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2011-11-01

ソース(記事原文):ペディアトリック・スーパーサイト

一般的なほとんどの感染症に従来の抗生物質が依然として有効

ペディアトリック・スーパーサイト― カサンドラ・A・リチャーズ(Cassandra A. Richards)著

ボストン - 米国小児科学会2011年全国会議・展示会(American Academy of Pediatrics 2011 National Conference and Exhibition)での発表者の1人によると、全ての有効な抗生物質から最も安全なものを選ぶことは、小児に抗生物質を処方する際に最も重要なことです。

カリフォルニア大学サンディエゴ校レディ子供病院(the University of California at San Diego and Rady Children’s Hospital)のジョン・S・ブラッドリー医師(John S. Bradley, MD)は、抗生物質と、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)、呼吸器感染症、尿路感染症(UTI)を含むさまざまな感染症に対するそれらの有効性を簡単にまとめて報告してくれました。

ブラッドリー医師は発表中、古いタイプの抗生物質でも服用回数を増やせば、多くの場合最近の耐性病原菌にも対応できる、とも強調しました。

「セファロスポリンやペニシリンのようなベータラクタム系抗生物質に大切なのは、服用量ではなく、MICを超える血中濃度を維持する時間なのです。投与間隔の40%の時間においてMICを上回る血中濃度が維持されれば、ほとんど菌は死滅します。以前のベータラクタム系の薬でも多くの場合、服用量か頻度を増やせばこの効果をもたらすことができるのです」とブラッドリー医師は言い、このような古い薬は今も使われていても、多くが耐性病原菌への有効性が調査されたことがないので添付文書が存在しない、と付け加えました。

「FDAの認可はありませんが、このような薬の有効性を示した公表データを我々は入手しています」とブラッドリー医師は説明しました。「だからと言って、FDAがこれらの薬が悪いと考えていない、という訳ではありません。その薬が適応症に有効かどうかFDAが判断できるような情報を、今まで誰もFDAに渡したことがない、という訳でもありません」

MRSAに関しては、クリンダマイシンとトリメトプリム・スルファメトキサゾール合剤(TMP-SMX)が、それぞれ欠点はありますが、今でも第一選択経口薬です。加えて、バンコマイシンは今でも、重篤なMRSA感染症には第一選択される静脈内(IV)抗生物質です。

MRSAのクリンダマイシン感受性は、全米で地域により大きく異なり、しかも、集中治療室の小児から分離された菌株と比較すると、地域による菌株が異なります」とブラッドリー医師。聴衆に、微生物学研究室から自分の街のクリンダマイシン感受性のデータを取ってくれるよう呼び掛けました。「非常に興味深く、われわれが当初考えていたよりずっと複雑なのです」

呼吸器系感染症

経口アモキシシリンとアンピシリン静注は、米国小児感染症学会(the Pediatric Infectious Diseases Society) と米国感染症学会(the Infectious Diseases Society of America)が発表した最新の臨床診察ガイドラインで概要が説明されていますが、通常の市中肺炎に対する第1選択薬となってきました。次の3つの投与量のいずれかが、外来の経験的アモキシシリン治療に推奨されます。90 mg/kg/日を一日2回に分けて投与、40 mg/kg/日から45 mg/kg/日を一日3回に分けて投与(TID)、または 90 mg/kg/日を一日3回に分けて投与(TID)。入院患者の経験的アモキシシリン治療は、150 mg/kg/日から200 mg/kg/日を6時間ごとに分けて投与。ペニシリンGの使用も可能です。

ブラッドリー医師は、UTIの治療には第二または第三世代セファロスポリンを推奨しています。この薬は、約95%から98%の小児に症状の解消が見られています。これは、アンピシリン耐性が40%から50%の間で、TMP-SMX耐性が報告によると20%から30%の間だからです。10月1日に発表されたばかりのAAPガイドラインによると、TMP-SMXや第一世代セファロスポリンを含む他の抗生物質でも有効な治療ができるようです。ブラッドリー医師はUTIの予防には、ニトロフラントインのような全身性感染症を治療するのには使われない抗生物質を好んで使います。経口で使用できる全ての抗生物質に有機体が耐性を生じたとしても、小児科医はより重篤な感染症の治療薬がないからといって心配する必要はなく、事実上、現在の菌株は全てメロペネム静注やゲンタマイシン静注に今でも感受性を示します。

フルオロキノロンの使用に対しては、ブラッドリー医師は使用は可能だとしていますが、小児に対するキノロンの使用に関し、AAPは最近の発表で、ベネフィットがリスクを上回っていなくてはならないと勧告しています。

「小児科に関わる我々は、ビーグル犬の子犬のデータしかないという理由から、長い間キノロンを避けてきました。我々は現在、中耳炎と肺炎の調査から得たレボフロキサシンの5年間に亘るフォローアップデータがあります。FDAの要請で、スポンサーはこれらの小児をフォローし、骨や関節の異常はどんなタイプでも検出し、途中でフォローアップができなくなった小児もいますが、スポンサーは毒性を示唆するものは見つからなかったとしています」とブラッドリー医師。

研究開発中の抗生物質

小児科で使われる研究開発中の抗生物質について、MRSA治療には、糖ペプチド/グリコリポペプチド (ダルババシン、オリタバンシン、テラバンシン)、オキサゾリジノン、リネゾリドに類似したトレゾリドと並んで、第五世代セファロスポリン(セフタロリン)の研究が行われている、とブラッドリー医師は述べました。

MRSAの抗生物質の研究開発の進展とは対照的に、グラム陰性桿菌の研究では、小児科第1相(薬物動態試験)に入った新薬さえありません。

「抗生物質が利用できるようになって以来初めて、成人が多剤耐性菌で亡くなっています」とブラッドレー医師。クレブシエラ属の臨床株の一部は現在、イミペネム、セフトリアキソン、シプロキサン、ゲンタマイシン、TMP-SMX、コリスチンに耐性を示していると付け加えました。

「われわれ研究者は、FDA、製薬会社、NIHと連携し、新生児、乳児、小児に必要なより安全でより効果的な治療法を開発する必要があります」とブラッドリー医師は発表で述べました。

編集者の解説

シェルドン・カプラン医学博士(Sheldon Kaplan, MD) [小児感染症編集委員(Infectious Diseases in Children Editorial Board member)]

ジョン・ブラッドリーは抗生物質の適切な服用の重要性と、薬物動態学的および薬力学的情報を使って以前からあり確立している抗生物質を適切に服用することにより、いかに抗生物質耐性菌による感染症を有効に治療できるかを強調しています。ジョンらが最近作成した今回の新しい市中肺炎ガイドラインは、ペニシリンの適切な服用と、肺炎連鎖球菌が現在分離される株のほとんど全てによる肺炎の治療の有効性をこれらの薬がいかに保っているかを強調しています。現在最も深刻な懸念は、多剤耐性グラム陰性菌に集中しています。その菌の一部は昔の極めて有毒な物質であるコリスチンを含む、全ての抗生物質に抵抗があります。これらの菌と闘う新薬開発の障壁を最小にすることが、我々全員の優先すべき事項です。


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