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2013-10-01

ソース(記事原文):サイエンス・コーデックス

安価な薬剤(約3ドル未満)が心発作によるダメージを最小限に抑える可能性

サイエンス・コーデックス(2013年10月1日) ― 米国循環器病専門誌「サーキュレーション(Circulation)」10月1日号に掲載された臨床試験の結果によれば、病院搬送中の心発作患者にメトプロロールという安価なβ遮断薬を用いた早期治療を施した場合、心筋梗塞時の心臓へのダメージが有意に軽減する。本研究は、スペイン国立カルロスIII循環器研究所(CNIC)とニューヨークのマウントサイナイ医科大学アイカーン医学部(Icahn School of Medicine at Mount Sinai)の共同で実施された。

スペイン各地7ヵ所の病院と救急車が参加した本研究では、シンプルで低コストのメトプロロール治療介入戦略は、有意な臨床効果をもたらすもので、世界中に広めることが容易だと考えられ、心発作患者に対する現行の診療を変えるものとなる可能性が示された。心ブロックという状態が、心発作を引き起こし、心臓組織にダメージを与える。この心ブロックを取り除くための標準的治療として血管形成術が日常的に行われているが、現在この手術前に薬物療法は行われていない。

今回の新規共同研究の主任研究者の一人はスペインのCNIC心臓研究グループ(Experimental Cardiology Group)代表で、サンカルロス病院(Hospital Clinico San Carlos)臨床心臓医のボルハ・イバニェス(Borja Ibanez)博士であり、もう一人の主任研究者はCNICの最高責任者で、米国マウントサイナイ医療センター医長と心臓科長を務めるバレンチン・ファスター(Valentin Fuster)博士である。ファスター氏は、米国心臓病学会誌(Journal of the American College of Cardiology:JACC)の次期編集長として2014年の任期を務める予定でもある。

β遮断薬系薬剤メトプロロールは、動脈性高血圧やその他の心血管系疾患の治療薬として30年以上ものあいだ利用されてきた。研究チームは、今回の新規研究で、メトプロロールが心発作後に有用となりうるのか調べた。今回の臨床試験(METOCARD-CNIC試験)は、標準的血管形成術を受ける心発作患者を対象に、3ドル(約300円)未満のメトプロロール治療を検討した初めての試験である。

研究者らによれば、この薬物療法の介入がもたらす将来的な節約は、メトプロロール自体のコストの安さをはるかに上回るとみられる。その理由として、本剤投与後の患者は心筋の損傷範囲が狭くなり、植え込み型除細動器などの治療や、心不全の入院治療費といった高額な治療を必要とする可能性が低くなることが挙げられる。「医療費の節約は数百万ドル(約数億円)に達するとみられ、患者あたり3ドル(約300円)未満の支出額が、数年で数千ドル(約数十億円)の節約につながる」とイバニェス氏は説明している。予測される節約の確定的な推定額を出すために、現在、研究者らが費用効果分析を行っている。

急性心筋梗塞または心発作は、冠動脈のうちの1本が突発的に閉塞して起こる。閉塞は即時に内科的治療を要するものであり、レスポンスタイム(処置開始までにかかった時間)が重大な意味を持つ。動脈閉塞から分刻みで、心臓の細胞が壊死し、その壊死細胞数が急激に増えていく。研究者らによれば、梗塞サイズ(壊死病変の範囲)を狭める最善策は、可能な限り早く血管形成術を実行することにある。冠動脈の再開通が遅れると、損傷組織または壊死組織の領域が広がる可能性がある。壊死が広範囲に及ぶと、心臓はポンプ力の大部分を失うことになり、一旦失われると回復は見込めない。

心筋梗塞時には死亡リスクが高まるほか、それを乗り越えても心不全や重篤な不整脈を起こしやすくなり、発作から数ヵ月または数年後に死亡することもある。主任研究者の一人であるファスター氏は「梗塞巣(心筋の壊死)が大きいほど、将来こうした合併症を来たす確率が高まる」と述べている。同氏は、マウントサイナイ医療センターのマリ・ジョセ&ヘンリ・クラビス循環器健康センター(Marie-Josee and Henry R. Kravis Center for Cardiovascular Health)とゼナ&マイケル・ウィーナ循環器病研究所の責任者も務める。

したがって、梗塞中に損傷または壊死する組織量を減らすことが最重要課題である、とファスター氏は強調している。ここ数十年間、心臓の損傷範囲を狭める補完療法が研究されてきたが成功には至っていない。

2010年以降にスペインの4地域(マドリッド、ガリシア、レオン、カンタブリア)で合計270人の梗塞患者が試験登録された。この無作為化試験では、カテーテル処置室へ救急車で搬送中に心筋梗塞と診断された時点で、メトプロロールを静脈内投与する群と、プラセボを投与する群のいずれかに患者を割り付けた。今回のMETOCARD-CNIC試験に参加したスペインの病院は以下の通りである: マドリッドのサンカルロス病院(Hospital Clinico San Carlos)、プリンセサ病院(Hospital de La Princesa)、ドセ・デ・オクトブレ病院(Hospital 12 de Octubre)、プエルタ・デ・イエロ病院(Hospital Puerta de Hierro)、キロン病院(Hospital Quiron)、ガリシアのメイソエイロ病院(Hospital Meixoeiro)、レオンのレオン病院(Hospital de Leon)、カンタブリアのマルケス・デ・バルデシヤ病院。

この医療介入の有効性を梗塞後1週間の時点でMRIにて評価した。MRIによる心臓損傷組織の質量は全患者で測定された。その結果、メトプロロールを投与された患者の方が、プラセボを投与された患者よりも梗塞サイズがはるかに小さかったほか、より小さい梗塞サイズは、心臓の収縮力が優れていることに関連することが示された。

ファスター氏によると「MRIは、極めて精密な心機能・壊死・微小循環状態や、梗塞後の心筋状態の判定に不可欠なパラメータも測定できる唯一の心臓組織検査ツールである」という。

MRIスキャンはCNIC中央検査室で心臓病専門医により解析された。その際、医師には患者がどちらの治療を受けたか知らせないこととした。CNIC心臓病専門医チームはこの解析のエキスパートであり、その大半の医師がCNICとの病院間研修合意によりマウントサイナイ医療センター(ニューヨーク)のファスター氏から訓練を受けた。

メトプロロールの潜在的有益性に関する最初の研究調査は、イバニェス氏がマウントサイナイ医療センターに勤めていた2006年に、同氏とファスター氏、それにマウントサイナイのジュアン・バジモン(Juan Badimon)博士(循環器病研究所のアテローム血栓症研究部門責任者)によって初めて着手された。同氏らが動物モデルでメトプロロールを検討した前臨床研究の結果は、MRIを用いて解析されたもので、2007年の米国循環器病専門誌に発表された。この結果から、心発作時のメトプロロール早期投与が心筋の救済率を向上し、ヒト臨床試験への可能性を秘めた先端医療につながることが示された。

現在、研究チームはメトプロロールがもたらす治療作用の基礎となる分子機構について調べている。METOCARD-CNIC試験の共同研究者で付随するサブ試験のリーダーであるアントニオ・フェルナンデス-オルティス(Antonio Fernandez-Ortiz)博士は「このプロジェクトでは血小板と炎症細胞との相互作用に及ぼすメトプロロールの効果を分析した。この分析で、心発作の診断後できる限り速やかに行うメトプロロール早期治療の有益性を説明づけられる可能性がある」と説明している。

研究者らは、今後この臨床試験を多国間試験に拡大して、より大勢の患者を対象に実施する予定である。試験目標は、病院搬送中にメトプロロールを早期投与される患者において、本剤が梗塞サイズを狭めるだけでなく、死亡率も低下させることを実証することである。CNIC研究チームと救急業務担当者や病院職員は、既に新たな国際的臨床試験の実施手順に取り掛かっている。

米国循環器病専門誌に掲載された論文の付随論説で、この分野の専門家である工科大学(Technische Universitat)のジン(Gjin Ndrepepa)氏と、ミュンヘン心臓病団体(Munich Heart Alliance)のアドナン(Adnan Kastrati)氏は、多数の患者を対象とした今後の解析でMETOCARD-CNIC試験の結果が裏付けられれば、臨床診療の変更につながる可能性が高いと主張している。「つまり、薬剤による予防戦略は、直接的経皮的冠動脈インターベンション(プライマリーPCI)と併用すると、梗塞サイズを20%小さくでき、臨床効果の期待が大きくなる」

最後に、イバニェス氏は「本研究の立役者は救急業務に携わる専門家らである。彼らの懸命な働きぶりはプロ意識の強いものであり、見習うべき手本である。利他的な研究課題に年に365日24時間確約してくれた多くの専門家の尽力に深く頭が下がる思いである」と補足した。

出典:マウントサイナイ病院/マウントサイナイ医学部


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