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2012-07-12
ソース（記事原文）：io9.com
オキシトシンが世界で最も素晴らしい分子である10の理由
io9.com（2012年7月12日）― ジョージ・ドヴォルスキ（George Dvorsky）
「信頼ホルモン」と呼ばれることもよくありますが、オキシトシンは単にカップルの絆を強める以上に多くのことを行う脳内化学物質であると、ますます考えられるようになっています。
オキシトシンは、私達が自らの社会的関係を築いたり強化したりできるようにするだけでなく、多くの心理的・生理的問題を回避するのに役立つという点においても重要な役割を果たしていると、新たな研究が示しています。一方、もっと概念的に言えば、オキシトシンは私達を人間らしくする極めて重要な要素であると証明されているということです。ここに、オキシトシンが、世界で実に最も素晴らしい分子である10の理由を示します。
1. 簡単に得られる
オキシトシンに関する素晴らしいことの1つは、いつ、どこででも得られるということです。あなたはただ、誰かを抱きしめるか、その人の手を握るだけでいいのです。身体的接触という簡単な行為によって、あなたの脳は低濃度のオキシトシンを放出するでしょう。そしてそれは、あなた自身と、あなたが触れている人の両方の脳内で起こります。これは、ほぼ瞬間的に信頼を築く方法です。また、その影響はその後いつまでも残るというのも良いニュースです。誰かをじっと見つめるだけで、あるいはその人について考えるだけでも効果があるという証拠さえあります。そして、あなたは人以外の場合でも感じることができるはずで、ペットを抱きしめたりペットと遊ぶこともその手助けとなってくれます。オキシトシンを自力で十分に産生できない人、あるいは増強したいと感じている人の場合、この分子は合成が容易なために薬として投与することができます。
2. 適切に作られる媚薬である
「愛の分子」と呼ばれることも多いオキシトシンは、典型的には、カップルがより一層の親近感や愛着感を形成するのを助けることと関連します。カップルが絆を作るうえで、オキシトシンは、ドーパミンやノルエピネフリンとともに極めて重要であると信じられています。でも、それだけではなく、この分子はカップルが互いに見つめ合いたいという気持ちも高め、性的興奮をもたらし、男性の勃起の維持を助けます。あなたが性的に興奮しているとき、脳内ではオキシトシン濃度が著しく上昇しています。これがオルガスムをもたらす主な要因です。オルガスムの最中に脳にはオキシトシンがあふれていることが、（一部の）カップルはオルガスムの後に抱き締め合うのが好きな理由を説明するものとして考えられています。
3. 母親が母親らしくあることを助ける
一方、オキシトシンはカップルが結び付くのを助けるだけではありません。出産、そして母と子の絆の形成には欠かせないものです。オキシトシンが子宮収縮を刺激することで母親に陣痛が伝わることから、陣痛時に（ピトシンとして）投与されることもあります。この分子は、分娩を促進するとともに子宮収縮を加速させることが分かっています。出産後、母親は赤ちゃんに優しく触れて、さらには愛情深く見つめることで、赤ちゃんとの親密さや信頼を築くことができます。その上、母親は母乳を介して赤ちゃんにオキシトシンを受け渡すこともできます。そして注目すべきは、父親もオキシトシンの効果を得られるということです。つまり、オキシトシン点鼻薬を一吹きした新米の父親は、自分の子供に対して遊び時間には冒険をするよう勧める傾向が強くなり、敵意を抱く可能性は低くなります。
4. 社会的恐怖を減らす
社会的な障壁を取り壊す、楽観的な気持ちを誘発する、自尊心を高める、信頼を築くというオキシトシンの能力を考慮すれば、ますます、この分子は人が社会的抑制・恐怖を克服するのを助けるものであると考えられてきています。いくつかの研究によって、オキシトシンは体力や気力を使い果たすほどの内気を治したり、あるいは社会不安や気分障害がある人を助けたりするのに有効な可能性のあることが明らかにされています。また、この分子は心的外傷後ストレス障害で苦しんでいる人も助ける可能性があると考えられています。さらに、自閉症は本質的には社会的コミュニケーション障害であることを考えると、オキシトシンは自閉症スペクトラムの人を助ける手段でもあると見なされています。そして最後に、オキシトシンはその信頼構築作用によって、こじれた関係で受けた傷、つまり、別の例え方をするなら心が元に戻れないしくみを治す手助けとなります。
5. 傷を治し、痛みを和らげる
驚くべきことに、オキシトシンは（その抗炎症特性により）傷を治すためにも用いられます。またいくつかの研究から、オキシトシン濃度が上昇すると、頭痛、痙攣痛、全身の痛み等あらゆる痛みが和らぐことも明らかにされています。さて、そうは言ってもこのカラクリは、あなたに大変な痛みがある間、何らかのオキシトシン作用が働いているということです。ここで、合成オキシトシンが確実に役に立つことになります。話は少し変わりますが、もしあなたが自分の身体の不快な症状に気付いたのなら、ベッドに転がり込みたいと必ずパートナーに頼むでしょう。ですから男性諸君、次回、大切な人が君の口説きを断って頭痛があると話してくれた時は、この極めて重要な情報を活用することを忘れないでください。
6. ダイエットを助ける
驚くかもしれませんが、オキシトシンは、時には肥満を防ぐためにも用いられます。研究者らの観察によれば、オキシトシン・オキシトシン受容体欠損マウスは、中年期以降、通常の食物摂取量で肥満になりました。マウスでも人でも、このホルモンは一連の有益な代謝作用に関与している可能性があると科学者らは確信しています。その上、オキシトシン欠損の肥満マウスにオキシトシンを投与したところ、マウスの体重は正常レベルに戻りました。また、マウスには耐糖能異常およびインスリン抵抗性の軽減が認められました。これは、必死で減量しようとしている人にとって、代替的選択肢となることを明確に示しています。
7. 抗うつ薬になる
オキシトシンは、産後症候群に苦しむ母親に及ぼすその影響を通じて、うつ状態と関係があることが初めて観察されました。研究者らは、数人の新米母親が低濃度のオキシトシンによってうつ状態に対処していたことを明らかにしました。実際、低濃度のオキシトシンが認められた妊婦の場合、彼女達は妊娠中に産後を予測することができました。うつ病患者を対象とした血中濃度や遺伝的要因に関する最近の研究によって、臨床的うつ病の人、さらには不安障害の人でさえも治療できる可能性のあることが明らかにされています。
8. ストレスを和らげる
驚くほどのことではありませんが、社会不安を和らげたり信頼感を生み出したりするオキシトシンの能力を考慮すれば、この分子には、末梢においてストレスを減らす能力があります。ストレスが体にかける負担を考えると、ストレスというのは些細なことではありません。オキシトシンは、体内のコルチゾールを減らしたり、血圧を下げたりすることが観察されています。また、高いレベルのストレスによって支障を来すことが多い消化を改善することも分かっています。興味深いことに、オキシトシンとオキシトシン受容体は腸管内にも認められており、腸の運動性を改善するとともに腸の炎症を抑えています。
9. 寛容さを高める
良いとも悪いともとれることにおいて、オキシトシンは人の寛容さを高めることが観察されています。進化生物学者、とりわけ利己的遺伝子説を支持する人達は、人はなぜ時として、そして、その多くの場合は自己負担で物を共有したり与えたりするのか、理解しようと長い間努めてきました。一方、いくつかの研究ラインによって、共感という感情とオキシトシンが結び付けられています。ある試験で、見知らぬ人とお金を分かち合うよう被験者らに求めたところ、オキシトシンを投与された一部の被験者は、プラセボを投与された被験者と比べて80%（すごい！）も寛容になったことが明らかにされました。
10. 私達を人間らしくする
言い換えれば、上記のすべてということになります。実際に私達はオキシトシンなくして人にあらず、つまりオキシトシンがなければ、私達は社会的で思いやりのある種という能力にあっさり欠けてしまうというのは明白です。さて、その一方、オキシトシンは仲間内の信頼を高めながらも、そこに属さない人達に対しては反対の感情を生じさせることに留意すべきです。そのため、オキシトシンは一部の人が明言するような「完璧な薬」ではありません。そうは言っても、この分子は、互いに共感し合い、信頼し合い、さらには愛し合う能力を私達に授けながら、人間関係のきっかけを作り、その関係を維持する私達の能力構築に重要な役割を果たしています。オキシトシンがなければ、私達は人間らしさとは程遠いものになるでしょう。
さあ、何をためらっているのですか？外に出て、誰かを抱きしめましょう！
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