テルマ80は昇圧作用のあるアンジオテンシンIIが受容体に結合し、血管収縮やナトリウム保持作用によって引き起こされる、高血圧症の発症を阻害する、アンジオテンシンII拮抗薬です。
血圧とは血液が体内を循環する際に、血管にかかる圧力のことを指します。
血圧は最高血圧値/最低血圧値によって示されます。
最高血圧とは心臓が収縮し、血液が押し出されている時に血管にかかっている圧力であり、血管に最も圧力がかかっている状態となります。
心臓が収縮している時点での血圧であるため、通常は『収縮期血圧』と呼ばれています。
最低血圧とは血液が心臓から押し出されていない時に血管にかかっている圧力で、血管に最も圧力がかかっていない状態です。
心臓が拡張している時の血圧となるため、通常『拡張期血圧』といった呼ばれ方をしています。
正常とされる血圧の上限は、自己測定した場合で135/85mmHg、病医院で測定した場合は140/90mmHgとされており、これ以上になると高血圧であるとされています。
日本において血圧が140/90mmHg以上の高血圧症であるとされている人は約3,000万人と言われています。
つまり4人に1人が高血圧症であるということになり、50歳以上の人においては、2人に1人が高血圧症であると言われています。
高血圧は二次性高血圧(症候性高血圧)と本態性高血圧に区分されます。
二次性高血圧とは、高血圧症の10-20%を占め、腎臓病やホルモン異常など、高血圧を引き起こしている原因がはっきりとわかっているものです。
これに対して本態性高血圧とは、はっきりとした原因を特定できない高血圧症であり、高血圧症患者のほとんどがこの本態性高血圧に属します。
本態性高血圧の原因ははっきりとは解明されていませんが、食事における塩分の過剰摂取、アルコール、ストレス、運動不足や肥満、疲労などがその要因として挙げられており、いわゆる生活習慣病の一つとしてとらえられています。
高血圧症になったとしても、通常ははっきりとした自覚症状がない場合がほとんどです。
人によっては、頭痛、目眩、肩こり、むくみ、動悸、はきけ、耳鳴りなどが発現する場合がありますが、これらの症状は必ず現れるものではなく、さらに、高血圧症特有の症状というわけではないので、放置されてしまいがちです。
長期間にわたる高血圧症は心臓や血管に負担をかけ、心肥大や動脈硬化を引き起こします。それらによってさらに、脳卒中、心臓病、腎臓病などの合併症を引き起こします。
このように、高血圧症は無症候のまま病状を進行させ、命に関わるような合併症を引き起こすことから、『サイレントキラー』とも言われています。
アンジオテンシンIIとは昇圧作用を持つ生理活性物質で、主に肝臓で生成されるアンジオテンシノーゲンの活性型物質です。
アンジオテンシンIIの前駆物質であるアンジオテンシノーゲンは、肝臓で生成された後、血液中に放出されます。
血液中のアンジオテンシノーゲンは、腎皮質の傍糸球体細胞から分泌されるレニンという酵素によって、まずアンジオテンシンIという不活性物質に形を変えます。
このアンジオテンシノーゲンIはさらに、肺、血漿、腎臓などから分泌されるアンジオテンシン変換酵素(ACE)によって、アンジオテンシンIIに変換され活性化されます。
活性化されたアンジオテンシンIIには細動脈を収縮させる作用に加えて、昇圧作用のあるナトリウムイオンを血中に保持するアルデステロンというホルモンを腎臓から分泌させる作用があり、これらの作用による血圧が上昇が、高血圧症発現の原因とされています。
アンジオテンシンIIの血圧上昇作用は、アンジオテンシンIIがアンジオテンシン受容体に結合することによって発生します。
アンジオテンシン受容体にはAT1とAT2の2種類があり、AT1受容体には血管収縮作用、血管肥厚作用、動脈硬化作用、心肥大作用、逆にAT2受容体には血管拡張作用、及び抗動脈硬化作用があるとされています。
テルマ80の有効成分である、テルミサルタンはアンジオテンシンAT2受容体への結合力300倍もの結合力でAT1受容体に結合し、アンジオテンシンIIの細動脈収縮作用や、アルデステロン分泌による血圧上昇作用を強力に阻害します。
また、数あるアンジオテンシンII AT1受容体拮抗薬の中でその半減期が24時間と最も長いため、その効力が持続するとされています。