ベタ・スカルプ・アプリケーション0.1%は、有効成分であるベタメタゾン吉草酸エステルの血管収縮作用、抗炎症作用により、頭皮の乾癬や脂漏性皮膚炎(脂漏性湿疹)に伴う湿疹・かゆみなどの炎症を抑制する頭皮用の副腎皮質(ステロイド)ローションです。
頭皮に発生した乾癬や脂漏性皮膚炎の共通症状として、フケ(新陳代謝によって剥がれ落ちる角質細胞)やかゆみがあり、フケのタイプは乾癬の乾性、脂漏性皮膚炎の脂性タイプに分けられます。
皮膚の組織は表皮、真皮、皮下組織という3層からできており、フケの原因は、真皮の炎症を伴った表皮細胞の過剰増殖であると言われています。通常の皮膚の生まれ変わる周期(新陳代謝)は約4週間ですが、それよりも約10倍早いサイクルの3日から4日で表皮が入れ替わり、角化した表皮細胞は次々と白いカサブタ状の皮(フケ)となり剥がれ落ちていきます。また、一方で真皮の血管が肥大して組織の炎症が進み、かゆみを伴う場合もあり、強いかゆみから頭皮を掻き、浸出液が出てかさぶたになったりしてしまいます。
乾癬の場合は、赤く盛り上がった発疹の表面にカサブタのような皮膚片(鱗屑)ができ、表皮細胞が大量にはがれ落ちます。頭部は乾癬が発症しやすいところで、最初に乾癬の症状が出るところでもあります。肘や膝に小さくても乾癬の発疹があれば、頭皮のフケも乾癬による可能性があります。原因は不明ですが、遺伝的な要因が多くの症例から示唆されています。
脂漏性皮膚炎は皮脂腺が発達している場所にできやすく、頭・おでこ、・鼻の頭・耳の後ろ・わきの下・胸・背中・陰部に起こりやすい皮膚疾患です。頭皮の場合は、乾癬と同様に頭皮の新陳代謝が速まっている上に、皮膚の表面を保護する皮脂の分泌が多くなった状態が発端となり発症します。分泌が多くなった皮脂が皮膚表面に留まると、やがて脂漏性皮膚炎・湿疹の原因になる、刺激性のある油分に分解されていきます。さらに、皮脂はカビなどと同類の真菌の一種マラセチア菌(癜風菌)のという常在菌のエサになり、マラセチア菌が皮膚の表面に定着して増殖すると、皮膚炎・湿疹の症状が悪化しやすくなります。
乾癬や脂漏性皮膚炎の炎症症状を抑制するのに、一般的に広く使用されているのが、合成副腎皮質ホルモン外用薬です。副腎皮質ホルモンとは腎臓の隣にある副腎の周囲に位置する副腎皮質でつくられるホルモンの事をいい、ホルモン剤は、このホルモンを化学的に合成した薬の総称炎症を強力に抑える効果や体内の抵抗力を高めるなどの作用があるとされています。また合成副腎皮質ホルモン剤は、リンパ球の働きを抑え炎症を抑制することができるため、自己免疫疾患に対する治療薬としても利用されています。炎症反応が発生している皮膚は、免疫反応として細胞内では酵素ホスホリパーゼA2によってアラキドン酸が生成され、さらにロイコトリエン、プロスタグランジンという痛みや炎症の原因となる物質が作り出されています。
有効成分のベタメタゾン吉草酸エステルを頭皮に塗布すると、酵素ホスホリパーゼA2の働きを妨げるリポコルチンという物質の生成を促し、免疫細胞を抑制することで、細胞から分泌されるさまざまな伝達物質の産生抑制をし、これらの働きが相乗して炎症反応の早い段階で症状を緩和するとされています。また、血管収縮作用にも優れており、高い炎症抑制を期待する事ができます。
ベタメタゾン吉草酸エステルは1963年Elks, J.氏により合成されて以来、外用ステロイド剤として現在まで広く使用されており、その抗炎症作用は、同じく副腎皮質ホルモンであるヒドロコルチゾンの約25倍、プレドニゾロンの約7倍、フルオシノロンの約3.6倍、デキサメタゾンと同などとされています。
ステロイド外用薬の強さは、強い順に1群から5群に分類され、「1群:最強(strongest)、2群:非常に強力(very strong)、3群:強力(strong)、4群:中程度(medium)、5群:弱い(weak)」と表記され、ベタメタゾン吉草酸エステルの強さは、3番目の「強力(strong)」に属します。