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2015-11-10
ソース(記事原文):Medical News Today
1治療単位の抗生物質は消化管内微生物を1年間低下させる
【Medical News Today】(2015年11月10日) ― mBio誌で発表された研究によると、1治療単位の抗生物質治療は、消化管内に存在する微生物の正常な生成を最大で1年間中断させるほど強力であり、抗生物質耐性を起こす可能性があるようだ。
70年もの間、抗生物質として知られている抗菌製剤は感染病と見事に闘い続けており、世界中の疾病率と死亡率を飛躍的に減少させている。
しかしながらその大規模な使用は、本来は殺傷すべきはずの感染性微生物に順応性をもたらし、薬の効果が減少している。
またアメリカでは、抗生物質耐性菌が少なくとも年間200万件の疾病と2万3000件の死亡の原因となっている。
その結果、疾病対策センター(CDC)は薬剤耐性脅威トップ18をアメリカに向けて概説し、重要度に応じて分類分けをした。すなわち、緊急、重篤、そして要注意である。医療関係者は抗生物質使用の制限するよう奨励し続けている。
現在の「緊急」分類は以下のとおり。
・致死性の下痢を引き起こすクロストリジウム・ディフィシレ
・主に院内感染し、ほぼ50%の割合で死に至る血流感染を引き起こすカルバペネム耐性腸内細菌科細菌(CRE)
・年間約 82 万人が感染し、淋病、性感染病を引き起こす淋菌
オランダのアムステルダムにあるアカデミック歯科センターの口腔微生物生態学の准教授であるエジジャ・ザウラ博士が率いた最近の研究において、異なる抗生物質を処方されたイギリスとスウェーデンの健常な成人66人を調査した。
被験者は4種類の抗生物質、すなわちシプロフロキサシン、クリンダマイシン、アモキシシリン、ミノサイクリンのうち1種類を治療単位分、もしくは偽薬を無作為に処方された。
研究開始時、抗生物質を使用した直後および研究終了後1、2、4、そして12ヵ月目に被験者から便と唾液のサンプルを採取した。
165rRNA遺伝子アンプリコンシークエンシングと呼ばれる実験技術を用い、389の便サンプル、そして391の唾液サンプルに細菌の存在を確認した。
ほかの実験技術、すなわちメタゲノミクス・ショットガンシークエンシングは抗生物質の使用前後の最大の相違を明らかにし、研究者たちに抗生物質耐性の出現に関する研究を可能にした。
抗生物質は、抗生物質耐性に関連する遺伝子を強化し、曝露後に数ヵ月にわたって消化管内の微生物多様性に深刻な影響を与えることがわかった。それに反して、唾液中の微生物は早ければ数週間以内に回復の徴候を示した。
被験者の排泄物内にいた微生物は、ほとんどの抗生物質によって何ヵ月にもわたって重大な影響を受けていた。特に、消化管の炎症、がん形成、ストレスを阻害する物質である酢酸塩を生成する多数の健康関連種が減少したのを発見した。
排泄物内の微生物叢の多様性は、最大4カ月間クリンダマイシンを使用した被験者および最大12ヵ月のシプロフロキサシン使用者で著しく減少した。その一方で、口腔微生物叢の多様性は、薬剤の使用後最大1週間後までしか変化がなかった。
アモキシリンは、消化管または口腔のいずれに対しても微生物叢の多様性における顕著な効果は見られなかったが、多数の抗生物質耐性遺伝子と関連があった。
なぜ消化管よりも口腔の方が早く正常に戻るのか、その理由については研究者たちもよくわかっていないが、消化管はより長い期間抗生物質に曝露しているためと考えられる。
また、口腔は毎日異なるストレス要因にさらされているため、本質的にストレスに対してより回復力を持っていると思われる。
イギリスの被験者は、スウェーデンよりも多い抗生物質耐性で研究を開始した。これはおそらく抗生物質に対する考え方の相違によると思われる。スウェーデンは過去20年以上、抗生物質の使用が著しく減少している。
ザウラ博士はこう語っている:
「抗生物質はここぞというときにだけ使用すべきです。健康な人に1治療単位だけの抗生物質を施したとしても、耐性出現のリスクをもたらし、消化管内の微生物叢に対して長期にわたる有害な変化を引き起こします。確かに私たちは抗生物質なしに生活し、生存できないことは明らかです。しかし根拠に基づく理由がない場合など、私たちが抗生物質を使うべきではない状況があるのです」。
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