チェリオ・ジェルは、歯を強くし、虫歯になりにくくする成分であるフッ素(モノフルオロリン酸ナトリウム)を含む、子ども用の歯磨きジェルです。
人間の歯は、その外側からエナメル質、象牙質、セメント質などの層で成り立っており、中でもエナメル質は身体の中でもいちばん硬い組織で、その硬さは水晶に近いと言われています。これらの層が細菌の働きにより溶かされた状態が虫歯で、①虫歯になりやすい歯の質、歯並び、②虫歯菌、③糖質、④プラーク(歯垢)の付着時間、の4つの条件がそろった場合にかかりやすくなります。
歯垢は口の中で繁殖した菌が、水に溶けにくい粘着質な物質とともに歯に付着してできた細菌の塊(バイオフィルム)で、虫歯の原因となるレンサ球菌、乳酸桿菌、放線菌などが主に生息しています。中でもレンサ球菌であるミュータンス菌は、糖が口内に入ると活発に活動して歯垢を形成するとともに歯垢の中で酸を産生し、この酸が歯を溶かすことで虫歯になります。また歯垢はそのままにしておくと、唾液中のカルシウムやリンと結びついて石灰化して歯石となり、歯周病や歯肉の病気の原因にもなります。このミュータンス菌は生まれたばかりの子どもには存在せず、生後10-31ヵ月後くらいの間に主に母親を介して感染し、そのまま棲み続けます。そのためミュータンス菌を多く持つ母親から感染した子どもの場合、そうでない子と比較して虫歯になりやすいという報告もあります。
酸によって穴のあいた歯は自然治癒することはなく、治療せずに放置すると症状はますます悪化していきます。しかし、歯垢から出る酸によって歯のミネラルが溶け出し、エナメル質の内側が表面よりわずかに密度が低くなった歯に穴が開く一歩手前の初期段階においては、再石灰化により正常に回復する可能性があります。その手助けをするのが、フッ素入り歯磨きジェルのチェリオ・ジェルです。
フッ素は、虫歯の原因菌の働きを弱めて酸の産生を抑制する働きがあるだけでなく、歯から溶けだしたカルシウムやリンを再沈着させる再石灰化の作用もあるほか、コーティング作用により歯質を強化し、虫歯になりにくくします。
ひと口にフッ素と言っても、一般に歯磨き粉に使用されるフッ素にはフッ化ナトリウムとモノフルオロリン酸ナトリウムがあります。フッ化ナトリウムはブラッシング中に溶解して最適濃度のフッ素イオンを放出し、直接歯に作用します。また歯の強化作用もモノフルオロリン酸ナトリウムより強いとされています。
一方、チェリオ・ジェルの有効成分でもあるモロフルオロリン酸ナトリウムは、初めに少しのフッ素イオンを放出し、その後約1時間以内に口内のリン酸酵素で分解されてフッ素イオンを放出するため即効性はありません。しかしながら、モノフルオロリン酸ナトリウムは歯の奥深くまで浸透する効果があるため、健全な歯に対する虫歯予防目的ではフッ化ナトリウムを、虫歯がある場合や虫歯を治療したばかりの歯などにはモノフルオロリン酸ナトリウムが配合されている歯磨き粉を使うのが効果的だと言われています。
フッ素を歯に効果的に取り込ませるには、フッ素入り歯磨き粉を1g以上つけて2分間ブラッシングするのがポイントです。その際、歯の溝や歯と歯の間などに毛先が入るように磨くとフッ素が隅々まで届き、虫歯予防効果が高まります。磨き始めは、口の中のフッ素濃度が高いので、虫歯になりやすい奥歯の溝などから始めるのがよいでしょう。途中、唾液などでフッ素濃度が薄まってきたら、途中でつけ足すと効果的です。また片側の歯を磨く際にそれぞれハミガキをつけると、フッ素をより効率よく歯に取り込ませることができるでしょう。ただし、この場合は1回分の歯磨き粉を半分ずつ使ってください。
なおフッ素は口をすすぎ過ぎると溶け出してしまうため、歯磨き後は10-15mlの水で1回うがいをし、その後1-2時間は飲食を控えるのがいいでしょう。特に就寝前の使用が効果的です。
フッ素には中毒性があり、特に子どもの場合は歯磨きの際に誤って歯磨き粉を飲み込んでしまうことによるフッ素中毒が懸念されています。幼児がひとりで磨く場合のフッ化物配合歯磨き粉使用後の口腔内フッ化物残留量(率)は、3-5歳児の調査では0.06mg(15.3%)、3-6歳児では0.04mg(23.7%)であり、1日に3回使用したとしても0.12-0.18mgであるため、人体に対して有害な影響はないと言われていますが、小さい子供の場合はうまくすすげずに飲んでしまう可能性があるので充分に注意してください。万が一フッ素を大量に摂取してしまった場合は、牛乳を飲むことで無毒化されます。これは体内でフッ素とカルシウムが結合してフッ化カルシウムになるためです。
フッ素はどれだけ体内に摂取しても100%安全と言える成分ではありませんが、正しく使う分には全く問題ありませんし、歯の健全を維持してくれるのに非常に有効な成分です。