メルスモンは、更年期障害や乳汁分泌不全を治療するためのプラセンタ注射で、ヒトの胎盤を原料につくられています。これらの治療目的以外にも、ヒトプラセンタはプラセンタ注射として美白や保湿、アンチエイジングなどの美容目的で使用されることがあり、またその有用性が示唆された学会発表やデータなどもありますが、日本では現在のところ医療目的以外でのヒトプラセンタの適用はありません。
卵胞ホルモンは10代半ばの思春期から40代前半の成熟期にかけて分泌量が増加し、女性の体を妊娠や出産に適した状態に維持しますが、その後は卵巣機能の衰えと共に減少していき、やがて最後の月経から1年間生理がない状態が続くと、卵巣における卵胞が消失したとされ、事実上の閉経に入ったと考えます。この閉経を挟んだ前後5年の10年間を一般に更年期と呼び、更年期に伴うホルモンバランスのくずれが原因で起こる、ホットフラッシュ(ほてり)、のぼせ、発汗、動悸、だるさ、疲れやすさ、手足の冷えやしびれ、頭痛、腰痛、肌・目・口の乾燥、めまい、イライラ、うつ症状などの症状が「更年期障害」です。
一方の乳汁分泌不全は、分娩後に乳汁が充分に分泌されない状態のことです。通常、乳汁分泌が確立する産褥1週間目ごろの乳汁分泌量は300-400mL
程度ですが、乳汁分泌不全ではこの量を下回ります。その原因として、ストレスなどの精神的問題や乳腺組織の発育不全などのほか、乳汁分泌を促すプロラクチンと呼ばれるホルモンの異常などが考えられており、特に初産婦や高齢産婦に多くみられる傾向にあります。
これらの症状に対しては、主に薬物治療が行なわれますがそのうちのひとつがプラセンタ注射です。プラセンタは、胎児に栄養を送るなどの目的を持つ臓器である胎盤から有効成分を抽出したもので、体内に侵入してきたウイルスや有害細菌の殺菌作用、体内の細胞や臓器を酸化から守る抗酸化作用、肌の老化や体調不良を招くとされる活性酸素を除去する作用などのほか、がん細胞などの異常細胞を抑制する因子をはじめ、多くの栄養素、ビタミンやミネラルなどの生理活性成分、細胞の新陳代謝を促す成長因子などが含まれています。プラセンタに含まれているこれらの成分の含有量は非常に微量であるにもかかわらず、数々のすぐれた効果を発揮することが実証されています。その作用機序は多くの部分がいまだに解明されていませんが、プラセンタに含まれるこれらの成分が体全体を賦活化させるために、このような効果を発揮するのではないかと考えられています。
この作用は美容業界からも注目されており、実際、多くの研究発表や臨床試験では、プラセンタが持つ賦活化作用がアンチエイジングやホルモン調整などのほか、抗炎症、抗アレルギー、血行促進、基礎代謝向上、美白やターンオーバー促進、ニキビ改善などに対してもすぐれた結果を出していることが報告されています。
市場に出回っている動物由来のプラセンタの原料にはヒト(人間)、ウマ、ウシ、ブタ、ヒツジなどがあります。細かい成分などの違いこそあれ、基本的なプラセンタの役割はどの動物でもほぼ同じとされていますが、当然のことながら、人間にもっとも適しているのはヒト由来のプラセンタです。メルスモンは、日本国内で採取された人間の胎盤のうち、感染症などの伝播が起こらないように、梅毒・結核・淋病・肝炎・エイズ・クロイツフェルトヤコブ病・リンゴ病などの厳しい検査や安全基準をクリアしたものから抽出されたプラセンタを原料としたプラセンタ注射で、更年期障害や乳汁分泌不全の治療に使用されます。
なお、疲労回復や筋肉痛・関節痛の緩和のほか、シミやくすみの改善、美白、肌荒れ解消などの目的で有資格医師がヒトプラセンタを注射することがあり、またいずれも有用な結果を出しているとの報告も数多く発表されています。しかし、日本で厚生労働省が認めているヒトプラセンタの適用は肝機能障害や更年期障害に対する治療だけであり、これ以外は適用外となっています。