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2012-10-01
ソース(記事原文):サイエンス・コデックス
一般的な抗うつ薬パキシルが心不全を予防する可能性
サイエンス・コデックス(2012年10月1日)― アナーバー発 ― ミシガン大学(University of Michigan)の研究者らによれば、うつ病や不安障害を治療するのに通常用いられる薬剤が心不全の予防に役立つ可能性があるという。
ミシガン大学生命科学研究所(Life Sciences Institute)の研究教授で、ミシガン大学医学部薬理学教授のジョン・テスマー(John Tesmer)氏と、その研究室に所属する研究チームは、SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)パロキセチン(商品名パキシル)を投与することにより、心不全患者に過剰発現するGタンパク質共役受容体キナーゼ2(GRK2)、すなわちプロテインキナーゼが阻害されることを明らかにした。
Tesmer氏の研究室に所属する博士研究員クリストフ・ホーマン(Kristoff Homan)氏によれば、いわゆる「オフターゲット(非特異的)」効果は一般的に用いられる薬剤の多くで知られているが、今回の結果は同氏らが研究している特定のSSRI薬とシグナル系タンパク質ターゲット(標的)との間の直接的なつながりを特定する最初の報告であるという。
今回の論文「パロキセチンはGタンパク質共役受容体キナーゼ2の直接阻害剤となり、心筋収縮力を高める」は、ACSケミカルバイオロジー誌8月21日号に先駆けてオンライン上で発表された。
危うく発見には至らないところであった。「本当に運よく見つかったもの」とホーマン氏は述べている。
GRK2阻害剤の大規模研究を開始する前に、選別法の検査として約2,000個の低分子化合物ライブラリ(その多くはFDA承認済み)を同研究者らが調べたところ、パロキセチンがGRK2に結合して、その活性を阻害することを発見した。
正常な心拍動を制御するシステムと、心収縮の強度が弱まるにつれて、GRK2の発現が増強する。動物モデルにおいてパロキセチンは心拍数を妨げずに心収縮の強度を改善させることを同チームが発見した。
パロキセチンはFDA(米国食品医薬品局)によって認可されており、SSRI薬として30年間近く臨床で使用されてきているが、その処方量ではGRK2の阻害が不十分で心不全に対しては使用できない可能性がある。
一方、SSRI活性を抑えると同時に薬力価(効力)を高めるようなパロキセチンの化学構造改変を特定できた場合 (ホーマン氏はそれが可能だと考えている)、同チームは最適化プロセスに着手して数年以内にその薬剤を先駆的治療法へと躍進させたいと望んでいる。
情報源:ミシガン大学(University of Michigan)
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