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2011-10-18

ソース(記事原文):エイズマップ

欧州の新規HIV治療ガイドラインにより治療勧告が広まる一方、薬剤不足の可能性が予測される

エイズマップ(2011年10月18日)― ガス・ケルン(Gus Cairns)著

欧州エイズ学会(European AIDS Clinical Society:EACS)によるHIV患者のための治療ガイドライン新版が、セルビア(ベオグラード)で開催された第13回欧州エイズ会議で先週発表された。

HIV(ヒト免疫不全ウイルス)治療

本ガイドラインでは、抗レトロウイルス療法(ART)を開始する際のCD4数の基準値に基本的変更はなく、CD4数350/mm3(閾値)を維持している。ただし、本ガイドラインではCD4細胞数の多い人に抗レトロウイルス療法を推奨する状況の範囲が拡大されており、これにはARTを「考慮すべき」状況の範囲も含まれている。

また、英国HIV学会(British HIV Association)や米国保健福祉省などによって発行された国内ガイドラインよりも、本ガイドラインで推奨される初期治療のほうが広範囲にわたる。初期治療は第一選択薬としての非ヌクレオシド系逆転写酵素阻害薬(エファビレンツおよびネビラピン)、ブーストしたプロテアーゼ阻害薬3剤(アタザナビル、ダルナビル、ロピナビル)、インテグラーゼ阻害薬(ラルテグラビル)のいずれかとされている。

テノフォビル/FTC (ツルバダまたはエファビレンツ、もしくは合剤アトリプラ)、あるいはアバカビル/3TC(カイベクサ)は、併用療法の「主体」となるヌクレオシド類似体(NRTI)と同量を投与する。ただし、通常原因となるB*5701遺伝的変異が認められなかった場合でも、アバカビルは高ウイルス量または心血管疾患リスクを伴う場合に「慎重に用いるべき」であり、アバカビルへの過敏症反応の可能性について必ず患者に助言すべきである、と本ガイドラインには記述されている。HIV治療薬の主な副作用および重篤な副作用に加え、その他の疾患に使用されることの多い薬剤との相互作用に関して、新たな表が付け加えられている。

HIVガイドライン執筆グループの委員長を務めるブルッセルのサン・ピエール大学病院(St Pierre University Hospital)ネイサン・クラメック(Nathan Clumeck)教授によれば、「おそらく我々のアプローチはかなり保守的なものである。今回は様々な一次治療を取り入れたが、規定が厳格すぎると、二重の基準を作り出しかねないリスクがある」という。

「治療を利用しやすい国もあれば、そうでない国もあるので、規定しすぎるのは現実的ではない。例えば、我々の滞在国セルビアは、ツルバダもラルテグラビルも利用不可能である」と同氏は述べている。

本ガイドラインでは、CD4数の閾値のほかにも、HIV関連の疾患がある場合は、いずれのCD4数でもHIV治療を推奨している。HIV関連の疾患には、結核(CD4数100/mm3未満の患者に対しては2週間以内に開始するよう推奨)、ホジキンリンパ腫やヒトパピローマウイルスに関連した癌を含む癌一般、症候性B型肝炎感染、認知神経科学的障害などがあり、妊娠中でも対象となる。母体のウイルス量が50コピー/mL未満の場合は、自然分娩のほうが帝王切開よりも妊婦には望ましい。

本ガイドラインでは、CD4数が500未満の患者全員(特にC型肝炎患者である場合)のほか、心血管疾患の高リスク(10年リスクが20%超)患者か、その他の癌患者、または初期感染(感染から8週間以内)患者では、いずれのCD4数でも治療を考慮するよう医師らにアドバイスしている。

この「考慮」されるというカテゴリーが医療資金提供者にカテゴリーを無視させる口実とならないのかという質問をクラメック氏が受けた。これに対し同氏は、医師と患者の判断に可能な限り多くの余地を残すことが目的であるとしている。

また、「考慮」というカテゴリーは、執筆委員会で意見の一致が得られなかった状況に対する解決策であった、と同氏は補足した。「今では効果的でありながら毒性が少ない治療法はいろいろあり、幅広い臨床的均衡(優劣がつけ難い)状態にある。つまり、いずれかの治療法がより適しているという証拠はない」

モニタリングおよび併存症

欧州エイズ学会(EACS)ガイドラインの最も顕著な特徴は、従来通りのフォーマットであることだが、具体的には手順と問題解決の段階的手法(アルゴリズム)が図形で描かれたポケットサイズの小冊子で、多忙な医師に使い易くなっている。

小冊子の最初に新たに追加された部分があり、その内容はHIVと診断された時点と、治療を開始する時点、それに定期的モニタリング時に患者に検査を行う必要があるとするものである。中でも新しい勧告は、ウイルス学的失敗時だけではなく、診断時にも薬剤耐性検査を行うとともに、利用可能な場合、診断時のB*5701アバカビル過敏症検査を行うことである。これをアルゴリズムに加味することで、HIV療法を開始する正しい時期であるかどうか医師と患者が決定するのに役立つ。

以前と同様に小冊子は3章に分けられている。1) HIV治療、2) 癌から高血圧や抑うつ状態にいたるまでの非感染性併存症の治療、3) B型・C型肝炎の治療。

「併存症」の章には、低BMD患者における 骨密度(BMD)およびビタミンD欠乏に関する新たなページと、糖尿病に対する改訂された治療ガイドライン(重篤な2型糖尿病で著しい体重増加のない患者に対するスルホニル尿素系薬剤の推奨)が存在する。

心血管疾患の管理は比較的保守的で、心臓発作の10年リスクが20%を超える患者に対してのみ、高脂血症治療薬と、HIV療法の切り替え(プロテアーゼ阻害薬からラルテグラビルに切り替え、アバカビルは回避)が推奨されている。腎臓病では、尿タンパクおよびクレアチニンを測定することが今回推奨されており、現在アタザナビルは腎結石のリスク因子として挙げられている。

旅行に関連するリスクに関してと、あらゆるCD4数のHIV患者に対し主に使用されるワクチンの安全性および有効性に関して新規ページがある。

本ガイドラインには、抑うつ状態の管理方法として検査用の簡易質問表などのページが以前から含まれていた。今回これに性機能障害の管理と、認知神経科学的障害の評価に関する包括的な図表が追加された。認知神経科学的な障害の診断および管理は、依然として議論のある分野であることを本ガイドラインで指摘している。併存症群を主導したコペンハーゲン大学(University of Copenhagen)のジェンス・ラングレン教授は「この分野での証拠は弱いうえ、意向に基づく傾向が強いため、指針を作成するのは困難であった。この表は今後2年で変わると確信している」と語った。

肝炎治療

「B型・C型肝炎」の章の執筆グループを主導したのはボン大学(University of Bonn)のユルゲン・ロックストロー(Jurgen Rockstroh)教授であった。この章は、C型肝炎治療の開始および管理のための具体的な新規フローチャートなどからなり、B型肝炎患者におけるデルタ肝炎(D型肝炎)の管理も含まれる。

この章の執筆グループはジレンマに陥った。というのもC型肝炎プロテアーゼ阻害薬2剤(ボセプレビルとテラプレビル)は、現在HIVを伴わない肝炎患者の治療に対し承認されているもので治療の速度と有効性はかなり向上しているものの、HIV患者には承認されていない。本ガイドラインの印刷版は、HIV/C型肝炎に同時感染した患者に対する12週間にわたるテラプレビルの中間結果に基づくもので、医師らは標準治療に12週間のテラプレビルの追加投与を選択してもよいことが推奨されている。来週開催される米国感染症学会(Infectionse Diseases Society of America Meeting)で良い結果が公表されれば、ボセプレビルに関しても同様の指針がオンライン版に掲載される可能性がある。アタザナビルおよびエファビレンツは、今までにテラプレビルとの薬物相互作用が評価された唯一の2剤(非ヌクレオシド系逆転写酵素阻害薬)であるという。

今回このページを含めるにあたり多少の議論があり、聴衆の医師の一人から、未承認薬を処方すれば医師らがトラブルに巻き込まれる可能性があるという意見が出た。これに対しロックストロー氏は、同時感染した患者に対し、新薬を処方するための臨床的判断を利用する資格が医師らにはあると話した。

予防的治療

本ガイドラインでは、予防としてのHIV治療の使用にほんのわずかしか言及してないが、血清陽性者・陰性者カップルに対する早期開始を「積極的に論じる」よう推奨しており、「一部の専門家はHIV感染の予防ツールとして勧めている」と指摘している。クラメック氏は「公衆衛生的アプローチに取り組むのは我々の役目ではない」ので、治療の予防的有益性には踏み込まなかったと述べた。

これについてラングレン氏は報道会見で詳しく説明した。「医学における治療目標は、個々の患者に有益性をもたらすことであり、公衆衛生に浸透させるのは極めて大きな問題である。さらなる知識の蓄積なしに、予防法として治療を推奨するのは極めて困難となるだろう。治療の適用を、包括的予防法一式のうちの一部分とする必要がある。ヨーロッパにおける若い男性同性愛者のHIV感染は、検出できないものがあってもなお増加し続けている」

HIV治療の維持

最後に、本ガイドラインでは勧告の中で以下の問題意識に言及している。財政によるHIV治療への引き締め体制が至る所でみられるが、東ヨーロッパでは薬剤の在庫切れや治療拒否が定期的にみられ、この状況に関しては別の会議で取り上げられた。本ガイドラインでは、薬剤耐性への障壁が低い場合、新薬の治療法への切り替えに特別注意するよう言及しており、クラメック氏は緊急の在庫切れが原因の切り替えも心に留めておくよう記してあるとしている。緊急の切り替えに関する指針は、EACS会議で発行された欧州エイズ治療グループの新規パンフレットで取り上げられている。

ラングレン氏は話の最後に次のような厳しい警告を発した。「ジェネリック医薬品が利用可能になるのを頼りに、西ヨーロッパでHIV治療は持続可能になると思う。一方、東ヨーロッパでは、医師と患者が力を合わせてHIV治療を強く擁護していかない限り、今後2~3年で公衆衛生上の緊急事態が現実になることが危惧される」


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