プラケニル(またはプラキニル)200mgは、もともとマラリアの治療薬として米国食品医薬品局(FDA)により1955年に認可され、アメリカやイギリスで使用されています。
現在ではマラリアの治療だけでなく主に関節リウマチ、全身性エリテマトーデス(SLE)、円板状エリテマトーデス(DLE)の症状へも有用な事が分かっており、それらの治療薬としても使用されています。
**マラリア**
マラリアは、熱帯から亜熱帯に広く分布する原虫感染症です。
マラリア原虫は、ハマダラカと言う名前の蚊を宿主として有性生殖によって増殖し、ハマダラカの唾液腺に集まります。
このマラリア原虫の宿主になったハマダラカに吸血される際に、蚊の唾液と一緒に大量のマラリア原虫がヒトを含む動物の体内に流れ込む事で感染します。
マラリア原虫は血液を経由し、肝細胞の中で成熟増殖した後細胞を破壊して赤血球に侵入します。
その症状は、高熱や頭痛を伴い、悪性の場合は意識障害や腎不全を引き起こし死亡する場合もあります。
**関節リウマチ**
関節リウマチは、自己免疫が主に手足の関節を侵すことで、関節痛や関節の変形が生じる炎症性自己疾患で、初期には「朝のこわばり」と呼ばれる手を握る動作が困難になる硬直状態があらわれます。
このこわばりの度合いは日によって異なり、軽い場合は数分で治まる場合もありますが、ひどい場合は何も握る事ができないほどのこわばりが長時間続くため、日常生活に支障をきたします。
また、症状が進行するとそのうちに関節痛が起こるようになり、手の指の関節(特に近位指節間関節)や足の指の関節が侵され徐々に手首・肘・膝など体の中心に近い大きな関節の痛みを感じるようになります。
関節痛がある時、その箇所を動かす動作で更に強い痛みを感じるため、自然とその関節を動かさない様になり、しいては全身倦怠感や易疲労感を伴うようになります。
関節痛が進行すると、関節そのものが変形して関節にある滑膜細胞が増殖します。
さらに軟骨が破壊され、骨にはびらんが生じ、最終的には関節構造自体が破壊され機能しなくなるため骨と骨が直接接した強直という状態に至ります。
炎症自体も治まり痛みを感じなくなり、スワネック変形あるいはボタン穴変形と呼ばれる典型的な関節リウマチの変形をきたします。
その他、強直より頻度は低いとされていますが、関節が破壊されてしまった部位がぶらりぶらりとした状態になることもありますが、これはムチランス破壊と呼ばれています。
また、その他の部位には、眼(シェーグレン症候群)・呼吸器(間質性肺炎、睡眠時無呼吸症候群、リウマチ結節など)・心臓(心臓炎など)・消化管(AAアミロイドーシスなど)、腎臓・皮膚・血液(フェルティ症候群など)に、様々な疾患や合併症を起こす場合もあり全身臓器に障害が及びます。
関節リウマチには女性の有病者が多いと言われています。
**全身性エリテマトーデス(SLE)、円板状エリテマトーデス(DLE)**
全身性エリテマトーデスは、関節・腎臓・粘膜・血管壁に起こる慢性の炎症性結合組織疾患で、
原因不明の病気です。
免疫異常によって、免疫が自身の体を攻撃してしまう膠原病の一つで、厚生省の特性疾患・難病に指定されています。
稀に、ある種の心臓疾患治療薬や結核治療薬を使用した際に、薬剤誘発性・全身性エリテマトーデスを発症する事がありますが、薬剤を中止すれば徐々に消失します。
その症状として特徴的なのは蝶形紅班と呼ばれる頬から鼻にかけてかかる丘疹状の紅斑を始め、口内炎、発熱、易疲労感、内臓疾患など多岐にわたる症状を現します。
また、合併疾患を併発する事も多くあり、一般的に膠原病・抗リン脂質抗体症候群・シェーグレン症候群・皮膚筋炎・多発性筋炎・全身性強皮症などを引き起こしやすい傾向があります。
一方、円板状エリテマトーデス(DLE)は、皮膚のみに隆起した円形の皮疹が病変として現れ、鱗状に角質上皮がはがれたり、病変部位が瘢痕化したり、脱毛を生じます。
一般的には軽症ですが、患者全体の約10%は全身性エリテマトーデスの症状を呈し、関節・腎臓・脳に及びます。
プラケニル(またはプラキニル)200mgの有効成分・ヒドロキシクロロキンはマラリアにおいては特効薬とされているリン酸クロロキンと同様、赤血球内で増殖している三日熱マラリア原虫及び四日熱マラリア原虫や、ハマダラカ体内で有性増殖する生殖細胞以外の熱帯熱マラリア原虫に効力を発揮すると言われている抗マラリア薬です。
ヒドロキシクロロキンは赤血球を出たマラリア原虫に対する効力はないため、三日熱マラリアや四日熱マラリアの再発を抑える作用はなく、感染予防としての効力もないとされています。
しかし、三日熱マラリアや四日熱マラリアにおいては急激な高熱症状を鎮静させたり、症状が再発する周期性を延長させる作用に優れているため、病状の抑制に非常に効果があるとされています。
また、熱帯性マラリアにおいては、耐性のあるもの以外においては、急激な高熱症状の発症を抑え、感染を完治する効果があると言われています。
また炎症を起こしている関節における免疫機能の過剰な働きを抑制する作用が認められることから、DMARDs(Disease-Modifying Anti-Rheumatic Drugs)と称される抗リウマチ薬にも属するとされています。
この作用により病状の進行が遅らせられることになり、また関節における炎症を抑え、それに伴う腫れや痛みを緩和するとされています。
しかし、関節リウマチによって生じた関節部の損傷を元に戻す作用はありません。
一般にヒドロキシクロロキンのようなDNARDsは非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)では充分な効果が認められない場合に処方されます。NSAIDsのような即効性はなく、効果が現われるまではしばらく時間が必要とされています。
さらに、このような免疫機能を過剰に抑える作用から全身性エリテマトーデスにも効果があるとされ、円板状エリテマトーデスや日光に当たることによって発症、増悪する皮膚疾患にも効力があるとされています。