クラブポッド325は、グラム陽性菌のほか大腸菌やインフルエンザ菌などのグラム陰性菌に対しても強い抗菌力を発揮する抗生物質成分に加え、体内でこの抗生物質が分解されるのを抑制する成分も配合しているため、より長時間にわたる効果が期待できる合剤です。
クラブポッド325に含まれる成分のひとつがセフポドキシムです。
セフポドキシムはセフェム系第3世代の抗生物質で、グラム陽性菌および陰性菌に対して幅広い抗菌スペクトルを持っているのが特長です。抗生物質はその作用によりいくつかに分類されており、そのうち細菌の細胞壁の合成を阻害することで細菌を抑制する働きを持つのがセフェム系です。さらに開発された年代により第1世代から第4世代に分かれています。
細菌は独立したひとつの細胞ですが、すべての細胞はたんぱく質と脂質からできた細胞膜という薄い膜で包まれており、細菌の場合はさらに外部との浸透圧からその構造や強度を保つために細胞壁という層に囲まれています。この細胞壁を形成しているのがペプチドグリカンという高分子です。
例えば細胞が2つに分裂する場合、まずあらかじめ2つ分の細胞質構成、細胞膜、細胞壁、外膜などの付属器官がつくられた後に分かれます。 しかしセフポドキシムによってペプチドグリカンの合成を阻害された細菌は複数分の細胞壁をつくることができなくなるため、分裂に伴って細胞壁が薄くなり、結果として増殖が抑制され (静菌作用)、さらに細胞と外液との浸透圧差を保つことができなくなることで細菌は死滅します(殺菌作用)。
ところが近年、薬剤の乱用が原因となり、薬剤に対して抵抗性を持つために効果が現われない、または効きにくくなる耐性を持った菌、つまり耐性菌の出現が問題となっています。
菌が耐性を獲得する過程にはいくつかありますが、そのひとつが薬剤を分解したり、その構造を化学的に変えてしまう酵素を菌が合成することによる耐性です。中でも、抗生物質でいちばん長い歴史を持つペニシリンを含むペニシリン系をはじめ、セフポドキシムが属するセフェム系など、β-ラクタム構造を持つ抗生物質に対する耐性菌は特に深刻だと言われています。
β-ラクタム系抗生物質に耐性を持つ菌は、β-ラクタマーゼというたんぱく酵素を産出し、このβ-ラクタム構造を分解することで、その効果を発揮できないようにします。β-ラクタマーゼはそのアミノ酸配列によってクラスA-Dに分類され、それぞれが異なる薬剤に対して効果を失活させる器質特異性を持っています。
このβ-ラクタマーゼの働きを阻害し、抗生物質が本来持つ作用を発揮させるように働きかけるのが、クラブポッド325のもうひとつの有効成分であるクラブラン酸カリウムです。クラブラン酸カリウムはβ-ラクタマーゼ阻害薬で、グラム陽性菌から陰性菌まで広範囲の菌種が産生するβ-ラクタマーゼの活性を阻害し、セフポドキシムが加水分解されるのを妨げることによって抗菌作用を発揮します。
クラブポッド325はβ-ラクタム系抗生物質とβ-ラクタマーゼ阻害薬を配合することで、従来のセフポドキシムだけの抗生物質と異なり、さらに広い抗菌スペクトルとより強力な殺菌作用が期待できる合剤です。
●セフポドキシムとして
・適応菌種
セフポドキシムに感性のブドウ球菌属、レンサ球菌属、肺炎球菌、淋菌、モラクセラ(ブランハメラ)・カタラーリス、大腸菌、シトロバクター属、クレブシエラ属、エンテロバクター属、プロテウス属、プロビデンシア属、インフルエンザ菌、ペプトストレプトコッカス属
・適応症
表在性皮膚感染症、深在性皮膚感染症、リンパ管・リンパ節炎、慢性膿皮症、乳腺炎、肛門周囲膿瘍、咽頭・喉頭炎、扁桃炎(扁桃周囲炎、扁桃周囲膿瘍を含む)、急性気管支炎、肺炎、慢性呼吸器病変の二次感染、ぼうこう炎、腎盂腎炎、尿道炎、バルトリン腺炎、中耳炎、副鼻腔炎、歯周組織炎、歯冠周囲炎、顎炎