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2011-05-22

ソース(記事原文):サイエンスデイリー

エプレレノンは心房細動を抑えることが試験により示された

サイエンスデイリー(2011年5月22日)―欧州心臓学会(European Society of Cardiology。略称:ESC)心不全部会(Heart Failure Association)主催の心不全会議2011(Heart Failure Congress 2011)で発表されたEMPHASIS-HF試験のサブ解析結果から、アルドステロン拮抗薬エプレレノン(ファイザー社のインスプラ)は、Ⅱ度の心不全患者における心房細動や心房粗動(AFF)の新規発症を有意に抑えると結論付けられた。さらに最新セッション1(Late Breaking Session 1)の中で発表された解析結果から、主要な心血管疾患を抑えるというエプレレノンの有益な効果は、試験開始時にAFFが認められた患者とそうでない患者いずれにおいても同等であったことが明らかにされた。

軽症心不全患者の入院および生存率に関するエプレレノンの研究(Eplerenone in Mild Patients Hospitalization And Survival Study in Heart Failure study。略称:EMPHASIS-HF試験)は、まず2010年の米国心臓協会学術集会(American Heart Association Meeting)で発表され、同時にニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン(New England Journal of Medicine)のオンライン版に掲載された。Ⅱ度の心不全患者を対象としたこの試験をおこなったところ、エプレレノン群はプラセボ群と比較して、心血管疾患による死亡または心不全による入院という複合的な主要評価項目が37%、心血管疾患による死亡が24%、そして心不全による入院が42%低かった。

これまでの試験で、アルドステロン阻害薬はⅢ度からⅣ度の心不全患者(RALES試験)または心筋梗塞後に左室機能障害が認められる患者(EPHESUS試験)に対し、有意な効果をもたらすことが明らかにされていた。しかし、Ⅲ度やⅣ度の患者数と比べるとはるかに大規模である軽症心不全患者(Ⅰ度からⅡ度)に対しても有益性があるのか否かについては、EMPHASIS-HF試験が行われるまで不明であった。RALES試験ではスピロノラクトンが使用され、一方EPHESUS試験ではスピロノラクトンよりも新しくて選択性の高いエプレレノンが使用された。

エプレレノンが軽症心不全患者に有効か否かを検討するためEMPHASIS-HF試験が開始された。これは、278施設からNYHA(ニューヨーク心臓協会)基準におけるⅡ度の心不全を患い、左室駆出率が35%未満の患者2737例を組み入れた試験である。患者達は、推奨治療に加えてエプレレノンを服用する群(1日1回25mg、必要に応じて1日50mgまで増量した)またはプラセボを服用する群のいずれかに無作為に割り付けられた。エプレレノン群に有意な効果が認められたことから、試験は21か月後に中止された。今回の発表では、研究者らはオリジナルデータを再解析して、ベースライン時にAFFの病歴がなかった患者のAFF新規発症について検討した。また試験は、ベースラインですでにAFFが認められた患者に対して、そうでない患者と同じようにエプレレノンが作用するかどうかについても検討するよう計画されていた。

平均2年間の追跡調査の結果から、AFFの新規発症はエプレレノン群の911例中25例(2.7%)で認められたのに対し、プラセボ群では883例中40例(4.5%)であった(ハザード比(HR) 0.58、95%信頼区間(CI) 0.35~0.96, p=0.034)。また解析結果から、心血管疾患による死亡または心不全の悪化による入院(試験の主要評価項目)のリスクは、ベースライン時にAFFが認められた患者とそうでない患者で有意差がなかったことも明らかにされた(P=0.33)。

発表者で、試験のサブ解析結果を説明したヨーテボリ大学(University of Gothenburg)(スウェーデン)のカール・スヴェドバリ氏(Karl Swedberg)は次のように述べた。「この最新の解析結果は、軽症心不全患者に対するエプレレノンの使用をより一層強く支持しています。エプレレノンが死亡率を低下させるだけでなくAF(心房細動)の発症も抑えるからです。AFは心不全患者の死亡率を高めるとともに、治療を難しくする病気です」

また2011年末にESCの各ガイドラインを改訂する際は、軽症心不全患者に対するエプレレノンの使用をそれらに盛り込むことを検討するとも述べた。

エプレレノン

エプレレノンはスピロノラクトンの「欠点を抑えた安全性の高い」バージョンと呼ばれる薬で、高血圧症への適応が認められている。また、急性心筋梗塞後の心不全に対するエプレレノンの有効性および生存率に関する研究(Eplerenone Post-AMI Heart Failure Efficacy and Survival Study。略称:EPHESUS試験)に基づき、急性心筋梗塞後早期のうっ血性心不全(CHF)患者に対し最適な薬物療法に加えて使用することが認められている。しかしながら軽症心不全患者への使用はまだ認められていない。

エプレレノンは、米国ではそのジェネリックを使用できるものの、ヨーロッパやカナダでは未だに特許期間中である。


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