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2009-09-24
ソース(記事原文):サイエンスデイリー
パーキンソン病進行を遅らせる可能性のある薬
著者:ラダ・チタレ
2009年9月24日
44歳のクリス・ウッズ氏はニューハンプシャー州メリマックに住んでいる。彼が右半身に違和感を最初に覚えたのは、2005年9月にニューオーリンズに1ヶ月間滞在していた時のことである。彼は、カトリーナ台風の被害を受けた地域でボランティア活動を行っていた。
「右腕と右手に強張った感じと、右足に痛みと尖ったものを充てられているような感覚があった」とウッズ氏は当時を振り返る。「急速に症状が悪化した」
数ヶ月間に及ぶ診断を経て医師は始め、ルーゲーリック症、多発性硬化症、そして脳腫瘍の疑いを持ったのだが、その後に行われた文字を書くテストによりウッズ氏は本当の病名を知ることとなる。
「右手で文字を書く時に、右足が震えるんだ」とウッズ氏は語った。
担当の神経科医は、初期のパーキンソン病であると診断を下した。ウッズ氏が41歳の時である。パーキンソン病とは、時間の経過と共に症状が悪化する慢性的な神経病であり、小刻みな震え、筋肉のこわばり、そして平衡感覚や身体のコントロールの狂いなどを伴う。アメリカ合衆国内には、150万人のパーキンソン病患者がいる。
「自分の体に何が起こってるのか、自分でも大体理解してたと思う。でも、まさかパーキンソン病だとは思わなかった。体に起こった異変はその予兆だったんだ」とウッズ氏は述べた。
ラサギリンに関する研究により、パーキンソン病の新しい治療法が見つかるかもしれない。
パーキンソン病の進行を遅らせる方法は幾つかあるが、パーキンソン病の根本的な治療法には結びつかない。現在、厳格な監督の下、パーキンソン病患者に対し行われたラサギリン(アジレクト)の臨床試験の最終報告は、ラサギリンにはパーキンソン病進行を遅らせる効果がある可能性を示している、とその研究チームのリーダーは述べているが、それに対し懐疑的な目を向ける専門家もいる。
「この研究は、過去10年間に行われたものの中で、パーキンソン病患者にとっては最も意義のある研究である」とマウントサイナイ医学校神経内科学部教授であり今回の研究結果を精査するにあたって中心的な役割を果たしたC.ウォーレン・オラノー博士は述べた。「パーキンソン病の病根に直接作用する医薬品を初めて発見したのである。この薬は、パーキンソン病の進行を遅らせるものだ」
ADAGIO(1日1度ラサギリンを服用して病気の進行を遅らせる)と銘打たれた18ヶ月間に及ぶ研究では、初期のパーキンソン病を患い、それまでにパーキンソン病治療を受けたことのない1,176人の患者が無作為に2つのグループに分けられた。1つのグループは、グループ分けされた後すぐにラサギリンを処方され、もう1つのグループはそれから9か月後にラサギリンを処方された。
ラサギリン1ミリグラムを服用した患者に、病状の進行に遅れがみられた
9か月遅れてラサギリン1ミリグラムを毎日服用するよう指示されたグループの患者の障害の度合いは、研究開始直後にラサギリン1ミリグラムを服用したグループの患者と比較して大きかった、との研究報告が、昨日刊行されたニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシンに掲載された。
今回の研究費用は、ラサギリンを製薬するテバ・ファーマシューティクル・インダストリーズが拠出した。
仮にラサギリンが、パーキンソン病の症状の緩和薬にすぎないのであれば、その2つのグループの障害の度合いは同じであるはずである、とオラノ―氏は述べた。しかし、ラサギリンを早く服用し始めたグループの障害の度合いが極めて低かったということは、ラサギリンにより病気の進行速度に変化が起こり、進行が阻害された可能性もある。
「ラサギリンが病気の進行を遅らせているのであれば、神経障害は残るはずである。そしてまさにその通りであった」とテバの相談役でもあるオラノ―氏は述べた。
ウッズ氏は、ADAGIOに参加した。彼は、ラサギリンを服用したところパーキンソン病の症状の全般的な改善がみられた。そして、現在の良好な健康状態は、適切な医薬品の処方、運動、そして前向きな姿勢によるものである、と述べた。
「病気が全く進んでいないとは言えない」とウッズ氏は言う。その右手には、未だにこわばりが残っている。「良くはなっていないけど、すごく悪くもなっていない」
曖昧な研究結果に警鈴を鳴らす人もいる
しかし今回の研究結果を精査した人々は、ラサギリン2ミリグラムを投与したところパーキンソン病の根本的な改善がみられなかったことから、この研究結果は曖昧であると警鈴を鳴らした。
オラノー氏は、ラサギリン1日2ミリグラムの服用は、パーキンソン病の症状を抑えるのにとても効果的であったため、病状の進行を遅らせた事実は注目されなかった可能性があることを示唆した。
「今回の研究結果は不確実性があるものであるが、しかし、興味深い」とロチェスター大学メディカルセンターの神経内科とコミュニティー並びに予防医学教授兼ADAGIO研究のコンサルタント兼マイケルJ・フォックスパーキンソン病ファウンデーションの医療専門家であるカール・キールブルツ博士は述べた。「その作用機序は未だ不明であるが、パーキンソン病の進行を遅らせる作用があることを示す根拠があるかと尋ねられたら、その答えは、少なくとも1ミリグラムを投与した場合において、イエスだ」
しかし、この研究結果に賛同しない研究者もいる。
ADAGIO研究結果に賛同しない研究者
ミネソタ州ロチェスター市にあるメイヨ―・クリニックに勤める神経内科医J.エリック・アールスコグ博士は、「今回の研究結果は、ラサギリンにはパーキンソン病の進行を遅らせる作用があることを示す明確な証拠を示しているとのことだが、私は、そうは思わない」と述べた。
メリーランド大学神経内科学科長であり、この研究結果を精査する任に当たったウィリアム・ワイナ―博士は、ラサギリンにパーキンソン病の根本的な治療効果がある可能性があると強調するニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシンに掲載された研究結果報告には賛同しない、と述べた。
「私は、ラサギリンの効果を神経保護の観点からあれほど強調する事には賛成しなかっただろう。この研究結果は、統計学的にみると非常に重要なものだが、臨床的な意義は無いと断言できる」
しかし、パーキンソン病に用いられている医薬品が神経保護効果をもたらす可能性に関する医療データは乏しいのにも関わらず、医師は以前からそのような効果をもたらす可能性があることを認識しており、その効果を期待してパーキンソン病患者に医薬品を処方してきた。
54歳のエバン・ヘンリー氏は、カリフォルニア州ニューポートビーチに住んでいる。彼が言うには、2003年にパーキンソン病と診断された際に医師が、症状を緩和する薬と病気の進行を遅らせる薬を処方したと述べている。
「2つともゲット・ゴーで手に入った」とヘンリー氏は述べた。「(私と担当医師は)進行を遅らせる可能性があるのなら、その薬を試して効果を見極めた方が、薬を試す機会をみすみす逃すよりも良いと思ったんだ」
今回の研究では、神経保護効果が実際にラサギリンにあったのか、それともラサギリンが果たした役割はパーキンソン病の症状を緩和しただけで、認知力の喪失を脳が他の部分で補ったのか、判断する事は研究者にはできなかった。
組織培養と動物モデルに関する試験では、脳細胞を保護する効果がラサギリンにあることが確認されている。しかし、同じ効果がパーキンソン病患者にあるとは限らないとオラノー氏は述べている。
ADAGIOの研究結果は、他のパーキンソン病治療薬にラサギリンの様に病気の進行を遅らせる効果があることが更なる研究で明らかになった場合に注目されるだろう。
研究結果が、治療のあり方を変えられるかもしれない
パーキンソン病の進行を遅らせられる可能性があるとの主張は、患者にとって魅力的である。
「この研究により、ラサギリンにパーキンソン病を遅らせる効果があるのか否か、はっきりと分からなかったのは残念である」とヘンリー氏は述べた。ヘンリー氏はADAGIOに参加せず、ラサギリンも未経験である。「私が受けた印象では、パーキンソン病の研究はあまり進んでいない。しかし、もしラサギリンの様な医薬品が市場に出回るようになり、しかも科学的に効果があることが証明されているのならば、それを使用しない手はない」
ラサギリンに関し懐疑的な見方があるなか、神経科医の中には、ADAGIOの結果が今後のパーキンソン病治療のあり方を変えるかもしれないと述べる人もいる。
「今回の研究結果とラサギリンの使用を考えると、パーキンソン病治療のあり方は変わるべきだと思う」とフィラデルフィア市にあるトーマス・ジェファーソン大学に勤める神経内科医ダニエル・クレメンス医師は述べた。「待つのはもう止めよう。パーキンソン病と診断したその日から、病気の進行が止まることを祈りながら治療を施すべきだ。それが、パーキンソン病患者が現在受けている治療における大きな変化である」
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