【警告】
・キャンマブを含むがん化学療法は、緊急時に充分対応できる医療施設において、がん化学療法に充分な知識・経験を持つ医師のもとで、キャンマブが適切と判断される症例についてのみ実施してください。適応者の選択にあたっては、キャンマブおよび隠併用薬剤の添付文書を参照して充分注意してください。また、治療開始に先立ち、有効性および危険性を充分に理解し、同意してから使用してください。
・心不全などの重篤な心障害があらわれ、死亡に至った例も報告されているので、必ずキャンマブ使用開始前には心機能を確認してください。また、キャンマブ使用中は適宜心機能検査(心エコーなど)を行ない状態(左室駆出率(LVEF)の変動を含む)を充分に観察してください。特に以下の人では、心機能検査(心エコーなど)を頻回に行なってください。
(1)アントラサイクリン系薬剤を使用中の人、またはその前治療歴のある人
(2)胸部へ放射線を照射中の人
(3)心不全症状のある人
(4)冠動脈疾患(心筋梗塞、狭心症など)の人、またはその既往歴のある人
(5)高血圧症の人、またはその既往歴のある人
・キャンマブ使用中またはキャンマブ使用開始後24時間以内に多くあらわれるInfusion reaction
のうち、アナフィラキシー様症状、肺障害などの重篤な副作用(気管支けいれん、重度の血圧低下、急性呼吸促迫症候群など)が発現し、死亡に至った例が報告されています。これらの副作用は、特に安静時呼吸困難(肺転移、循環器疾患などによる)のある人、またはその既往歴のある人において重篤化しやすいので、状態を充分に観察しながら慎重に使用してください。
【禁忌】
・キャンマブの成分に対し過敏症の既往歴のある人
【原則禁忌】
・以下の人は、キャンマブ使用による有益性と危険性を慎重に評価してください。
重篤な心障害のある人
【慎重使用】
・アントラサイクリン系薬剤を使用中の人、またはその前治療歴のある人: 心不全などの心障害があらわれやすくなります。
・胸部への放射線を照射中の人: 心不全などの心障害があらわれやすくなります。
・心不全症状のある人、またはその既往歴のある人: 症状が悪化するおそれがあります。
・左室駆出率(LVEF)が低下している人、コントロール不能な不整脈のある人、臨床上重大な心臓弁膜症のある人: 症状が悪化するおそれがあります。
・冠動脈疾患(心筋梗塞、狭心症など)の人、またはその既往歴のある人: 症状が悪化するおそれがあります。または心不全などの心障害があらわれやすくなります。
・高血圧症の人、またはその既往歴のある人: 心不全などの心障害があらわれやすくなります。
・安静時呼吸困難(肺転移、循環器疾患などによる)のある人、またはその既往歴のある人: Infusion reactionが重篤化しやすくなります。
・高齢者
【重要な基本的注意】
・心不全などの重篤な心障害があらわれることがあるので、必ずキャンマブの使用開始前には心機能を確認してください。キャンマブ使用中は心症状の発現状況・重篤度などに応じて適宜心機能検査(心エコーなど)を行ない、状態(左室駆出率(LVEF)の変動を含む)を充分に観察し、休薬、使用再開、あるいは中止を判断してください。また、胸部への放射線照射との併用時には、放射線の適切な治療計画を設定した上で、心障害の発現に留意してください。
・キャンマブ使用中または使用再開後24時間以内に多くあらわれるInfusion
reaction(症状:発熱、悪寒、悪心、嘔吐、疼痛、頭痛、咳嗽、めまい、発疹、無力症など)が約40%の人において報告されています(HER2過剰発現が確認された転移性乳がんの承認時)。これらの症状は、通常軽度~中等度で主にキャンマブの初回使用時にあらわれやすくなっています。状態を充分に観察し、以上が認められた場合には、適切な処置(解熱鎮痛剤、抗ヒスタミン剤の使用など)を行なうとともに症状が回復するまで状態を充分に観察してください。
・Infusion
reactionのうち、アナフィラキシー様症状、肺障害などの重篤な副作用(気管支けいれん、重度の血圧低下、急性呼吸促迫症候群など)が発現し死亡に至った例が報告されています。状態を充分に観察し、異常が認められた場合には適切な処置(酸素吸入、β-アゴニスト・副腎皮質ホルモン剤の使用など)を行なうとともに、症状が回復するまで状態を充分に観察してください。また、キャンマブの使用中にこれらの異常が認められた場合には直ちに使用を中止してください。なお、このような症状があらわれた人において再使用の可否を判断する基準は確立していません。
・Infusion reaction の発現開始などを目的とした前投薬(抗ヒスタミン剤、副腎皮質ホルモン剤など)に関する有用性は確認されていません。
・HER2過剰発現が確認された乳がんにおける術前補助化学療法(A法、B法)、術後補助化学療法のA法および転移性乳がんのB法にキャンマブを使用する際には、関連文献(「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議 公知申請への該当性に係る報告書」などを熟読してください。
・キャンマブの使用にあたっては、キャンマブと一般名が類似しているトラスツズマブ エムタンシンとの取り違えに注意してください。
【効能・効果に関連する使用上の注意】
・HER2過剰発現の検査は、充分な経験を有する病理医または検査施設において実施してください。
・HER2過剰発現が確認された胃がんの場合
1) トラスツズマブによる術後補助化学療法の有効性および安全性は確立していません。
2) 接合部領域における原発部位、組織型などに関しては臨床成績の内容を熟知し、使用者の選択を行なってください。
【用法・用量に関連する使用上の注意】
・HER2過剰発現が確認された乳がんにおける術後補助化学療法においては、以下の点に注意してください。
1)1年を超える使用の有効性および安全性は確立していません。
2)キャンマブは、臨床成績を熟知した上で使用してください。
・HER2過剰発現が確認された治癒切除分不能な進行・再発の胃がんにおいては、以下の点に注意してください。
1)
キャンマブは、ほかの抗悪性腫瘍剤との併用により開始してください。キャンマブと併用する抗悪性腫瘍剤は、臨床成績の内容を熟知した上で選択してください。
2) 併用する悪性腫瘍剤の添付文書を熟読してください。
・キャンマブを使用する場合に、何らかの理由により予定された使用が遅れた際には、以下のとおり使用することが望ましいとされています。
1) 使用予定日より1週間以内の遅れで使用する際は、A法では2mg/kgを、B法では6mg/kgを使用します。
2)
使用予定日より1週間を超えた後に使用する際は、改めて初回使用量(A法では4mg/kg、B法では8mg/kg)で使用を行ないます。なお、次回以降はA法では2mg/kgを1週間間隔で、B法では6mg/kgを3週間間隔で使用します。
・キャンマブの使用時には、添付の日局注射用水(注射用60:3.0mLの濃度とした後、必要量を注射筒で抜き取り、直ちに日局生理食塩液250mLに希釈し、点滴静注します。
【適用上の注意】
・調製時
1) キャンマブの調製時には、下記の換算式により使用に必要な抜き取り量を産出してください。
≪体重あたりの換算式≫
A法:
初回 抜き取り量(mL)=体重(kg)×4(mg/kg)/21(mg/mL)
2回目以降 抜き取り量(mL)=体重(kg)×2(mg/kg)/21(mg/mL)
B法:
初回 抜き取り量(mL)=体重(kg)×8(mg/kg)/21(mg/mL)
2回目以降 抜き取り量(mL)=体重(kg)×6(mg/kg)/21(mg/mL)
2) 調製時には、日局注射用水、日局生理食塩液以外は使用しないでください。
3) 溶解時は静かに転倒混和し、ほぼ泡が消えるまで数分間放置します: キャンマブはポリソルベートを含有しているので、泡立ちやすくなっています。
4) 用事調製し、調製後は速やかに使用してください。また、残液は廃棄してください。
・使用時
1) 多剤との混注しないでください。
2)
ブドウ糖溶液との混合を避け、キャンマブとブドウ糖溶液の同じ点滴ラインを用いた同時使用は行なわないでください: キャンマブと5%ブドウ糖溶液を混合した場合、たんぱく凝集が起こります。
3) 点滴静注のみとし、静脈内大量使用、急速静注をしないでください。
【高齢者】
・高齢者では生理機能が低下しているので、特に心機能、肝・腎機能検査、血液検査を行なうなど状態を観察しながら慎重に使用してください。
【妊婦、産婦、授乳婦など】
・妊婦または妊娠している可能性のある人は、キャンマブ使用により胎児に影響をおよぼす可能性があることを充分理解し、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ使用してください。妊娠する可能性のある人は、キャンマブ使用中、適切な避妊法を用いるようにしてください。また、キャンマブ使用終了後も最低7ヵ月間は避妊するようにしてください: トラスツズマブを使用した妊婦に羊水過少が起きたとの報告があります。また、羊水過少を発現した症例で、胎児・新生児の腎不全、胎児発育遅延、新生児呼吸窮迫症候群、胎児の肺形成不全などが認められ死亡に至った例も報告されています。
・授乳婦が使用する場合は、授乳を避けてください。
【小児など】
・低出生体重児、新生児、乳児、用事または小児に対する安全性は確立していません。