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2011-11-09

ソース(記事原文):アイリッシュ・メディカルタイムズ

慢性腎疾患 ― 心血管系有害事象への対処が必要

アイリッシュ・メディカルタイムズ(2011年11月9日)― ゲアリー・カリトン(Gary Culliton)著

腎臓指導医ジョージ・メロッテ(George Mellotte)教授は、慢性腎臓病患者に対する適切な一次医療での管理が、全体的な心血管リスクを低下させ、腎不全への進行を遅らせる可能性のあることを最近のダブリン学会で伝えた、とゲアリー・カリトンが報じている。

慢性腎臓病は発生頻度が高い病気であるが、無症候性という特徴から多くの患者において気づかれないことが多い。慢性腎臓病には心血管系有害事象との強い関連がみられる。軽度から中等度の慢性腎臓病患者の大多数は、透析を必要とせず、一次医療で管理できる。一般医による慢性腎臓病患者の適切な管理が、包括的な心血管リスクを減少させ、腎不全への進行を遅らせると考えられる。

慢性腎臓病と、その他の疾患との間には極めて密接な相関がある。既知のリスク因子が認められる55歳を超える全患者は腎臓病の検診を受けるべきである、とセント・ジェイムス病院(St James's Hospital)とタラト病院(Tallaght Hospital)の腎臓指導医ジョージ・メロッテ教授は、最近ダブリンで開催されたイギリス医師会誌(BMJ)教育講義で話した。同氏は、腎機能低下を背景とした心血管リスクの評価と、臨床目標について語った。

メロッテ氏は血清クレアチニン値がすべてではないとしている。血清クレアチニンで問題となるのは、年齢と性別に左右されることである。体重と身長が影響を及ぼす因子であり、人種も同様である。血清クレアチニンとは、筋肉の代謝副産物であり、筋肉量に基づくものである。

筋肉が多い人ほど、クレアチニンの産生量も多くなる。より適切な腎機能の測定法に推定糸球体濾過率(eGFR)がある。eGFRは役立つ測定法であるとともに、診療中に血清クレアチニン・年齢・性別・人種を用いて簡単に算出できる。eGFRの低下は、心血管罹患率・死亡率の有力な指標であり、心血管疾患のリスク因子としてみなされるべきものである。まさに高血圧、コレステロール値、糖代謝のようなものに値する。

eGFR は正常な腎機能の割合として解釈されるもので、例えばeGFRが50mL/分/1.73m2の場合は、正常な腎クリアランス(腎臓の排泄能の指標)の50%にほぼ相当する。大きな利点は、ほとんどの場合で自動的かつ精密に測定できるような技術が現在開発されていることである。

メロッテ氏は「腎機能の低下に気づきやすくなる」としている。eGFR値は合併症の重症度と相関している。

eGFRの算出には2通りの方式があるが、「最適」な方式はMDRD(腎臓病における食事の見直し)試験から得られた。血清クレアチニンはGFR(糸球体濾過率)との相関がみられ、これを標準診療に応用している。体が非常に小さかったり、非常に大きかったりする患者では不正確になるので、調整を必要とする。

年齢、糖尿病、高血圧、家族歴が、人にリスクを与える要因である。体重の0.5%にあたる腎臓は、心拍出量の20%がかかる。血液供給にダメージがあれば、腎臓は機能不全となる。GFR(糸球体濾過率)とクレアチニン値は、どの患者が腎障害や心臓障害を有するのかを判断する手段となる。これらは血管損傷の指標になる。タンパク尿は、心臓・腎臓への損傷と、冠動脈疾患に関連している。

慢性腎臓病の病期

慢性腎臓病の病期(ステージ)は、重症度を示す1つの方法である。慢性腎臓病は5つのステージに分類される。ステージ1は、GFRが正常(90mL/分/1.73m2以上)であり、かつ持続性アルブミン尿か、もしくは既知の構造的または遺伝的な腎臓病を有することを特徴とする。ステージ2は、GFRが60~89mL/分/1.73m2であり、かつ持続性アルブミン尿か、もしくは既知の構造的または遺伝的な腎臓病を有することとする。GFRが60mL/分/1.73m2を上回り、持続性アルブミン尿や、既知の構造的・遺伝的な腎臓病が認められない患者は、腎臓病ではなく、調査の必要はない。

ステージ3は、GFRが30~59mL/分/1.73m2の場合とする。ステージ4はGFRが15~29 mL/分/1.73m2 の場合とし、ステージ5はGFRが15mL/分/1.73m2未満とする。英国のガイドラインでは、検診や紹介のため、ステージ3A(GFR45~59)と、ステージ3B(GFR30~44)を区別している。現在、検査結果にこれを反映することもある。

25歳以降、腎機能は毎年平均0.5~1mL/分/1.73m2低下する。ほとんどの人で腎臓のピークは20代半ばと30代の頃である。60歳になる頃には、GFRが平均75~80になる。70歳になる頃には、GFRは60~69になる。75歳の患者が、毎年0.5~1mL/分/1.73m2ずつの減少を伴い、かつGFRが55である場合には、95歳になったときのGFRが妥当なものとなる見込みがあると考えられる。35歳でGFRが55mL/分/1.73m2ならば問題である、とメロッテ氏は述べている。

慢性腎臓病と臨床上定義されるeGFR値は、60mL/分/1.73m2である。異常な所見は2つ必要とされる。ガイドラインでは現在、24時間蓄尿に相当するタンパク-クレアチニン比(尿タンパクの尿クレアチニンに対する比、PCR)も支持している。朝の検体を使用し、タンパク質/クレアチニン比が45mg/mmoLを超えると、タンパク尿と定義される。

アイルランド西部におけるリアム・グリン(Liam Glynn)らによる試験(IMJ 2002)では、大部分の慢性腎臓病は一般診療では気づかれないことが明らかにされた。慢性腎臓病患者の大多数は、最終的に透析に行き着く患者が少ししかいないため、専門医療センターには行かずじまいとなる。

クレアチニン・クリアランスが1mL/分減少するごとに、死亡率に1%の上昇が認められた(参考文献:McAlister FA et al, Circulation 2004)。eGFRの減少と、死亡リスク・ 心血管イベント・入院との間に、非依存性の段階的関連性が認められた(Alan S. Go et al, NEJM 2004)。このリスクは指数関数的に増加する。このことは臨床上・公衆衛生上の慢性腎不全の重要性をはっきり示している。

心血管系の蔓延により死亡するリスクを避けるために何かを行う必要がある、とメロッテ氏は話した。腎機能を維持することは、極めて重要である。

高血圧を未治療のままにしておくと、寿命を5年縮めることになる。腎臓病患者の血圧が140/90であると、1年につきGFRが6~8%減少することに関連する。血圧を130/80以下まで下げると、GFRの減少が年2%になる。

診療ガイドライン

8月に発行された成人における原発性高血圧の臨床管理に関するNICE(英国立医療技術評価機構)ガイドラインでは、全ての高血圧の人に対し、尿中タンパク質の有無を検査すべきであると推奨している。メロッテ氏は、高血圧は一連の連鎖を引き起こすものであるという。AASK試験(NEJM誌年2010月9号)では、非常に集中的なコントロールを行っても、タンパク尿の無い人では、同じ効果が得られないと結論づけた。新NICEガイドラインでは、第一段階として、55歳未満の人に対し、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬または安価なアンジオテンシンII受容体遮断薬(ARB)による降圧療法を提供するよう示唆している。ACE阻害薬を処方したが忍容性がない場合(例えば咳が生じるなど)、ARBを提供すべきである。

これらの患者では、高血圧の治療として、ACE阻害薬にARBを併用すべきではない。NICEによれば、第1段階として、55歳を超える人、ならびに年齢にかかわらずアフリカ系またはカリブ系の黒人に、カルシウム拮抗薬(CCB)による降圧治療を提供すべきであるという。例えば浮腫または不耐が原因で、もしくは心不全の所見あるいは心不全の高リスクのせいで、CCBが適さない場合は、チアジド様利尿薬を提供すべきである。3剤での治療が必要であれば、ACE阻害薬またはアンジオテンシンII受容体遮断薬と、カルシウム拮抗薬およびチアジド様利尿薬との併用(A+C+D)を用いること。

メロッテ氏は、GFR45未満の患者におけるサイアザイド系利尿薬の使用について問題提起している。サイアザイド系利尿薬は、重篤な腎機能障害の人には有効ではない。抵抗性高血圧の治療には、A+C+Dのほか、低用量のスピロノラクトン(血中カリウム濃度が4.5mmol/L未満の場合)またはα遮断薬、もしくはβ遮断薬などもある。腎臓病患者にスピロノラクトンを用いる問題点は、重篤な高カリウム血症が生じることであり、カリウムを注意して観察する必要がある。

塩分の過剰

治療抵抗性高血圧における最大の問題はおそらく塩分の過剰である。アルコールの過剰摂取は、もう1つの主要な問題である。腎臓病患者におけるNSAID(非ステロイド性抗炎症薬)は、ACEおよびARBの影響を無効にしてしまう。

高血圧の二次的な原因には、腎動脈狭窄と原発性高アルドステロン症などがある。GFR減少と死亡率との間には関連性がある。目標はタンパク尿を60%減少させること、もしくはクレアチニン1ミリモル(mmol)あたりのタンパク質を50mg未満にすることである。目的は心血管疾患を防ぐことにある。ほとんどの腎臓病患者では、特にタンパク尿がある場合、LDL(低密度リポタンパク質)と高トリグリセリド(中性脂肪)が上昇している。多くの腎臓病・透析患者には、典型的な心血管系の原因による死亡がみられない。多くは突然死である(透析中の4人に1人)。

SHARP試験

コリン(Colin Baigent)教授らによる心臓・腎臓保護試験(SHARP:Study of Heart and Renal Protection[2011年Lancet誌])では、脂質低下療法を支持する証拠が存在する。この無作為化プラセボ対照試験は、慢性腎臓病患者に対するシンバスタチンとシンバスタチンの併用がLDLコレステロール低下に及ぼす影響について検討したものである。

その結果、この併用を使用した場合、プラセボとの比較で、重大なアテローム硬化の発現が17%減少することが示された。新ガイドラインは今回それを反映している。

その他にもリスク因子はある。ほぼ全ての重篤な腎臓病患者は、ビタミンDが欠乏している。ビタミンDの低値は、心血管リスクの増加に関連している。貧血はリスク因子の1つだが、過度に治療しても問題が生じる。

要約すれば、リスク因子に注目するとともに、治療歴を検討することが重要である。糖尿病と高血圧のある55歳を超える人は、3人に1人の確率で重大な腎臓病になる。タンパク尿の尿検査が重要となる。血清クレアチニンおよびeGFRを測定する必要がある。患者が高血圧を有する「リスクのある」グループに属する場合、1年~2年ごとに再評価を行うべきである。

透析中の人は、余命が80%短縮する。大半の慢性腎臓病患者は、積極的な降圧治療を受けるべきであり、これは腎臓病の進行を遅らせるとともに予後を改善させるためである。


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