レザトリン・フォルテは血液抗繁殖体薬として作用する合剤で、熱帯性マラリア原虫によるマラリア感染の治療に使用されるほか、熱帯性マラリア原虫を含む複合性感染などにも使用されます。また、ほかの抗マラリア薬に耐性を持つマラリア感染の治療にも効果的です。
マラリアは、世界保健機関(WHO)の熱帯病特別研究訓練計画の中で「人類の中で制圧しなければならない8大熱帯病」のひとつに挙げられている疾病で、年間3-5億人が感染し、そのうち約150-270万人が死亡するとされており、熱帯から亜熱帯に広く分布する原虫感染症です。
原因となるマラリア原虫は、爬虫類、鳥類、ほ乳類だけの細胞内に寄生し、魚類や両生類には寄生しないという特性を持つ単細胞生物で、ハマダラカという種類の蚊が媒介になります。
人間に感染するマラリアには熱帯熱マラリア、三日熱マラリア、四日熱マラリア、卵型マラリアの4種類があり、数日から数週間の潜伏期間を経て増殖し、発症します。40度近い高熱を主症状とし、さらに異常な悪寒、頭痛、関節の痛み、吐き気などを伴います。一般に高熱は数時間で下がりますが、三日熱マラリアと卵型マラリアに感染した場合は48時間ごと、四日熱マラリアでは72時間ごとに発熱を繰り返します。
また熱帯熱マラリアは別名・悪性マラリアとも呼ばれ、感染した赤血球が細い血管の壁に付着して血管を詰まらせるため、脳、肺、腎臓など多くの臓器が障害を受けることがあります。急性で強い貧血を引き起こすのが特徴で、短期間のうちに意識混濁、発作、昏睡と症状が悪化し、最悪の場合は死に至ることもあります。
いずれも、原虫は長期にわたって血液中にとどまるため、例え症状が一時的に治まったとしても重症化や慢性化することもあり、また三日熱および卵型マラリアでは再発する可能性がかなり高いようです。
マラリアの治療には、従来はクロロキンやファンシダールのほか、比較的新しく開発されたアルテミシニンなどの薬剤が使用されていました。しかし現在は、クロロキンとファンシダールにおいては薬剤耐性のマラリア原虫が広くまん延しているだけでなく、両者の多剤耐性株も出現しているため、有用性が著しく低下しています。またアルテミシニンは速効性で、治療薬として注目されていましたが、完治せずに再発しやすいという問題がありました。
マラリアに感染すると赤血球の破壊が起こり、代謝産物のマラリア色素も放出されて発熱物質として作用するために高熱を発し、また造血系に影響をおよぼすと考えられています。この過程を阻害することで治療効果を発揮するのがレザトリン・フォルテです。
レザトリン・フォルテの有効成分であるアルテメーター(アルテムエーテル)とルメファントリンは、いずれもこのマラリア色素の代謝を阻害する働きを持つだけでなく、マラリア原虫における核酸合成およびたんぱく質合成を阻害します。そのためマラリアは増殖することができなくなり、やがて死滅します。
アルテメーターは、古来から漢方薬として利用されてきたヨモギ属の植物から分離された成分で、抗マラリア活性を持つアーテミシニンから作られた半合成の薬剤です。ところが薬効の持続時間がわずか数時間しかもたないという欠点があり、単剤治療の場合では7日以上の処方を必要としてきました。しかし半減期の長い薬と併用することにより、治療期間の短縮が可能になることがわかり、今までに何種類かの組み合わせが試されています。
その中のひとつが3-6日の半減期を持つルメファントリンとの組み合わせです。ルメファントリンは原虫のヘムポリメラーゼを阻害するだけでなく、再燃を予防する効果が高いと評価されている成分です。
レザトリン・フォルテはこのアルテメーターとルメファントリンを1対6の割合で配合しています。