ダーベル・ロルカセリン10mgは、BMI(肥満度指数)が30kg/㎡以上の成人の肥満の人、または高血圧症、2型糖尿病、脂質異常症など、少なくとも1つ以上の体重関連の合併症を持つBMIが27kg/㎡以上の成人の体重管理を目的とした、食事療法と運動療法による体重管理の補助療法に使用される薬です。神経系に作用して食欲を抑制し、体重減少効果をもたらすと考えられています。
体脂肪は、皮膚の下に溜まる皮下脂肪や内臓の周囲につく内臓脂肪などをはじめとする体内にある脂肪のことで、内臓を正常な位置に保ち、保護するほか、体温保持、エネルギーの貯蔵など、生命活動に欠かせない重要な働きをする大切な物質です。肥満は、この体脂肪が遺伝的な原因や環境的要因などにより過剰に蓄積した状態のことで、耐糖能障害、脂質異常、高血圧、冠動脈疾患、脳梗塞など、多くの疾患の原因になると考えられています。
この肥満を導く要因のひとつに、食欲の問題によるカロリーの摂取量と消費量のバランスの悪さが挙げられます。通常、食欲は脂肪細胞から放出されるレプチンと呼ばれるホルモンが脳の摂食中枢に作用してコントロールされますが、肥満の人ではこのレプチンの働きが弱くなり、食欲が抑えられなくなることが知られています。これには脳内報酬系という快感を生む脳の神経回路が関係しています。脳内報酬系は、人や動物の脳において欲求が満たされたとき、あるいは満たされることが分かったときに活性化して快感の感覚を与える神経系です。
このメカニズムに働きかけて食欲を抑制することで食べ過ぎを抑え、肥満を改善する薬がダーベル・ロルカセリン10mgです。脳内にはセロトニンと呼ばれる神経伝達物質があり、数種類存在する受容体と結合することでさまざまな機能を発揮していますが、このうちセロトニン5-HT 2C
受容体は睡眠や鎮静、母性行動などのほか、食欲の抑制にも関与していることが知られています。ダーベル・ロルカセリン10mgの有効成分であるロルカセリンは、この5-HT2C受容体に結合してその情報を細胞の内部に伝達する働きを持つセロトニン2C受容体アゴニストと呼ばれる物質で、より多く5-HT 2C受容体にアプローチすることで、食べたいという欲求を自然と低減させ、体重減少へと導きます。
セロトニン受容体に働きかける食欲抑制剤はダーベル・ロルカセリン10mg以外にも市場に出回っていますが、例えばフェンフルラミンは受容体選択性が低いことに加え、5-HT 2A受容体を介した幻覚や5-HT2B
受容体を介した肺高血圧・心臓弁膜症の発症などが認められたために販売が中止されたという経緯があるなど、その副作用が懸念されています。ところがロルカセリンは5-HT 2C受容体選択性が強く、また副作用の発現が少ないという特徴があるため、より安全で効果的な摂食抑制や飽食作用が期待されています。
このほか、ロルカセリンが持つ満腹感や薬物報酬回路への作用は、喫煙欲求の低下への応用が検討されています。実際に行なわれた臨床試験の結果によると、禁煙開始2週間前から肥満症治療と同量の10mg1日2回を服用した場合では、3ヵ月後の4週間禁煙率が偽薬服用者の5.6%と比較して約3倍の15.3%、また禁煙成功者の3ヵ月後の体重変化を見ると、偽薬に比べて1kg以上減っていたとの結果が出ています。この結果に基づき、禁煙後に頻繁にみられる体重増加を抑えながら、無理のない禁煙へと導くのに有効な薬として、引き続き研究が続けられています。
なおダーベル・ロルカセリンは、定められた用量以上は絶対に服用しないでください。
※ダーベル・ロルカセリンはLDC(後発開発途上国)向け商品です。