防におけるアナストロゾールの有効性を検討する試験に参加する機会が来たとき飛びついた。スーさんは「私が試験に参加したのは、母の癌がどれほど致死的であったかを目の当たりにしたからです」と述べている。
彼女はアナストロゾールを2003年~2008年まで5年間投与した。これは英国がん研究所が主導するIBIS-II試験の初回募集の1つとして実施されたもので、本試験では乳癌の家族歴のある閉経後の女性を対象に、プラセボとアナストロゾールを比較している。実薬かプラセボのどちらを服用しているのかを彼女自身が知ることはない(大半の試験同様、本試験は患者と研究者の偏見が加わるのを回避するため「盲検」になっている)。
「とはいえ、副作用があったので自分ではアナストロゾールを服用しているのではないかと何となく気づきました」と彼女はいう。「ホットフラッシュが悪化し、関節がこわばり、肌の乾燥がひどかったものです」
スーさんの母の従姉妹と叔母も乳癌に罹患した。彼女は乳癌を発症していないが、薬剤によってリスクが低下したのかどうかは分からない。しかし、徐々に募った6,000人を超える女性被験者から得た結果について2013年までに乳癌のリスクが高い女性の予防にアナストロゾールがどれほど有効であるのか知ることができると研究者らは期待を寄せている。スーさんは、肯定的な結果が示されれば、可能な限り早く同剤が認可されるのを見届けたいとしている。また「同剤のリスクと副作用について理解する必要はありますが、私にしてみれば乳癌リスクが高い場合にはそれに見合う価値はあると思います」と締めくくった。
IBIS-II試験では乳癌リスクの高い女性を募集している。詳細は、ホームページwww.ibis-trials.org(英文)を参照のこと。
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